未来

水無月六佐

未来

 2017年、X月13日。


 保育園の騒音に耐えられなくなった近隣住民の老人三人がそれぞれ凶器を持って保育園に乗り込み、児童、保育士に傷を負わせる事件が起きた。異変に気付いた近隣住民や警察に老人たちが取り押さえられるまでに、児童七名、保育士一名が死亡、軽重傷者が九名出た。また、心に深い傷を受けた児童も少なくなく、その保育園に通う児童、保育士がカウンセリングを受けることになったという。


 2017年、X月15日。
 13日に起きた事件は前々から問題になっていた保育園と近隣住民とのトラブルに世間の目を向けさせるのに十分な事件であった。マスコミは、なぜこの事件が起きてしまったのかを大々的に取り上げた。聴力の低下により、子供の声などの高い音をより不快に感じたり、苦痛に感じやすくなる老人もいることは世間の人々の常識となった。


 2018年、Y月Z日。


 日本は今、大変な事が起きている。ある若者をリーダーとする団体が老人たちを抹殺しようと立ち上がったのだ。


 2019年、A月E日。


 日本人の平均年齢は著しく若くなった。




『子孫を増やせなくなり、聴力が衰え、視力が衰えた者が何故権利を主張するのか? 私たちこそが人間だ。私たち若者こそが基準であり、人間であるのだ』




 2052年、B月C日。
 私はもう死のうと思う。人間である内に死のうと思う。


 2052年、B月D日。
 私は今から死ぬが、まだうっすらと、この世界が本当に正しいのかと、疑問に思うことがあるのだ。
 今の私ではもう正常な判断ができないだろう。なので、過去の人類に判断を任せようと思う。




『これは過去の人類に宛てた手紙である。この封筒の中には2052年までの私の日記、写真、音声データが封入されてある』








「あの、総理……その封筒は?」


「部屋に置いてあったものなんだが……エイプリルフールのイタズラだろうな」

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