SNS仲間で異世界転移

浪村

第8章 4話 可能性

翌朝。昨日の話を聞くために美泉は合鍵を使って、寝ている龍剣達の部屋に忍び込む

美泉「ったくもう、自分が来てくれるって言ってたくせに」

香奈「まあ、龍剣らしいと言えばらしいよね」
 
香奈が苦笑いしながら言った

爆睡する龍剣の顔をいつものように眺める

美泉「でもまぁ疲れてるだろうし、この可愛い寝顔に免じて許してあげようかな」

龍剣の頬を二度突ついてから、ベッド脇に腰掛けて話をしながら時間を潰す2人

喋ること30分。龍剣達がまだ起きないので、仕方なく起こすことにした

美泉「龍剣ー!起きてー朝ですよーコケコッコー」

香奈「『コケコッコー』って‪w‪w」

布団を捲ってそれぞれの体を揺する


龍剣「んん…あーもう何でまた入って来てんだよ…」

美泉「もうバラしちゃうけど、この部屋の合鍵持ってるから」

龍剣「そういう事か…ってか布団返して」

美泉「やだ」

龍剣「お願い」

美泉「やだ。ほい、香奈。パス」

香奈「ほい。龍剣、起きなーさい」

龍剣「あと5分…」

香奈「やーだ」

龍剣はしぶしぶ体を起こし、壮助と汏稀を連れて顔を洗いにいった

美泉「ねぇみんな、朝ごはん外に食べに行かない?」

壮助「別にいいけど」

汏稀「久々に、いいかもな」

龍剣「いいよー」

龍剣達は洗面所から顔を出して答えた。そしてすぐに身支度を終え、外に出た


香奈「どこで食べようか?」

龍剣「そうだなー…あそこがいいな」

龍剣が指差したのは、よくエルドと6人で来ていた「26時間営業」の看板が目印のノートン焼き屋だった

美泉「懐かしいねー」

壮助「何気にあれ以来行ってなかったからな」

店に入るとあの時と同じ窓ぎわの席に座り、朝食メニューを注文した


香奈「ここでエルドさんと6人で食事したんだよね」

龍剣「俺達お金無くて、申し訳なかったよな」

懐かし話に花を咲かせていると、注文したメニューがきた。龍剣達男子陣と香奈はそれぞれ指輪とネックレスを外した

美泉「そっか、あたし以外は指輪とネックレスはまだあるんだよね」

壮助「ああ、結局奥義シークレットは使わなかったからな」

美泉「あーあ、私はもう力使えないのか」


龍剣「いや、あったとしてももう使う必要はないぞ」

美泉「え?」

壮助「使う必要が無い?」

香奈「それって…」

汏稀「どういう意味だ?」

龍剣「あ、この事を昨日団長と話してたんだけどさ…」

美泉「うんうん」


興味津々に話を聞き続ける4人だが、この後龍剣は予想だにしない事を口にする


龍剣「俺…騎士団を辞めるから」

美泉「……………へっ?」

壮助「龍剣が…」

香奈「騎士団を…」

汏稀「辞める?」

龍剣「俺は辞めるけど、みんなはどうする?」

美泉「『どうする』って…辞める理由がないじゃん!何で急にそんな事を…」

龍剣「悪い、これを先に言わないといけないな」

龍剣はさらに驚くべき事を言いだす

龍剣「元の世界に帰れるんだ」


香奈「………ほ、ほんとに?」

壮助「元の世界って…」

汏稀「『地球』に、って事か?」

龍剣「そう。100%とは言い切れないけど、結構な確率で帰れるはずだ」

美泉「でもどうやって?」

龍剣「俺の星の力だ。バッドローグをブラックホールで消した時に、ほんの一瞬だけど空間の歪みで元の世界が見えたんだ。その感覚はしっかり覚えているから、応用して元の世界への扉を作る。俺の考えた"星神奥義スター・シークレット"だ」

美泉「すごい……もう帰れないと思ってたのに…」

龍剣「どうする?皆一緒に帰るか?」

美泉「それはもちろん帰りたいよ…」

壮助「確かに…」

香奈「帰りたいけど…」

汏稀「うーん…」

帰りたい。それは常に5人の心のどこかに置いてあった想い。だがたったの半年だったとはいえ、この世界とおさらばするのもとても名残惜しい


龍剣「別れるの辛いよな。皆いい人達だったから」

美泉「うん。でもちゃんと皆にお別れ言って、それから元の世界に帰る。人生、出会いと別れの繰り返しなんだから、こんなことでグダグダしたらダメだよね」

壮助「そうだな」

香奈「ならさっそく今から本部に行こ!」

汏稀「よし!行くか」

5人は朝食を済ませて店を出た。そして本部に向かって歩きだす


龍剣「この世界に来たときも思ったんだけどさ、美泉ってやっぱ強いよな」

壮助「それ、思った」 

香奈「確かに」

汏稀「うん、同感」 

美泉「えー?皆の方が強いよー」

壮助「いやいや。さっきの切り替えっていうか、前向きなところとかさ」

美泉「まぁ人生前向きにいかないとやってられないからね。ってまだ17年しか生きてないんだけど」


龍剣「でも弱いとこも俺は知ってるぞ」

美泉「え、どんな?」

龍剣「辛い事があったら何かと泣き出すとこ」

美泉「うっ…そ、そこはこれからの目標だから…」

龍剣「あれー?それ、初日も聞きましたけどー?昨日も勝手に俺を殺して泣いてたのは誰だっけー?」

美泉「う、うるさいばかぁ!」

ペシッ 

龍剣「あ、痛って」

5人で仲良く会話しながら歩いていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた


「よお、みんな」



龍剣「ん?」

美泉「あ、エルドさんとマルスさんだ!」

5人を呼び止めたのは日帰りで仕事に行っていたエルドとマルスだった

壮助「仕事の帰りですか?」

エルド「うん。ちょっくらロンギスの討伐にね」

マルス「ほら、土産いるか?」

マルスは担いでいた大きな角を冗談で渡してくる

汏稀「いや、遠慮しときます」

即答する汏稀


香奈「この角大きいですね」

マルス「これでも3分の2くらいだぞ。でかいから削ってきた」

美泉「すごーい」



エルド「5人は今日休みかい?」

龍剣「あ、その…まぁ休みです」

エルド「なのに本部に用事?」

龍剣「え?」

5人は気付かぬうちに本部の前まで来ていたようだ

壮助「はい、団長のところに」

エルド「そっか」

受付にいくエルド達と別れて、5人は団長室に向かった

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