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Pman

第3話

「黒谷君、また、何考えてたの?」
左隣の須藤さんが僕に話しかけてきた。須藤紫織、表的に人気の高い遠野とは違って、裏の、というとちょっと語弊があるが、陰ながら目立ちはしないものの根強い人気がある。それを彼女の性格からか、彼女は物静かで、自分の人気を奢らず、またほかの人気者に媚びようともしないので、悪く言う人はほとんどいない。
彼女は、いつも授業あんまり真面目に聞いていないよね、と、僕に親しげに話してくれる。
「うーん、人間関係って難しいよね」
「なに、そんなこと考えてたの?」やだ、と彼女は笑って言った。
「たまには、真面目に授業聞いてみたら?」
「うん、そうするよ」
「もう、お昼だよね?」うんと答えると、じゃあ、私購買行ってくるね、と返事した。席を立つとき、彼女の髪がふわり、と浮かび甘いいい匂いが、鼻腔をくすぐった。
性格美人と言うけど、彼女はちゃんと顔もかわいい。ちゃんと、という言い方が軽く失礼だけど、薄い白みを帯びた肌に、ピンク色の唇。さらさらの肩まで掛かった髪に、すうっと、緩急をつける眉。彼女を形容する言葉には、もったいない言葉なんて考えられなくて、それが、逆に彼女の美しさ、かわいさを比喩するには、何が適切かでとても迷うけど、彼女のかわいさが余り注目されないのは、彼女自身が少し影が薄いところにある。だから僕なんかとしゃべっていられるのだ。


彼女がそう言って席を立った後
「遠野さん、これ、どうぞ」
蒼井君がまたなんかやっていた。温かいお茶を彼女に手渡していて、遠野は少し強引に受け取った。気になったのは、蒼井君の声が少し引きつっていて、何かにおびえるような、何かに耐えているようなそんな、いつもとは違う印象を受けた。


          

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