恋愛の女神に会ってから俺の日常が暴走している

丸石 つぶ

8… 頭から落ちても無事なタイプの人間

    まさか空からも攻めてくるとは…。
    目の前の女の子は頭が地面に刺さっている。舗装されているというのに…。
    体はぐたっとなっていないし、血なんかも出ていないし。むしろ地面の方がダメージ大きそうだし、まあ多分無事なのだろう。
    俺の予想通り女の子は体をぐらぐらさせると、地面に足をつけて頭を引っこ抜いた。
    そして頭につけていたヘルメットのようなものを外すと。
「実験は成功ですね。頭への衝撃は0でした。」
「いや、頭は0でも体はそうはならんやろ。」
    あっ。視線がこっち向いてしまった。なんだこいつみたいな顔をしている。
    だが、すぐに納得顔になった。
    そしてなにかを期待するような顔でこっちを見始めた。
「えっと…、何ですか?」
「あなた上里翠よね。お兄ちゃんの友達の。」
    なんで名前知っているん──お兄ちゃんの友達?
「もしかして山内の妹?」
「そうよ。私は山内 楓やまうち かえで、よろしくね。」
    なるほど、兄妹そろっておかしい奴だったか。
「いっとくけど、私はお兄ちゃんと違って常識人なんだからね。」
「常識人は実験で空から落ちてこねーよ!」
「私は私が作ったものを信じているだけよ。」
    やっぱりおかしいよ。
    もしかして家族そろっておかしいのだろうか?
    一旦逃げとくか。
「あー、それじゃあ俺は学校に行くから…。」
「それなら私と一緒に行きましょう?どうせ同じ学校だし。・・・文句、ないわよね?」
    残念、逃げられなかった。
「は、はい、ないです。」
    情けないがしょうがない。 
    遥か上空から落ちてきて無傷の奴に勝てる気がしない。
「じゃあ行きましょう。」
    学校に向かう途中、楓には実験の協力要請などをされた。誘い方が兄と全く一緒で笑いそうになったのは内緒。
    それはそうと、空からきたらお構い無しかと、ずっと辺りを警戒しながら歩いていたのだが、何にもなかった。
    ひとりでいると駄目なら、次から真也を誘おうと思う。
    学校に着いたのは投稿時刻10分前だった。
    もう一個イベントがあったら間に合わなくなったかもしれない。
「あーあ、もう着いちゃったわね。」
「俺としては間に合って良かっただけどな。」
「それじゃあ、昼休みに会いに来るから、またね。」
「ああ、わかっt─っておい。」
    俺の言葉を無視して楓は行ってしまった。
    どうやら今日の昼休みは休むことができなそうだ。

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