Pman

文化祭

文化祭の準備が始まる。
校内は賑やかで、資材をもった生徒が廊下を行き来している。
準備期間は忙しく、苦しいものだが、本番を迎えたときのあの高揚感、成功を収めたときのあの感動は何ものにもかえられない。ってことを俺はしっている。
そして去年の制作チームと比べ、今年はクラス1の花の大庭おおばさんがいる。四月から手回ししておいてよかったと思う。
「大庭さん、ちょっとそこの木材とってくれない?」
「いいよ、こっちの大きい方?小さい方?どっちかな」
「大きい方で」
彼女の肩まで下がった髪が揺れる度に何か思わせられるのは、自分がおかしいからなんだろうか。彼女の白くか細い腕が頑張って重たいであろう木材を持っているのは男子一同考えさせられるものである。
「はい。黒木くん」
「ありがと」
(やっぱり、かわいいなぁ)
(え?)
(ぶりっ子な感じがしないのが、清楚と呼ばれる由縁だよな)
(え?誰?)
「大庭さん、何か言った?」
「言ってない、言ってないよ」
(そんな、否定する仕草もかわいいんだよなぁ。小さい指で横に振って)

ポッ、と彼女の頬が高潮する。
(そんなことないよ)
「大丈夫?顔赤いけど」
「大丈夫」
(やっぱり、大庭さんの声が聞こえるんだけどなぁ)
(さっきから、筒抜けなんだよ!気づいてないでしょ!黒木くん!)
(え?大庭さん?)
(そーだよ!)
(え?なに?心の声?え?繋がったの?こころ?)
(そうみたい)
(それは、大変だ)
口角がちょっと上がってしまう。
(ちょっと、全然そんなの思ってないでしょ)
(まぁ、ラッキーぐらいですねー)
(もうちょっと、大事おおごとだと思うんだけど)
(クラス1の高嶺の花と一緒になれて私は嬉しいんですけどねー)
(一緒になるは大袈裟。私はは困るんだけど)


「ねえ、大庭ちゃんと黒木くん。さっきから、見つめあってるけどどうしたの?」(キスでもするの?)


「「キスなんてしないよ!!」」


「あれ?私、言ってた?」
「心の声がいってたよ!もう!」
「大庭ちゃん、それは怖い」
(あらまぁ、付き合ってんのかなぁ、息ピッタリで)


「「付き合ってないから!!」」
(そーゆーやつこそ、大抵は付き合うんだよねー)


「ねえ、また見つめあっちゃって本当にどうしたの?」

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