転生して最弱職に就職された俺達は神のお告げにより最強の複数職者達と共に異世界を旅する事になりました!?~転生者による異世界冒険弾~

市瀬燐

プロローグ

人は誰だって 人には言えない過去や事がたくさんある。
かく言う 俺にだって人に言えない事がたくさんある。
けれど 俺の“秘密”が数年前のある出来事の謎を解く鍵になるだなんて この時の俺はちっとも思っていなかった。


「景 悪いな、貴重な長期休みを貰ったばっかりに…。」
「まぁ、別にいいさ。俺 来月であそこ辞めるし。」
「えっ、お前 あそこ辞めるかよ!? 」
「…うん、まぁな。」

タッタッタッ

「はぁはぁ…すみません!渋滞に巻き込まれて遅くなりました!」
向こうから息を切らしながら全速力で走って来たのは待ち合わせ相手である俺と景の高校時代の2年後輩にあたる良と尊龍だった。
「はぁ、遅過ぎるよ。」
景は若干いらつきながらそう言った。
「まぁ、理由が理由だしそれは考慮こうりょしてあげようぜ。」
「…だからお前はそうゆう所がぬる過ぎるって高校時代 先輩達に毎度毎度言われたんだぞ。」
「…あれっ、そうだっけ!?」
「はぁ…。(お前はそうやって気付かないふりをするのも昔からのくせなんだからな。)」
「とにかく 今日は久し振りにこうして遊べる機会が出来たんだから心の奥にしまった暗い事全て忘れて 心身共に疲れ果てるまで遊園地でいっぱい遊ぼうぜ!」
「「はい!」」
「返事だけは一丁前だな。 まぁ、今日は久し振りにあいつの意見に乗っかってやるか…。」
「なんか 言ったか 景?」
「…いいや、何でもない。」
景は普段とは違い、なんだか浮かない表情をしながら 淡々とそう言った。
「そっか、ならいいさ。」

俺はいつもとは様子が違う景の態度に
少し違和感を感じていた。

ズキッ
「うっ…。」
「大丈夫か 樹? 俺 頭痛薬持っているけど飲むか?」
「…いい、すぐ治まったから要らねぇよ。」

俺は景から貰った飲料水を飲みながら、さっき突然起きた 頭痛とふらつきに何か不吉な予感を感じていた。

飲料水を飲み 少し休憩を取ると不思議な事に先程の頭痛とふらつきが消えてしまった。

「休日とはいえまさか 帰りのバスがこんなにもガラ空きだなんてな。」
「確かに。」
「そういえば、今日は休日なのに平日と同じぐらいの混み具合でしたね…。」
「うーん…。樹の言う通りだな。」
「まぁ、確かに休日なら もっと混むだろうし、パスの発券も平日の倍以上のペースで発券が終了するはずなのに入りが少ないせいかアトラクションにいたキャストさん達が困惑していましたね…。」

防寒対策が効かない程 冷たい吹き下ろしの強風に耐えながら俺達が遊園地のバス乗り場で話しこんでいる内にお待ちかねの折り返しバスがやって来た。

俺は中間あたりの通路側に座り、景は無言で俺の隣に素早く座った。
良と尊龍は俺の反対側の席に座り まるで双子の様に同じタイミングで欠伸あくびをした。

しばらくして向かいの席をのぞくと良と尊龍は寝息を立て熟睡していた。
「気持ち良さそうに寝てるな笑」
「あぁ、そうだな。」
「俺 眠くなって来たから寝るよ。 何かあったら すぐに起こせよ!」
「あぁ、分かった。」
そう言って 景は眠りに就いた。
(…とは言ったけど俺も本当は寝たいんだよな。 でも少しぐらいならいい…よな…?)

俺は景に少し負い目を感じつつも少し休憩するつもりで目を閉じた。

バリン
ガッシャン

ボキボキボキボキ
(なんだあの音…。)

突然の体が浮かびそうなくらい大きな衝撃
と音でふと目を覚ました。

ふと周りを見ると外部からの衝撃の影響なのだろうか 窓ガラスは全て粉々になり 窓枠は四隅が曲がり原型すら留めていなかった。

手の感覚を確かめようとした瞬間、目の前にもやがかかり始めた。
どうやら少しずつ意識が遠のいていっているみたいだ。

突如 喉に激しい痛みとたんが詰まった様な息苦しさを感じた。

(なんで…俺が…こんな目にあわなきゃならないんだ!)

あぁ 俺は護りたい者も大切な人も誰一人も護る事が出来ずにこの世を去るのか…。

俺は一体何の為に生きたのだろう…。

こんなにも哀しく苦しい思いをたくさんするなら 生きなきゃ良かったんだ…。

これまでの自分に情けなさを感じつつ
もやがかかった両目を固く閉じ
俺の意識は暗闇へと落ちていった。



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