最強魔導士の異世界転生

Axsl

最高最強の魔道士VS最悪最凶の魔道士

グラン帝国最前線作戦本部。いまそこは少し騒ぎになっていた。
「アギール様。ご、ご報告が!」
「なんだ慌てて。」
アギールと呼ばれた男は赤い鎧を着込んでいる。兜は付けていなく顔があらわになっている。目付きが鋭く髪は黒色で男にしては少し長い。大柄でいかにも将軍のような見た目だ。
「味方兵士団とホムンクルス三体撃破されました!」
「は?なんだと...」
この男はグラン帝国の将軍である。グラン帝国はハイル王国と戦争をしている国。宗教観や価値観の違い、文化の違い、そして資源分割の意見の違いなどから昔から小競り合いが多かった二国だが、今までは穏便に済ませようとするハイル王国の方が強かったのもあって小競り合いで済んでいた。しかしグラン帝国がある力を得てその構図が逆転した。そのある力というのがホムンクルスである。ある魔導士が生み出したその力で今まで1度も勝ったことがなかったグラン帝国が戦争を優位に進めていた。しかしそれもある1人の魔導士によって阻まれてしまったのだった。
「それが、シリルアが現れたと...」
「シリルア!?...あやつ戦争に参加しないと聞いていたが...分かった。下がって良いぞ。」
「はっ」
部下が消えるとアギールはこれからどうするか考える。
「...シリルアがてできたとしたら、どうしたって。それよりもなぜこのタイミングで...」
「アギール様。それはホムンクルスが原因かと」
「ギークか。何故そう思うんだ。」
ギークと呼ばれた男はグラン帝国の魔導士。禁忌教典アカシックレコードの魔法をひとつ持っていてこのギークこそがホムンクルスを開発した張本人でもある。見た目は少し隈が出来ていて陰鬱そうな見た目に、男にもかかわらず細身で痩せている。髪はアギールの髪とは違う雰囲気の長髪でアギールはしっかりした髪型に大してギークはそのままにし続けたような髪型だ。
「はい。彼女はホムンクルスのような研究を酷く嫌ってましたから。初めてホムンクルスを使ってからちょうどシリルアの耳に入った頃かと。」
「そうか。しかしどうしたら…これじゃシリルアを倒さない限り勝てないのでは」
「私が出ますよ。」
「しかしいくらなんでもあたあなたでは...」
「ふっ。最強がなんですか。この水晶があれば」
「なんだそれは。」
「これは...」


「はぁ、はぁ、はぁ...終わったー」
久しぶりに本気の魔法を撃ったシリルアは魔力を1度に大量に使った反動で肩で息をしている。
「ほんとこんなの誰が作ったんだよ」
三体のホムンクルス達を思い出す。一体一体が耐久力も攻撃力もそこそこにあった。龍化や禁忌教典アカシックレコードの魔法を使うことになったのが証拠だ。こいつらがいれば戦況をひっくり返すことも出来るのかもしれない。しかしシリルアは許せなかった。いくら戦争のためと言ってもただの一般人の命が使われていいはずはないのだから。そんなことを思いながら焼けた地面に腰を下ろす。
「ふぅー。ちょっと休憩。」
そう言って空を見た。すると敵の本部があるであろう方向からひとつの影が迫ってきている。
「あー。もう来たのぉー」
また、立ち上がり魔力を高め直す。
「ん?あの魔力は...あーめんどくさいやつ来たなー。よっと」
影の正体を見破ったシリルアは魔法で飛ぶ。そして、ある程度の高さでホバリングを始める。
「久しぶりだね。シリルア。いや五龍の魔道士」
そう言った人はギーク。彼も魔法で飛んでいる。
「そうだねー久しぶりー。でもそんな呼び名もう古くない?」
「そうかい?たしかに僕は何年もこもって研究してたからもう分かんないや。でも君が最強の魔道士って呼ばれているのは知ってるよ?あーあ本当は僕の方がすごいと思うけどなー」
「へー。どうしてそう思うの?」
「ハハッ。そりゃそうだよ。僕は人間兵器を作ったんだよ。ホムンクルスを。あーあ何人のモルモットを壊しちゃったかもう覚えてないやー。でも作り上げた。最強の兵器を。それなのに!君は、壊しちゃった。僕がせっかく作り上げたモノ・・を!そんな王国にいて何もしていない君がこんなことしていいわけがないんだ!このクズが!」
「あ?」


昔からこうだ。あいつとはなかなか分かり合えない。同じ魔導士で時には敵対したり時には協力したりした。でも結局味方ではなく敵として私の前に今彼はいる。確かに魔法についての知識は彼の方が優れているかもしれない。しかし、彼は私より魔力量も、魔力の質も、戦闘センスも違いすぎた。私は魔力の質と量で多くの魔法を使えるようになった。しかし彼は知識以外は普通の魔道士にちょっと毛が生えた程度でしか無かった。だから魔法も、私ほどたくさん使えなかったし、戦闘になれば私の方が強かった。もっとも私の覚える魔法が規格外だったし、魔力の質も量も比べる相手が悪いだけで彼も普通の人と比べるといい方だった。私なんかと比べるから行けないんだ。こんなまるで人を辞めた・・・・・ような力を持つ私と。それで彼は歪んで行った。唯一私より強かった知識を活かして魔法の研究を始め、多くの魔法を作り出した。それまでは良かった。でも、そこから彼は私に追いつこうとどんな手を使っても強くなろうとした。それがこれだ。とうとう、ホムンクルスの研究のために人殺しまでしてしまった。私はそれが許せなかった。
「お前!強化エンハンスメント火龍ファイアードラゴン!!召喚魔法炎の剣ソード・オブ・プロメテウス!」
私は火の神プロメテウスの剣を召喚する。全体的に紅く所々火のような形の装飾が施された剣。それを火龍状態の私の魔力のが包み込む。そして熱を帯び始め、剣が燃え出す。
「はっ!」
私はギークの懐に飛び込み右から左へ切り抜こうとする。しかし既に彼は魔法障壁を張っていて止められてしまう。
「なんで君は人を簡単に殺せるの。なんの罪もない一般人を。戦場に出てきてない兵士ですらないんだよ!」
私だって魔導士だ。戦場に出てきて死んでしまうのはある程度仕方ないと割り切ってはいる。しかし戦場に出ると覚悟もしていない、そんな人たちを勝手に殺すのは許せなかった。ましてや実験の道具にされて死ぬのだ。全く戦うという抵抗をすることも出来ないまま。
「は?何言ってんだよ?人?そんなわけないじゃん。ホムンクルスを作るために死んだのはただのモルモット。実験道具だよ。ただそれが人だっただけって話。」
「っ!何人殺した。」
「んー。ざっと100人200人はくだらないなー」
「お前!」
私は力をさらに入れる。たかが戦争のため私が今日殺した人数より多いと思うと悔しくなる。戦場で人を殺すのは簡単だけど世界で人を救うのは難しいことなんだと強く実感させられてしまう。
「もうウザイな。暗黒物質ダークマター
ギークの手から黒い物体が浮かび上がる。まずい。あれに当たったものは何であろうと朽ち果てる。さすがに私くらい魔力があればなんとかなるがそれでもしばらく戦えなくなってしまう。幸いあれそれほど長く空間にあり続けることは出来ないので距離を取ればいい。そう思い私は剣の力を緩め後ろに下がる。しかしその黒い物体はギークの手から離れることは無く、その場で消えてしまった。
「ふ、あはは、アハハハハハハハハハハ」
「なに?」
急に笑いだしたギークに対して不信感を抱いた。
「やっとだ。やっと、やっと君を殺せる。」
「は?」
意味がわからなかった。いくら知識があろうとギークから感じる魔力は私の驚異になるようなものでは無いし、剣技も私の方が上だ。
「死ねよ。魔法不可領域ノン・マジックフィールド
「つ!」
ギークは懐から水晶を右手で取り出しそれを砕く。すると地面に魔法陣が浮かび上がる。しかし何も起こらなかった。
「何だ?」
「オラッ!」
急にギークが突進してきた。魔法が効かなくて諦めたのか。私は魔法で迎撃しようとする。
火龍の爪フレアドラゴンクロー!」
しかし魔法は発動しなかった。その代わり体に直接痛みが走る。
「うっ」
痛みで体が動かない。さらにそこにギークの蹴りが入る。
「あっ」
吹き飛ばされ倒れる。なぜ魔法が発動しないのか、そしてなぜ魔法を使った私がダメージを受けているのかわからない。
「なんだ...これ」
「流石のお前もなさけ無いな。これはな、この領域にいる者は術者以外は魔法を使えなくなる。使おうとするとその魔力が自分自身を蝕む。これで俺はやっとお前に勝てる!」
なるほどそう言うことか...それなら魔法が発動しいし自分がダメージを受けているのも納得出来る。しかし奴は話しすぎた。
「ペラペラよく喋るねー。ありがとう。なんでこんなことが起こるかわかったよ。」
「分かった所で」
私はギークが話し終わる前に奴の目の前に移動した。
「はやっ」
そのまま腹に蹴りを入れる。
「ガッ」
何故こんなに私の身体能力が高いのかわからない感じなギーク。
「なんで...そんな...」
答えは簡単だ。自分自身の魔力を使わなければいい。
「はぁー。奇跡って苦手なんだけどなー」
「奇跡だと...」
奇跡とは魔法の1種。しかし普通の魔法と違って自分自身の魔力は使わない。神様に働きかけ奇跡をおこす。しかし本来は職業が聖職・・であるものしか使えない。
「お前いつの間に聖職についていたんだ!」
「別についてないよ。神様に毎日祈るとかめんどくさいし。」
「じゃっなんで...」
「いやちょっと前に神様にあってさ。それで戦ったの。んで、それに勝ったから奇跡使えるようにしてもらったんだよね。」
「神に勝った?は?」
「まあそう言うこと。もう終わろ?行くよ?神聖轟雷。」
空がみるみる暗くなり黒い雲が辺り一面を覆う。そしてゴロゴロと雷もなってきた。雨が降り始めだんだん強くなる。
「クソがァァァ」
雲に電気が溜まって飽和し、そしてギークに向かって雷が落ちた。自然現象の雷よりなお強い。轟音が響く。視界が光で白く染まる。やがて視野が戻ると雷が落ちた所には穴が開き黒焦げになったギークが落ちていくのが見えた。
「はぁ、もうちょっとまともな研究してればなー…」
ギークは確かに優秀な研究者で優秀な魔導士だ。しかし人は育った環境で変わってしまう。彼の家は代々優秀な魔導士を輩出してきた名門だ。だから他人に負けてはならないと教えられてきたしプライドも高く持てと言われてきた。そのせいで彼は私に勝つためにどんな手でも使うようになってしまった。私は一般人を殺した彼を許せない。でもそんな彼をつくってしまった環境も許せないのだ。しかしそんなことを言っても何にもならない。たまに私はそんなやるせない気持ちに囚われることがある。強いだけじゃどうにもならないこともあると痛感することもあるのだ。きっと私が王になっても神になっても救えない人がいるのだろうと...でもだからこそ、救える命は救おうと私は強くなった。
「もっと強くならないとな...」
いつか今私がどうにも出来ないと思っている人たちも救えるようになる日が来ると信じて。

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