赤いフェンリルとドラゴン

ザクキャノン

侵攻

   福岡市東区を手玉に取って占領した高麗人民軍は増大した海軍力で玄海の海の制海権を確保した。海上自衛隊の戦力を知っての作戦に出たため裏をかくことができたのである。イージス艦も旧韓国軍が使っていたF15Kスラムイーグルの空爆で撃沈され海保の巡視船まで莫大な被害を被った。
   半島に近い長崎県対馬はまだ侵略されてないが緊急警戒態勢が取られ外出中の隊員は呼び戻されてバタバタ迷彩服に装具を着けて警戒に当たっていた。対馬警備隊に所属する佐々木大雅3等陸曹はV8と呼ばれるアメリカ製の暗視ゴーグルに89式5.56ミリ小銃に照準具を取り付けて待機していた。警備隊の索敵要員として選ばれていた。
   「福岡は高麗軍が攻めてきて大変らしいな。対馬を攻めてこないのも裏がありそうよな。」
   佐々木の同期でレンジャー卒業を果たした平岡修二3等陸曹が言った。
   「おそらくコツコツとゲリラを送り込んでくるだろうよ。訓練通りに行かせてくれるほど向こうもバカではないさ。」
   佐々木3曹は平岡3曹に言った。
   福岡県の上空にはソ連製のMIG29と航空自衛隊のF2戦闘機がドッグファイトを繰り返し双方に被害が出て脱出するパイロットの姿が見えていた。
    福岡女子大学からパラシュートで脱出した航空自衛隊のパイロットの姿も見え、高麗空軍のパイロットまでも見えた。その他、九州高校のグラウンドからも遠くだが見える。
   高跳マットに寝そべってる体操服姿の女子高生の視界には上空を飛ぶ旧韓国軍の戦闘機F15Kが入った。
   「あれ、自衛隊の戦闘機?」
   女子高生が男子に聞いた。
   「いや、F15だし自衛隊から退役してるはず。てことは高麗軍。敵の戦闘機かもしれん!」
   ミリタリーに詳しそうな男子高生がびっくりしたかのように答えた。
    博多港には高麗人民軍の装輪戦車や装甲車、トラックが輸送船から降りて着て後ろからは茶褐色の野戦服を着た兵士達が降りていく。
    装甲車に搭載された機関銃で港湾警備員や警察官を射殺していき輸送船から旧ソ連製のホーカム戦闘ヘリが警備員が巡回に使う車を攻撃して警備員がスピードをあげて運転して逃げていった。
    乗り捨てられたパトカーを装甲車が踏み潰していくように轢いて前進を始める。
    第19普通科連隊は一個小隊が全滅したことで2個小隊を編成して警戒心を旺盛にして高麗人民軍が占領している地域に向かった。迫撃砲小隊が山のふもとで陣地を展開して高麗人民軍が占領してる地域を敵方にして防御線を構えていく。
    第4偵察戦闘大隊のオートバイが和白方面へ偵察を行い87式戦闘警戒車を香椎浜まで向かわせて強行偵察を行うことにした。
   廃棄の工場を隠れ場にして陣地を作りそこから偵察に向かい大隊本部に報告するようにした。
   オートバイで偵察をしていた隊員1人が銃声に驚いて転倒した。幸い無傷だったものの敵がAK74自動小銃で銃撃してきたため、バイクを盾にして応戦した。高麗人民軍の兵士が遮蔽物に隠れたタイミングでバイクを乗り捨てて民家が多い場所にバディを組んで逃げ込んだ。
   高麗人民軍の下級兵士が逃げた偵察隊員を追い始めた。
   「俺らのことを報告されれば面倒くさいことになる!今すぐにでも捕まえろ!」
    現場の長らしき兵士が叫んだ。
    偵察隊員は民家や空き地、駐車場を駆け抜けて必死に走り込む。
   「奴ら、俺らを逃がすほど馬鹿ではないぞ。追っ手が迫ってくるのも時間の問題だな。」
   偵察隊員の1人が息を切らしながら言った。
   強行偵察を行っていた87式偵察警戒車が大破した。側面方向から対戦車兵が旧韓国軍のパンツァーファーストと呼ばれる携帯対戦車弾を撃ってきていたからだった。
   夜になり第19普通科連隊は掩体と呼ばれる戦闘に必要な穴を掘って陣地を作り歩哨についていた時、高麗人民軍の偵察兵が2名で斥候に来ていた。
   「隊CP隊CP、こちら第1歩哨、敵兵2名が第1歩哨前に斥候き来た模様。」
   歩哨が報告をした。
   「こちら隊CP、敵2名了解。引き続き警戒せよ。」
   「了解。」
   本部から命令を受けた歩哨は引き続き警戒監視をすることにした。
   偵察兵が歩哨に気づいて発砲してきた。
   歩哨は反撃を開始して89式5.56ミリ小銃を連射で撃ち込んだ。偵察兵は銃弾で倒れ歩哨は報告をした。他の自衛官が死体を調べて持ち物をチェックする。駆けつけてきた増援で武器と装具を回収して隊CPに持ち帰って行った。
   明け方になり迫撃砲小隊が追撃を開始して高麗人民軍の陣地に攻撃を始めた。高麗兵達は砲弾に晒されて粉々になったりして引き裂かれていき逃げ延びた兵士達は遮蔽物や建物の中に隠れ込んだ。
   「敵の砲撃だ。安全なところに隠れるぞ!」
   指揮官が叫ぶ。
   1中隊の小銃小隊となる部隊が高麗人民軍に陸上戦を仕掛けて少しずつ町を奪還することを目標に進んでいく。
   砲撃が終わって突撃して様々な地形を利用して高麗人民軍を奇襲していき瀕死を負った兵士に銃剣でとどめを刺していき前進していった。高麗兵がAK74を必死に連射して追い返そうと躍起になっており応戦していた。高麗人民軍の狙撃手がツァスタバM76狙撃銃で頭を露出していた自衛隊員を狙撃して仕留めていく。
   「佐和山!神田!くそ!隊員2人がやられた。」
   分隊長が他の班に連絡した。
   「散って建物を利用して前進せよ!」
   他の隊員が叫ぶ。
   高麗軍戦闘ヘリが展開する自衛隊の前進部隊を機関砲で迎撃して建物にロケット弾を撃ち込んだ。ヘリから飛び出る銃弾が自衛隊を次々に倒していく。軽装甲機動車にもロケット弾を撃ち込み破壊していく。
   わずかに残った自衛官がヘリに向かって110ミリ個人携帯対戦車弾を撃ち込んだ。見事に命中してヘリは墜落していき自衛官本人は余韻に浸っていた。そこを狙撃兵が狙い撃ちにしてヘリパイロットの仇を討った。
   九州高校から見える位置では自衛隊の戦闘機F2とF15Kがドッグファイトを繰り返していた。
   「見て!自衛隊の戦闘機が戦いよる!」
   高跳マットに寝そべってた女子高生が起き上がって指差した。
    自衛隊機は物の見事にミサイルで撃墜されてパイロットがパラシュートで降下して脱出をした。
   「自衛隊の戦闘機、あっけなくやられたじゃん!」
    男子高生が驚いたかのように言った。
    一方、和白方面では博多に向けて高麗人民軍の輸送部隊が歩兵を乗せて進撃を開始していた。戦車を乗せたトレーラーが何台も通っており護衛の戦闘ヘリが低空飛行していた。
    3号線に陣地を気づいていた第19普通科連隊の小銃小隊が待ち伏せ攻撃を開始する。個人携帯対戦車弾で先頭の装甲車を破壊して動きを止めた。歩兵達が降りて車両を盾にして銃撃を開始した。
    RPG7で土嚢を破壊して突撃を始めて肉弾戦をすることになった。自衛官も必死になって銃剣で高麗兵の腹や胸を突いて倒していく。高麗兵もそこでめげるわけもなくナイフ戦で自衛官の首を斬りつけ目を刺し自衛官の死体を盾にしてハンドガンで迎撃をしていた。
   歩兵が自衛官と交戦している合間に警備線を突破して残りの自衛官を一斉射撃で殲滅をして行った。
   博多区上空にはついに旧韓国軍のC130輸送機から空挺部隊が落下傘降下を始めた。
   生き残りの警察官達が待ち構えて応戦を始める。空挺部隊の兵士が降りる手前で小銃で動き出すパトカーを連射で撃ち始めた。パトカーは降りて来ようとする兵士をぶつけて轢き逃げをしていった。
    降下した兵士は早速警察官と銃撃戦を始めて拳銃しか持たない警察官を次々に射殺していった。機動隊員に榴弾を撃ち込んで殺傷して大通りの交差点を制圧していく。ショッピングモールに突入していき隠れていた警察官や市民を射殺していき手を上げて降参した者を取り押さえて各店舗を占拠した。博多駅周辺は高麗軍空挺部隊によって占領され駅は運休せざるおえなくなり交通手段に多大な影響を及ぼした。プラットホームにいる市民を兵士が統括して警察官から拳銃、手錠、警棒を取り上げて拘束していった。空挺降下させた装甲車が軽自動車を潰して降りてきてそれに兵士が乗り込んで合流地点まで急いだ。博多警察署も制圧され軍の施設の一部として使われることとなった。大規模な市街地戦が行われ信号も機能しなくなり車を捨てた市民が逃げ惑うが地上部隊に捕まり拠点へ連行されていった。
    福岡市東区、博多区は占領され空港も封鎖された。空港では航空自衛隊の警備小隊が高麗軍の特殊部隊と銃撃戦を繰り広げてたが圧倒的な戦力の差に押し潰されて降伏をせざるおえなくなった。
    警察署や役場には高麗社会人民連邦の国旗が掲げられ周囲は完全武装の兵士や制服姿の士官、将校がうろついている状況にな
っていた。
    高麗人民軍は分散して古賀市、宗像市にまで進駐を始めて支配地域を拡大していって山間部に拠点を築いていき、対空戦に備えた対空ミサイル部隊まで配置していった。
    T80戦車の車列が宗像市の田舎町を進軍していき道路を検問で封鎖している警察を攻撃している。
    警察官達は退却していき逃げ遅れた者はすぐに投降した。
    支配下に置かれた福岡市東区では治安維持のため軍警察からなる警察隊を設立して住民の管理、占領軍の服務規律の管理を行
うことになり半島から保安省出身の人材を中心に町の管理が行われることになった。
    警察隊は各警察署で暴力団関係者や悪徳警官を探し出して署員や現地の警察官と連携して逮捕に向かった。
    高級住宅街にある暴力団幹部宅に茶色の制服を着た警察隊員が現れ幹部を呼び出す。
   「君を反社会活動の容疑で逮捕する。」
   真ん中に立っている警察隊員が暴力団幹部に告げた。
    暴力団達は状況が掴めずそのまま取り押さえられて車両に乗せられた。
   「抵抗するならこちらも容赦はしないぞ。」
   警察隊の1人が片言の日本語で言った。
   逮捕されて収監される者はバスに乗せられて香椎浜で作られた捕虜収監キャンプまで連れていかれた。捕まっているのは最後まで抵抗を試みた警察官や撃墜された自衛隊機のパイロット、自衛官、暴力団関係者ばかりだった。自衛官は特に強引な取り調べや拷問をされ暴力団員はストレス発散道具にされている。喧嘩早いヤクザが警備兵に殴りかかって自動小銃で射殺される事例まで出ていた。
    再び空挺部隊が第二次降下を始め遠賀郡を占領。空挺降下用のハッチがついた装甲車や戦車、車両を空中投下してそれを降下した兵士達が次々に掌握していく。
    和白地区にあるゴルフ場には高麗人民軍のヘリが飛来して特殊部隊がヘリボーン降下して住宅地に潜伏していった。降下したのは旧韓国で精鋭と言われてる特戦司と呼ばれるエリート部隊で近接格闘に精通した猛者揃いの集団だった。
    住宅地で追われる身となった偵察隊員は無線機を銃撃された際に被弾させてしまい使えず仕舞いにしてしまっていた。彼の名前は羽田周太郎。階級は3等陸曹。入隊4年目で陸曹になったばかりの若手だった。バディとも逸れてしまい単独のサバイバルを強いられるとになった。
    「あいつらまだしつこいな。うまい具合に1人ずつ倒すしかないな。」
   羽田3曹は銃剣で1人距離を離れた敵兵を後ろから首をスパッと切って倒した。
    福岡市東区を統括した高麗人民軍配下の警察隊は定期的に町を巡回して反抗的な市民を捉えていた。捕らえられた人は総合体育館に連れていかれて集められた。中には生活水準の高そうな富豪らしき人も含まれていた。
    高麗側についた市民で構成される警察隊配下の治安連絡員が高級なスーツを着た男を2人で連行した。連れていかれた先は茶褐色の制服を着た士官と野戦服を着た兵士がいる控え室だった。
   「貴様は資本主義という薄汚い毒に塗れた結果、全て金で物を言わせる世界を歩んでいた。これからはこの手で浄化してやろう。」
   士官が薄ら笑いをしながら男に言った。
   兵士が高級スーツを着た男を殴り始めた。男はぐぁっと痰を吐き出した。それでも兵士は顔を蹴ったり腹や足を踏みつける。控室からは暴力によって苦痛を受ける男の叫び声が響きわたった。
    警察隊の巡回によって捕獲された被疑者を処刑される時が来て捕まったのはSNSで高麗人民軍と最高指導者をフォロワーやネットナンパして知り合った女子高生や女子大生達のコケにした青年だった。
   警察隊に連行される青年は何が起こったか把握できず動揺している。
   「貴様を反逆罪で重罪とし、処刑する。」
   死刑執行人は機関銃の安全装置を解除して言った。
   「これはこれは非常に失礼だ。無能な神経の貴様はネット社会において我々の偉大なる最高指導者様を女子高生や女子大生など若い女たちを笑わかすためのネタにして侮辱された。あまりにも無礼な腐った虫を駆除しなければならない。よって貴様を処刑する。」
    将校が目をギラつかせて言う。
    青年は怯えており失禁していた。 
   「撃て!」と将校が声出すと同時に執行人が機関銃を撃ち続けた。撃たれまくった青年は風穴だらけになり顔が崩壊して全身血まみれになった状態の死体へと変わり果てた。
   第19普通科連隊のレンジャー有資格者で割り振られて構成されたR部隊は私物の迷彩ハットやつばの短い戦闘帽を被って装具も特殊部隊が好みそうな私物を使い89式自動小銃には照準具を装着していた。顔は暗い色にフェイスペイントして陸上自衛隊で運営されているUH1ヘリコプターに乗り込んだ。
   R部隊の任務は警察隊撹乱作戦で占領して統括している街に妨害工作をしかける事だった。
   スナック店にヤクザを取り締まるために警察隊が摘発を始めていた。保安省出身のコウ・デジュン中尉をはじめシュン・コリン軍曹、キム・ベンスン伍長が小型サブマシンガンのスコーピオンを装備して突入した。護身用の拳銃で対応しようとする用心棒を始末して組員を銃声で脅して動きを止める。その時、爆音とともに目の前が眩しい光に晒される。
   「クソ!いきなりなんだ?!」
   コウ中尉が叫んだ。
   銃声と共にキム伍長が額に風穴を開けて倒れる。
    「ベンスン!コウ中尉大変です!キム伍長がやられました!」
   シュン軍曹が慌てて報告する。
   眩しさから解放されると同時にコウ中尉の視界に入ったのは少数で任務を遂行しに来た自衛隊のR部隊だった。
    コウ中尉は机を横に倒して盾にしてからスコーピオンサブマシンガンを連射した。
   R部隊の1人が首と胸、足に銃弾を喰らって倒れる。
   他のR部隊員が照準を合わせて射撃をする。素早く動く警察隊に手を焼いたところを手榴弾を投げ込むがコウ中尉が捕らえるはずのヤクザを盾にして爆発から身を守った。無残な死体となったヤクザを盾代わりにしてサブマシンガンを撃ち続ける。
   「しぶとい奴め!死ね!」
   R部隊員を必死に狙って撃ちまくっていた。
   シュン軍曹が移動した先をR部隊員がピンを抜いた手榴弾を空中爆発させた。
   「クソ!嘘だろ!」
   シュン軍曹はそう言って爆発の衝撃で無残に爆死した。
   「なかなか腕の立つようだな。自衛隊でステータスの高いレンジャーか!こんなとこで戦えて光栄だな!」
    コウ中尉はサブマシンガンの弾倉を取り換えて弾を補充して反撃をした。
   R部隊は遮蔽物に隠れて退避するがコウ中尉はシュン軍曹の弾薬を回収して裏口へ回り込んで行ってナイフ戦を仕掛けた。
   R部隊員はコウ中尉の格闘戦に圧倒されて1人が首を切られた。もう1人が上手い具合に捕らえてコウ中尉の顔を膝蹴りするがいつのまにか手榴弾のピンを抜かれて道連れに自爆された。4人組で構成されたR部隊のチームは全滅してしまった。後に警察隊の増援が駆けつけて来て3人の警察隊の死体を回収した後にR部隊員の死体から小銃を回収して弾薬も集めた。写真も撮りそのまま本部へ戻る。
   警察隊本部には自衛隊のレンジャーが襲撃して来た情報が上層部に入った。
   「何だと?!自衛隊のレンジャーが攻撃して来て3人共死亡!?」
   警察隊将校は驚きを隠せなかった。
   コウ中尉達を殺傷した敵部隊の写真まで送られてどんな部隊なのか確認していた。
   写真の死体の胸にはレンジャー徽章が付いており一人一人が自衛隊の一般部隊で超過酷な訓練を乗り越えて来たことを物語っていた。
   「これは旧国家情報員が分析してた例のものか?レンジャーという優れ物だな。」
   警察隊将校は頭を抱えていた。
   他のR部隊の要員が工兵が設置した器材を破壊したり駐停車している装甲車、軍用トラックの破壊をして妨害工作を行い高麗人民軍を裏から混乱させていた。
   「警戒を厳重にしろ!自衛隊のレンジャー対策にだ!」
   警察隊の幹部達は下士官に命令をする。
   第4偵察戦闘大隊の16式機動戦闘車が迅速な動きで高麗陸軍のT80戦車を撃破した。偽装を上手い具合にしているためどこから撃ってきたか分かるはずもなく高麗兵達は慌てて隠れる。運良く軽傷で済んだ戦車兵が脱出して大破した戦車の陰に隠れた。勇敢に戦車を倒したのは戦闘中隊で即応性のある機動力を発揮する部隊だった。
    日が沈み暗くなり始めた頃に高麗人民軍の機械化歩兵部隊が長距離行軍を始めて糟屋郡まで移動を始めた。糟屋郡に潜入している工作員から自衛隊の部隊がまだ展開していない地域がありそこまで移動することになっていた。ほとんど車両移動で茶褐色の野戦服や迷彩のパーカーを着ている兵士が混ぜこむように乗り込んでおり荷台で雑談をしていた。夜は静けさで溢れかえり敵がいる気配なない。一方、和白地区での自衛隊残党狩りが始まり暗視装置を付けた高麗兵達が索敵を始めた。俗にいう山狩りという戦法だった。
   田舎町の山や公園、草原を捜索していきはぐれ者状態になった自衛隊員を抜け目なく探していった。公園の草原に隠れていた第19普通科連隊の本部管理中隊情報小隊の隊員は私物の偽装用品となるギリースーツで自分の身を隠した。手汗がすごい中で小銃を握って同色の草に伏せて見つからないことを祈るばかりだった。
    若手隊員の島原陽太3等陸曹は敵の巡察に見つかってバディと分散して逃げた際に孤独との戦いを強いられていた。小型携帯無線機も壊れて本部とも連絡が取れない状態になっていたが自分の目で確かめた情報をメモ帳に書き込んで脳内の記憶にもインプットさせた情報を持ち帰ることだけを考えた。とりあえずバディを探すことを始める。
   これから自衛隊は防御戦をすることになることが考えられ鉄条網を敷いて土嚢を道路上に積み立てて高麗軍の侵攻に備えた。
隊員の不足を充足させるために予備自衛官も召集されて先発が有事の際に出向く事になり福岡駐屯地の警備、前線部隊の支援に回ることになった。
    宗像市で高麗軍による物資投下が行われ現地の高麗兵達がそれを掌握する。
    宗像市の地域となる東郷では高麗人民軍が野営陣地を構築して大通りを封鎖しはじめた。  
    対空機関銃を各場所に設置して偽装を施して戦車や装甲車も草木でカモフラージュされている。
    即応予備自衛官の中宮勇次郎陸士長は小銃小隊の一員として前線部隊の支援に回って班長として世話になった丸川寛人3等陸曹の分隊として動いていた。普段は射撃の成績が良く予備自衛官から選び抜かれた隊員のひとりで今は激戦区となっている市内にいる。
    丸川は自分が逃げ切れる程度の穴を空き地で掘ってそこに隠れていた。中宮も草や木の枝で鉄帽をうまく偽装して敵が占領している方向へ銃口を向けるようにする。
    草で覆われた場所には重機関銃が設置されて他にも対空機関銃も用意されていた。
    航空自衛隊の春日基地には厳重警戒が敷かれ目の前の警察署も機動隊達が待機している。
    地下に潜って潜伏していた偵察隊のレンジャー保有者達はマンホールから占領地域の偵察を行っていた。地下までの経路は高麗軍に把握されておらず任務をこなすのは容易だった。
    通り道を塞ぐ土嚢周りに高麗軍の歩哨がついていた。そこにいるのは下級兵士で下士官が自分の楽できるようにするために下っ端に押し付けていた。そのため下級兵士は不眠不休になり立ったまま居眠りしていた。それが災いして自衛隊のレンジャー保有者で構成されたR部隊に後ろから銃剣で首を掻っ切られて絶命した。
    「こちらチーム1、敵の歩哨を排除。」
   小型無線機でR部隊員が報告をする。
   無線機からは聞き取れない言語が飛び交っている。
   個人携帯対戦車弾を装備したR部隊員が装甲車に狙いをつけて射撃して撃破した。
   茶褐色の野戦服を着た人民軍兵士がAK74自動小銃の切り替えレバーを操作して急ぐように現れた。少数のR部隊員は迅速に照準をして射撃を開始する。位置がばれて交戦を強いられたなら戦うしかない。ゲリラ戦を仕掛けて人民軍兵士を撃退していく。
   ハインド軍用ヘリが自衛隊陣地を空爆していった。自衛官は非常警戒態勢を取らせて合図を出し避難するために掘った穴倉に隠れた。対空機関銃に射手と装填手が照準をして射撃を始める。ハインド軍用ヘリはそのまま通過して行った。
    高麗人民軍の本部で入電が入った。
   「我が同志は福岡の宗像市を占領。現在機甲旅団が古賀、新宮に向けて進撃を開始した。そこを落とせば北九州を手玉に取れる模様。玄海、響灘は海軍が制海権を握った。」
   無線ラジオから報告が流れる。
   響灘でイージス艦が高麗海軍の特殊部隊に占拠され自衛艦旗が引きずり降ろされて高麗人民軍が祖国の国旗を立てはじめた。
    海上自衛官の死体を海へ落とし小型ヘリから海兵が降りてきた。
   北九州地域では小倉駐屯地の普通科連隊が待機をすることになった。レンジャー保有者で特殊任務部隊を編成してその40レンジャー小隊と名付けた。7月入隊の季節隊員としてレンジャー卒業後、3等陸曹に昇任していた緒形龍一郎は陸士長の隊員を連れて武器庫まで案内した。
    「お前ら照準具と暗視ゴーグルV8を忘れるなよ。狙撃の奴らは対人狙撃銃を点検しろ。」
   緒形は後輩の陸士長に呼びかけた。
   古賀市の山間部にあるゴルフ場に高麗人民軍の輸送ヘリが上空に現れてロープを下ろすと同時にゲリラ・コマンドが降下を始めた。全員集合を始めるとそのまま展開して従業を射殺して山の中に逃げ込んだ。他の場所でもゲリラが潜伏して犬鳴峠や宮若方面にも展開して検問を敷き始める。山間部や集落にも立て籠って住民を統括していく。
   和白地区では島原3等陸曹が89式自動小銃の弾を切らして旧韓国製のK2自動小銃の弾倉から共用で使えるM16弾倉を回収して弾を込めてゲリラ戦の準備をした。2人程度の高麗兵を少しずつ撃退して廃墟や民家に逃げ込んだ。この地域では警察隊と軍が未だに自衛隊残党狩りを始めて多数の捕虜を捕らえている。
   また空中戦のドッグファイトが始まり自衛隊機と高麗空軍が派手に決闘をしていた。高麗空軍機のMig29戦闘機が次々に撃墜されていく。
    「おお、空自もなかなかやってくれるな。まあ、性能は空自が上だろうがな。まるでアニメのマクロスみたいだな。」
   島原が呟いた。
   九州産業大学美術館の展示品の前に兵士が記念写真を撮って遊んでいた。上官がそれを注意する。
    高麗人民軍の中隊本部には戦死した兵士の死体を袋に詰めて士官以上の軍人が敬礼をする。
   「今この袋の中にいる同志は人民の架け橋となって散って行った。彼らの名誉に敬礼。」
   中隊長がずっと敬礼した。
   死体を国に送ることができなくとも遺留品を輸送部隊に頼んで送り返すことになった。
   「ヤマトナデシコ、博多美人共!今に見ておれ!人民軍同志の団結と迫力を見せてやろうではないか!」
   中隊長はタバコに火をつけながら独り言を言った。
   
    
    
   
   

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