ポイント

Pman

第2話

五月。中旬になって、クラスの距離は少し縮まったし、クラスの中での立ち位置というものも、粗方決まってきたように思われる。
特に目立っているのが、蒼井康生と、遠野帆乃夏。
蒼井康生は、イケメンのお調子者といた感じで、クラスの中の人気度もそれなりに高い。
遠野帆乃夏は、蒼井君と同じく、容姿端麗かつお金持ちのお嬢様といった感じで、高い化粧を施しているのが鼻につく。僕は嫌いなタイプだ。だが、クラスの中では、ダントツで人気が高い。彼女には逆らえない。
蒼井君は、どちらかというと、容姿を鼻にかけることはなく、遠野によくポイントを払っている。ここで、彼に対して言う、ポイントを払う、というのは、気を遣う、ということで、とにかく蒼井君は、遠野に対して常時気にかけている。それに関しては、まだ悪い気はしない。重い荷物を代わりに運んだり、飲み物を買ってきたり、そんなところだからだ。
実は、このポイントという概念を思いついたのも、彼が要因にある。彼は、大体八ポイントをその人気度から持っていて、遠野は約十二ポイント。ポイントが頭上に見えたり、変な記号が見えたり、ということではなくて、完全に僕の感覚だ。蒼井君が、ジュースやなにか仕事を代わりに手伝うと、一ポイント減る。七ポイント。そうやって、どんどんポイントを減らしていって、最後ゼロになると彼は、そういった媚びへつらうようなことをやめる。というより、一日が終わる。
蒼井君のポイントの使い道が変なだけで、本来は、「友達にシャーペンを忘れてしまったから貸してほしい」。そういった時に、そのシャーペンの代わりに貸してもらった人のポイントが減る。本当はそんな感じなのだ。だけど、彼にそれを当てはめると不自然でならないので、彼は例外と思ってほしい。
いじめられていたり、魅力がない人に何かしてやろうという気が起きないのは、そういう人に対して消費するポイントが、ゼロか少ないかのただそれだけ。
チャイムが鳴った。僕はそういったことをつまらない授業中に頬杖をつきながら考えている。

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