自宅にダンジョンが出来た。(WEB版)

なつめ猫

日本ダンジョン探索者協会(5)




「そこまでです!」

 こちらから警察官に手を出したら問題になると思い躊躇していると、20人近くの白いガクランを着た男たちが千葉東警察署の中に踏み入ってきた。
 そのどれもがレベルが150を超えている。
 
「ま、まさか……、日本ダンジョン探索者協会強行部隊か!? だが、何故――!?」

 西貝警視がうろたえた様子で数歩下がる。

「日本ダンジョン探索者協会強行班部隊第7部隊団長 楠(くすのき) 大和(やまと)です。貴方たちの起こした行動は、日本だけでなく世界中に配信されており警察庁長官からの命で貝塚ダンジョンの警護をしていた私たちに鎮圧の命令が下りました。大人しくしてください。ダンジョン探索者に抵抗するのは無意味だとご理解はされていると思いますが?」
「――た、助かったの?」

 俺の後ろで緊張の糸が切れたのは伊東さんは深く溜息をつく――、その様子が伝わってきた。

「馬鹿な……、こいつは動画配信などしていないと……」

 神田警部は信じられないと言った表情で俺をみてくる。
 そんな男に俺は懐からスマートフォンを取り出し見せつけた。

 スマートフォンには動画配信中の画面が映し出されている。

「どうやら、俺がSNSで拡散よろしくと書きこんだのが拡散されたようだな……」
「うそだ、そんな……うそだ……」
「嘘ではありません。すぐに国家公安委員会を含めて事の真偽を調べるために担当者が派遣される予定になっています。それと……」

 神田警部は、うわごとのように「うそだ。そんな……、うそだ……」と呟いている。
 そんな男から視線を楠は話すと西貝に向けている。

「西貝二郎、君には大麻の横流しと暴力団やヤクザとの便宜を図っていたこと。それと癒着の容疑が掛けられている」
「なんだと!? そんな証拠どこに!?」
「ここにある」

 俺の目の前で楠がタブレットを取り出すと画面に映す。
 そこにはエクセルで作った表計算が見て取れる。

「馬鹿な……、それは――。何故、貴様らがそれを……」
「西貝二郎、言い逃れは署……、と言うより警察庁の取り調べで語ってもらおうか?」
「――ばかな……、どうして……どうしてだ……」

 そこで血走った目で西貝が俺を見てくる。

「貴様か! 貴様は、日本ダンジョン探索者協会と繋がっていたんだな!」
「いや――、まったく」

 寝耳に水だ。
 俺は手を振りながら答える。
 
 すると、千葉東警察署の中に何台もの車(ハマー)が入ってくる。
 そして、先ほどまで俺の行き先を邪魔していた警察官たちが乗せられていく。
 どうやら、何とかなったようだな……。

 小さく溜息をつく。

 すると楠という人物が近づいてくる。



 名前 楠(くすのき) 大和(やまと)
 年齢 37歳
 身長 169センチ
 体重 58キログラム
 
 レベル255

 HP2550/HP2550
 MP2550/MP2550

 体力45(+)
 敏捷50(+)
 腕力47(+)
 魔力 0(+)
 幸運 8(+)
 魅力17(+) 

 所有ポイント255



 山根2等陸尉ほどではないが、レベルもステータスも高い。
 
「君が、山岸(やまぎし) 直人(なおと)さんで間違いないかな?」
「ああ、そうだが……」

 ずいぶんと手回しがいいものだ。
 まるで、誰かが描いた筋書きどおり歩かされているような違和感すら覚えてしまうが……。

「それにしても……、君は拳銃で撃たれたはずだけど体は大丈夫なのかい?」
「……」

 そうだった。
 またやってしまった。
 ▽「バーサクモードLV10」の影響でつい――。

「ゴフッ――。あ、あれ!?」

 体に……力が突然入らなく――。


 
 ――スキル「大賢者」の能力が発動しました。
 ――スキル「大賢者」の能力により、不審に思われないよう銃弾を受けたダメージを、全て肉体へとフィードバックします。
 


 不吉なログが表示されると同時に俺は、そのままコンクリートの上に倒れ込む。
 コンクリートの上に自分の血が広がっていくのが分かる。
 妙に生温かい。

「ま、まさか……、アドレナリンで気がつかなかったのか? すぐに救急車の手配を! 急げ!」

 遠のく意識の中、楠という男の声だけが聞こえてくる。
 俺は、そのまま意識を失った。



 ――まぶしい……。
 意識がゆっくりと浮上するのを感じる。

「ここは……、いったい……」

 朦朧とした意識の中、瞼を開けるとそこは見知った天井ではなかった。
 体の自由がほとんど利かない。
 いったい、どうして――。

「そうか……」

 そこでようやく思い出した。
 千葉東警察署で、警察に襲われ――、そして日本ダンジョン探索者協会の人間が助けにきたことを。
 そして、楠という男の……、怪我は大丈夫でしたか? という言葉にスキル「大賢者」が反応して俺は体中から血を吹いて倒れたということを。

「よく死ななかった俺……」

 さすが膨大なHPと言ったところか……。
 俺は視界内の下部に表示されているステータスのボタンを選ぶ。



 ステータス

 名前 山岸(やまぎし) 直人(なおと)
 年齢 41歳
 身長 162センチ
 体重 95キログラム

 レベル1(レベル449)
 HP 10/10(4490/4490)
 MP 10/10(4490/4490)

 体力17(100)(+)
 敏捷11(100)(+)
 腕力16(100)(+)
 魔力 0(0) (+)
 幸運 0(100)(+)
 魅力 0(34) (+)

 ▽所有ポイント 0

 ※スキル「大賢者」によりレベル上限が1に制限中。
 ※スキル「大賢者」によりHPとMP上限が10に制限中。
 ※スキル「大賢者」により初期ステータスに制限中。

 

 ステータスが封印されている?
 どうしてだ?
 よく分からないが何か理由があるのかも知れないな。
 スキルは、どうなっている?
 スキル項目を選ぶ。



 スキル

 ▽「ロリ王LV1」(+)(ON/●OFF)
 ▽「JK交際LV1」(+)(ON/●OFF)
 ▽「隠蔽LV10」(●ON/OFF)
 ▽「#JWOR」
 ▽「ZH)N」
 ▽「大賢者」(●ON/OFF)
 ▽「限界突破LV10」(ON/●OFF)
 ▽「バーサクモードLV10」(ON/●OFF)
 
 ▽所有ポイント 0

 ※スキル「大賢者」により、スキル「隠蔽」とスキル「大賢者」以外のスキルの使用を制限中。



 どうやらスキルも制限されているようだな。
 それにしても、大賢者か……。
 何やらすごいスキルのようだが……。
 部屋の中は誰もいないことだし確認しておくか。



 ▼「大賢者」(●ON/OFF)
 
 「賢者LV1」人類の英知を利用すること可能。
 「演武LV1」劇に登場した人物全ての個人情報の閲覧が可能。
 「解析LV10」直視した相手のステータスを視ることが可能。
 「演劇LV10」自分だけではなく周囲の人間をも劇の登場人物として強制参加。
 「危険察知LV10」危険が近づいた場合に、知らせる効果。


 
 なるほどな……。
 どうやら、かなり性能のいいスキルというかチートスキルのようだ。

「それにしても……、ここはどこだ?」

 スキルとステータスを確認すると暇になる。
 部屋の中を見渡すが仰々しい機器類があるだけで無機質な――、そう……、まるで――病院のように見てとれる。

「……せ、せんぱい……」

 声がした方へ視線を向ける。
 そこには、室内の明かりに照らされた美少女が立っていた。
 ただ、その美少女にはどこか見覚えがあるような気がしないでもない。
 ふむ……。

「佐々木か?」
「ひ、ひゃい!」

 目を大きく見開いて固まっていた佐々木は、俺に話しかけらたことで舌を噛んでしまったのが口に手を宛てている。
 心なしか眼元に涙を浮かべているようにも見える。
 
 それにしても……、前は日が沈みかけていたから気がつかなかったが、ずいぶんと可愛らしくなっているな。

 それに雰囲気も若干やわらかくなっているような。

 ――ふむ。
 とりあえず、今は、少しでも情報が欲しいな。
 だが、「お前が女にされてから俺の家に来たあとはどうなった?」と聞くのはデリカシーが足りないだろう。
 以前は、かなりショックを受けていたからな。
 
 ――なら、ここは社会人らしく……かるく日常会話から入るとするか。

「髪を伸ばしたのか?」
「――え? あ、はい……。――ど、どうですか? 似合っていますか?」


 何故か知らないが頬を赤くして潤んだ瞳で佐々木が聞いてきた。
 ふむ……。
 似合っているが、どうして俺にそんなことを聞いてくる?
 まあ、話題を振ったのは俺だが……。
 
 それに、どうと言われてもな。
 元々、佐々木は男だったわけで、こいつのことを俺は別に何とも思っていない。
 彼氏とかだったら、綺麗だとか気の効く言葉をかけるべきところだが……。

「……いいんじゃないか?」

 まぁ、「お前は男のくせに何をおしゃれしているんだ?」 と聞いても良かったが、何となくだがそれだと角が立ちそうな気がした。

「本当ですか! えへへっ……、私! 先輩が好きそうだなって思ってこれにしたんです!」
「そうか……」

 意味が分からん。
 やはり薬の影響と暴力の影響で佐々木はどこかおかしいのかも知れないな。
 だが、俺は社会人として空気が読める男。
 伊達に20年以上、社会人はしてきていない。
 軽く頷いておくことにとどめた。

「――あっ!? そ、そうじゃなくて! せ、先輩、少し待っていてください!」






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