SNS仲間で異世界転移

浪村

第8章 1話 宿り

美泉達4人が地面に手を添え、火山の力を練った。すると、徐々に雪が溶けて埋れていた兵士達の姿が続々とあらわになった

美泉「エルドさん…ティアーノさん…」

青ざめた肌、冷えきった身体、開かぬ瞼。これだけで何を物語っているかは一目瞭然だ

ドルゼ「村に戻って増援要請を出してくる。荷馬車を持ってこさせるから一ヶ所にまとめて待機しておけ」

バンギック「ああ、わかった」

ドルゼは急ぎ足で山を降りていった。そして残った6人で遺体を探すこと30分。なんとか1人も欠かさずに遺体を見つける事ができた

バンギック「これで全部だな。もうすぐ増援が来るだろうからしばらく待ってろ」

汏稀「はい…」

壮助「わかりました…」

集めた遺体のそばで体操座りしてうずくまる美泉。その横に寄り添うように座る香奈。少し離れたところに大きくあぐらをかいて座り込むバンギック
香奈はずっと美泉を慰めていたが、バンギック達は特に話すことはなかったので、しばらくそのまま待ち続けた

すると、ドルゼと本部からの増援が荷馬車に乗ってやってきた




リク「美泉!!!」

その中からこの世界に来てから出会った同い年の兵士、リクが一目散に走り寄ってきた

美泉「リク……」

リク「勝ったんだって!?やったじゃん、すげぇよほんとに!」

美泉「あ…う、うん…勝ったよ…」

リク「どうしたんだよ!勝ったっていうのにテンションが……」

ふと美泉の後ろを見ると、遺体となった兵士達がリクの目に飛び込んできた

リク「えっ……」

リクは一気に青ざめて言葉を失った。増援に来た他の兵達も同じだ。ここに来るまでこの事を知らなかったのだ。そしてリクがある異変に気付く

リク「壮助、香奈、汏稀、それと美泉………龍剣はどこだ?」

美泉「……」

リク「おい、みな…」 

バンギック「ボケっとしてねぇでさっさと積み込め」

気を使ったバンギックが強引に話を逸らし、兵達を作業に取り掛からせた


美泉「……待って、下さい」

ドルゼ「なんだ?」

美泉「荷馬車はいりません。遺体も乗せないで」

突然意味のわからない事を言い出す美泉。兵士達は当然、キョトンとしている

ドルゼ「どういう事だ」

美泉「皆を……生き返らせます」

ドルゼとバンギック以外は、さらにキョトンとした顔になる

リク「何言ってんの…?辛いのはわかるけどさ、無理なもんは…」

美泉「無理じゃない、できる」


ドルゼ「そんな力があるのか?」

美泉「はい。私の"森神奥義フォレスト・シークレット"なら皆を生き返らせる事ができます」

汏稀・香奈・壮助「!?」

残りの異世界人3人が目配せし合う

リク「まじかよ!なら何で早く言わないんだよ!」


バンギック「あのガキか…」

美泉「はい…龍剣の遺体だけがないからやるにやれなくて…。でも蘇生も早くしないと効かなくなっちゃう……」

ドルゼ「お前も居たからわかると思うが、あの爆発で遺体が残っているとは考えにくい」

バンギック「あったとしても肉屑だろうがな」

美泉「ですよね…。覚悟、決めます」

美泉は意を決して森神奥義を行うことにした



美泉「森神奥義フォレスト・シークレット、コスミックヒール!!」

フワアアァァァーー!!

美泉を中心に、緑の光が渦巻く


美泉「リバイバルセンス!!」

両手を大きく広げると森の力が解き放たれ、荒れ地は草原となり、綺麗な花々が咲き乱れた
そしてその力を浴びた遺体達は少しずつ顔色を取り戻していった

リク「すげぇ…」

ソフィア「綺麗…」


美泉は自分が持っている全ての力を出しきった



パリン!!



美泉「はぁ…はぁ…ネックレスが…」


奥義を使用した代償として、ネックレスは壊れてしまった


イオネット団長「う…うう…」

団長を始め、全ての兵士が生気を取り戻した

美泉「よかった…成功したみたい…」

力を出しきった美泉は疲労で倒れそうになったが、ソフィアと香奈がそれを支えた。そして、そのままソフィアに身を任せて眠りについた

ソフィア「お疲れ様」

優しく美泉を抱いて頭を撫でるソフィアの姿は、まるで姉のようだった


「っしゃあぁぁーー!!!」

「うおおおぉぉぉーー!!!」


上位ランク兵の生還に、みんな歓喜の声をあげている


ティアーノ「あれ、確か腹を殴られて意識失って…」

エルド「なんで僕はこんな花園にいるんだ?」

マルス「ここは天国なのか?」


ドルゼ「現実だ。みんな生きている」

イオネット団長「一体誰が…?」

バンギック「"5人の英雄"のおかげでこの世界は救われた。そこで寝ている小娘と、散っていったあのバカ野郎と、その仲間達によって…」


イオネット団長「そうか…」

バンギックの表情を見て悟った団長は目を閉じて、5人と戦ってくれた兵士達に心の中でお礼をした

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