ケミカルロード〜薬学はRPGで最強だと思うんです〜

彩月

1:プロローグ

気づくともう8時になっていた。俺は急いで家を出て、学校へ向かった。

そう、俺はいつものように遅刻することになるだろう。どうでもいいとは思うけど、9時には学校が始まるが、ここから学校までは1時間半かかる…どうあがいても間に合わない。はぁ、今日もあの先生に怒られることになるのか…

あの先生とは俺の担任である山田大雅先生のこと。あの先生は本当にちょっとしたことですぐに怒ってきっちりしすぎだから俺好みの先生じゃない。

そうこうしているうちに学校の門まで来た。

もう着いちゃったか…早かったな。なんでこんなにも高校生をいじめるんだよ…俺たちだってもっとやりたいことがあるのに、こんなに締め付けるのはおかしい。だって…

そんなことを思っていると門の前で腕時計を見ながら怒った顔で待っている先生に話しかけられた。そう、山田先生である。

「またおまえ、遅刻か。一体何回言ったらわかるんだ。(以下略)
あと、おまえ、もっとやりたいことがあるというならまずはもっと早く来ることだな。」

げっ!俺、無意識に心の声を外に出しちゃってたのか。放課後にまた呼び出されそうだなぁ。放送かかる前に急いで帰るのが一番だな。

そして俺は2時間目から授業に参加した。一応授業はちゃんと聞くし成績もそこそこだと思うから、そこまで言われずに済んでいるんだろうけど、最近、勉強さぼってるから一気に成績下がって、そこでまた呼び出されそうだ。

「よっ。またおまえ遅刻かよ。先生に色々言われるのが嫌ならもっと早く来いっつーの。おまえ、成績いいから、そこさえ直せば優等生なのにな。」

意地悪な顔で笑いながら、隣の席の男子が俺にそう言う。

その男子とは中学校からの友達である、宮間勇吾だ。よく言うな、お前は俺より成績いいくせに。成績が良く、運動もできる、そして性格もいい。まさに理想の男子像と言えるだろう。時々、意地悪なことをされて不快感を抱くこともあるが、彼の笑顔ですぐにその感情は消え去っていく。みんなを明るくさせる力こそ、一番のパワーだと思う。

「お前、俺より成績いいのに、そんなこと言うのはあまり俺的にはいい気分じゃないんだけど?」

「ごめんごめん、あっ、でもお前ってさ、化学めっちゃできるじゃん。化学だけはお前に負けるわ。」

勇吾が少し焦った様子でいう。

「1つぐらいはお前よりもできるものがないと嫌だからね。」

少し顔が赤くなってしまった。褒められるのはやっぱり、どこか嬉しい。

そう、俺は化学だけはこの学校では一番になれるくらいの実力を持っている。なぜ、化学がそんなに得意かって?俺のお父さんが町一番の薬師だからだな。遺伝子的に俺も得意ってこと。このことはあんまり広めたくないから皆んなには言ってないけど。親や先生にも内緒にしといて、とそう言っている。

そして俺は、今日の授業をなんとか耐えきった。体から全ての力が抜けそうだ。でも、忘れてはいけないのが呼び出されるかもしれない、ということだ。さっさと帰ろう。そうすれば、明日には忘れているだろう。

そうして俺は門から出たのと同時に呼び出されるという危機から出ることに成功した。

そういえば、お父さんが言っていた珍しい花がこの近くの森にあるらしい。お父さんからは俺が子供の頃から家にいる時にはよく、色々な話を聞かされた。それで薬学についての話も多々聞かされたから、化学が得意になったのかもしれない。そして、ある時、お父さんの話である花について知った。その花1つで多くの人の命が救えるという。俺はその時から、化学について興味を抱いていたのかもしれない。今日は早く学校を出たから今から行っても、帰るのはそう遅くならないだろう。

森の中は暗くて、同じような木ばかり並んでいて、迷いそうな場所だった。正直な気持ちをいうと来なかったらよかったなんて思った。でも、その花を絶対に見つけたいという気持ちもあった。しかし、気持ちだけで来るのは間違いだったのだろう、完全に迷ってしまった。こんなこともあろうかと歩いてきたところの木に目印をつけてきた…って消えてる…

…どうしようかな。花を探すのは諦めて、帰る方法を探すべきだろう。

あれっ、あそこで光っているのって、お父さんが言っていた花?見に行ってみようか。

そう思い歩き始めた…足を進めたはずなのだが、地面を踏んだ感覚がない…ってわぁ!

気づいた時には遅かった。俺は既に真っ逆さまに落ちていたのだ。何をしているんだ、俺は…

………俺は死んだのか?意識が戻り、目を開けるとそこは今までいた森とは全然雰囲気が違う場所だった。



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