SNS仲間で異世界転移

浪村

第6章 12話 汏稀、鬼人と化す

ー汏稀sideー

ブラッディデーモン最強の男を相手に、汏稀はなんと互角の戦いをしていた

ヘリウス「貴様、敵にしておくには惜しい男だ」

汏稀「はっ、そりゃあどーも」

汏稀は経験こそ少ないが、集中すると凄まじい力を発揮するのだ。プロスポーツ選手がたまに口にする、"ゾーンに入る"といった感じだ。ヘリウスは敵ながら、汏稀の将来性を見抜いていたのだ


ヘリウス「ならこのスピードにはついて来れるか?」

並の人間ではあり得ないスピードで鉤爪クローをしかけてくる

汏稀「(さっきの倍は速い…!)」

汏稀は双剣を巧みに扱い、その攻撃をすべて弾いていく

ヘリウス「つくづく惜しい男だ。お前、俺達のところへ来ないか?」

汏稀「………やだ♪」

ヘリウス「そうか、ならもう用はない。消えろ」

汏稀「(すげぇ殺気…)」

先ほどと同じスピードで攻撃してくるヘリウス。だが1つ違ったのはその重さだ。スピードは変わらないのに、汏稀の体制を立て直す時間だけが増えるのでどうしても劣勢になってしまう

キーン!キーン!

刃と刃のぶつかる音だけが響き合う。そんな時、離れた場所で爆発音が聞こえた

ドオォン!バァン!

ヘリウス「!?」

ヘリウスと汏稀が動きを止めた。徐々に押されていた汏稀からすれば好都合だ

汏稀「美泉のやつ、こんなところで爆弾使うなっての」

少し気を取られていた2人だが、すぐに視線を戻した

汏稀「(このままやってたら確実にやられちまうな……仕方ない、あれを使うか…)」

汏稀はポケットから小さなビンを取り出した。フタを開けると中には赤い丸薬が入っていて、それを3つ飲み込んだ

ヘリウス「見た事のない薬…」

汏稀「ちと知り合いに頼んで俺専用に作ってもらった増強剤だ」

ヘリウス「はっ、くだらん物を」

再び距離を詰めてくるヘリウス。汏稀は胸を抑えて下を向いている

ドックン…ドックン…

汏稀には自分の大きめの心音が聞こえていた

汏稀「(くっ…効果は約3分……それまでに終わらせる!)」

汏稀の筋肉が少しだけ膨らんできた。それだけではなく、重々しいオーラをまとったような雰囲気を放っている

汏稀「準備完了…」

キーン!

左からきた鉤爪を右剣で弾く。空いた胸を狙って剣を振るが、左爪に弾かれた。汏稀は素早くしゃがんでヘリウスの両スネを斬った。それでもヘリウスはひるまず、しゃがんだ汏稀の背中を引っ掻き、距離をとった

汏稀「何逃げてんの、お前」

距離をとり、落ち着く暇もないまま汏稀が接近してきた。増強剤の効果で傷の痛みを感じていないようだ


ヘリウス「!!」

キィーン!!

今日一の金属音が響いた。ヘリウスの右爪を見てみると、刃がなくなっていた。汏稀が鋭い一振りで刃を切り裂いたのだ

汏稀「おらぁ!!」

キーン、キーン、キィーン!!

左爪も数発で切られてしまった

ヘリウス「(何だこの破壊力は…!!)」

汏稀「これで終わりさ…」

汏稀は乱舞の構えに入った

ヘリウス「(ま、まずい!乱舞か…!!)」

ヘリウスはよけるために汏稀の腕の動きだけを凝視して集中した

汏稀「乱舞……巨人の舞!!………と見せかけてー」

ガァン!!

汏稀「膝蹴り」

剣を離し、ヘリウスの髪をつかんで顔面に飛び膝蹴りをかました

ヘリウス「ぐほっ!」

汏稀「ラストォォオ!!」

バァン!

最後は顔面にストレートを放ち、ヘリウスを倒した

汏稀「はぁ…はぁ…どうだ、増強剤3つのパンチは?効くだろ……」

ヘリウスを倒した直後に美泉が駆けつけて来た

美泉「汏稀!」

汏稀「あ、美泉。こっちは終わったぜ」

美泉「えっ?汏稀1人で強いやつ倒したの?」

汏稀「まぁな」

…バクン!…バクン!…バクン!

汏稀「ぐっ……!!!」

急に汏稀は胸を抑えてもがきだした

美泉「ど、どうしたの!?」

モルファス「汏稀!」

モルファス達もやってきた

汏稀「うっ……3個分の…副作用は…結構きついな……」

美泉「背中に傷があるじゃない!!とにかく私のヒーリングで…」

すぐに美泉は魔法書を取り出して、汏稀にネイチャーヒールの光を浴びせた

汏稀「うっ……がぁあ!」

だが傷は治ったのに、汏稀の様子は変わらない

香奈「大丈夫?ねぇ…」

美泉「そんな…何で…?」

汏稀「大…丈夫。少し経てば……治るから…」

モルファス「そうか、これを飲んだか」

汏稀のポケットから増強剤がはみ出ていた

モルファス「身体能力なんて瞬時に上がるもんじゃない。それを無理やり飛躍的に上げたから、その副作用が発生しているんだ」

美泉「それは治るんですか?」

モルファス「筋肉痛が酷くなったみたいなもんだからな。汏稀は少ししか飲んでないようだから、命に別状はない」

美泉「ならよかったー」

汏稀「よくなんか……ぐっ……なぁい!」

香奈「叫ぶ元気があるなら大丈夫だね。ほら、肩貸してあげるから立って」

汏稀「あ、ありがと…」

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