江戸という街

Pman

江戸という可能性

天下分け目の戦いからはや百年。今日も江戸の街は賑やかである。
「親父さん、今日もありがとう」
使い古された浴衣に草履、楊子を咥えた格好は柄の悪い印象を与えるが、彼の表情は晴れやかである。彼こと時坂五郎は大工を始めて十年の若手大工である。結婚もしており、公私ともに忙しい男である。
彼はいつも世話になっている木材屋の主人と別れた後、暇ができたので、ある場所にでも行こうと考えていたところであった。
その場所とは、彼にとって茶屋のような場所。暑さというストレスを解消してくれるような、心休まる場所である。どのみち、寄った後茶屋にもよるつもりなので、なかなか都合が良い。
その茶屋まで歩いて一里程度だが、暑い日差しに浴衣の藍の色も相まって、体に熱がよくこもる。茶屋には遠くなるが、街道を逸れて裏道からいくことにしたのだ。
人一人通れるかも微妙な、道と呼ぶには相応しくないそこを通るのも中々骨が折れた。
瓦を避けたり、ぬかるんだ土に足をとられ、滑らせたり、ここを通る利点を彼はもう忘れていた。
ただ、浮気している彼女がそこにいる以外は。







ある意味、彼にとっては、透明な女である。


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