自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

激戦! 海ほたる(2)




「山岸さん、彼は?」
「こいつは、昔からの知り合いの田中一郎ってやつだ。世界牛丼大会で俺に大差をつけられてボロクソに負けた奴だ」
「おい、もう少し言い方ってもんがあるだろう……。相変わらず、お前は手加減を知らないよな」
「ふん、牛丼で世界を競いあう同じ土俵に立っている貴様は、云わば俺の敵! そんな奴に掛ける情けなどない!」
「はあー、まったくお前は……」
 
 そう呟くと田中が江原達の方へ視線を向けたあと口を開き――。

「山岸」
「なんだ?」
「それよりも、そこのお嬢ちゃんは、何なんだ? すっげえ別嬪だな。山岸――、紹介しろよ」

 紹介か――。
 なんて紹介すればいいんだ?
 別に、二人とも彼女という訳ではないからな。
 仕事のパートナーという方向で説明すればいいか。

「私は! 山岸さんの彼女! 江原(えはら) 萌絵(もえ)です!」
「江原さん、何を言っているの? 私が山岸さんの彼女の藤堂(とうどう) 茜(あかね)です。よろしくお願いします」

 二人とも、いつの間に俺の彼女になったんだ。
 まったく仕方のない奴らだ。
 ここはきちんと否定しておくとしよう。
 なあなあは不味いからな。

 それに……、江原と藤堂の説明に絶句の表情を田中は見せていて完全に固まっている。
 まったく、ここはフォローをしておいてやるか。

「田中、勘違いするなよ? こいつらは、一つ屋根(アパート)の下で暮らしている知り合いだ。今日は、牛丼フェアで男女ペアが必須と書いてあったから着いてきてもらっただけだ」

 田中が、目をカッ! と開くと俺の襟元掴んでくると左右に揺らし――。

「ふざけるなよ! いつからお前はリア充になったんだ!」
「おい、やめろ! 揺らすな! 首が痛い――」
「くそがあああ、どうして! 山岸ごときに、女が二人も!」
「そのごときに負けた貴様は、俺よりも下ってことだな」

 襟元を掴んでいた田中の手を力任せに引き剥がしながら。

「それより負け犬の田中。今日はお前のおごりな」
「どうして! 彼女が一人どころか二人もいる人生の勝ち組の奴に! 人生の負け組の俺が貴様に奢らないといけないんだよ!」
「やれやれ――。お前、以前に世界牛丼大会で負けた時に俺に奢るって言っただろ。それとも、あとから理由をこじつけて約束を守らないほど、お前は腐っているのか? まったく見損なったな! その程度の器だから、俺に大食いで負けたんだよな」
「――くっ!? わ、分かったよ! おごれば――、奢ればいいんだろ!」
「――ふっ」

 分かればいい。

「牛丼特盛10杯追加で!」
「あいよ!」
「お前は少し遠慮をするってことを知らないのか!?」
「そんな遠慮なぞ同じ土俵に立っている奴に掛ける俺ではない!」
「お前と話していると頭が痛くなる……、お嬢さんたちもコイツ相手だと大変だろう?」

 ――おいおい。

「田中、俺のことを問題児扱いするのはやめてもらおうか」
 
 俺は届いた牛丼特盛3杯を食べながら突っ込みを入れていく。

「それに貴様も問題児だろう?」
「俺がか? 何か俺が問題でも起こしたのか?」
「――ふっ……、牛丼と一緒にサラダを頼むという愚行。貴様は相変わらず牛丼の食べ方が分かっていない! それが理由だ!」

 俺は正論で田中を追い詰めていく。

「いや、野菜も肉と一緒に食べないと体に悪いだろう?」
「野菜なら、紅生姜があるだろうに」
「紅生姜は、野菜じゃないだろう?」

 相変わらず田中は牛丼の食べ方が分かっていない。
 牛丼は、ご飯・牛・七味・紅生姜の4つで構成される。
 それ以外の物を一緒に食すなどギュウラーとしては看過できない問題だ。

「山岸さん、田中さんとはお友達なのですか?」と江原。
「友達じゃない。仇敵と書いてライバルと読む」
「高校時代からの付き合いだろう!」
「そうともいうな」

 まったく相変わらず細かいやつだ。
 追加で届いた牛丼を食べながら口を開く。

「ところで田中が此処にきた理由は22時から開催される牛丼フェアの件か?」
「まあ、そうだな。今日は、仕事で来た訳じゃないからな」
「ふむ……」

 ――仕事か、まあいい……、それよりもだ!

「田中、22時からの牛丼フェアだが男女一緒のペアじゃないと商品を売ってくれないそうだぞ」
「な!? なん……だと……」

 田中が絶句しながら、江原や藤堂の方を見たあと――、笑みを浮かべて俺の方を見てくる

「山岸様! 頼みがあるんだが――」
「だが断る!」


 


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