神様にツカれています。

こうやまみか

第二章 1

「あのな……。経済学部の誠司は知らないかもしれないが、裁判を起こすには相手先の住所と名前が必要だ。その要件を満たしていない限り、裁判所が訴状を受け取ることは絶対にない。だから、訴状が――つまり裁判を起こします!的な裁判所への書類のことだ――作成される時点で誠司の個人情報が必要で、それをメールで聞いてきたということは、身元が分かっていないということで、裁判なんて起こせない。2万9千800円だかを支払ったのか?」
 ガーンという音が頭の中に響き渡ったような気がした。
「なけなしのバイト代で……払ってしまいました。しかも振込み手数料もこっち負担だかで……」
 またアホ!とか言われるんだろうな、きっと。
 しょんぼりと肩を落とす誠司を見た神様は慰めるように肩を叩いてくれた。
「ま、そんな人生も『プラチナ会員』になれば、運気は向上するし、頭だって絶対に良くなる。だから頑張って耕すのだぞ」
 クワだったかスキだったかとにかく地面を掘る道具を相変わらず空中から出して手渡してくれた。そんなに重くはないのでこれなら誠司も扱えそうだ。
「誠司、あのな……温泉を掘っているのではないのだからそんなに深く掘らなくても大丈夫だ。それとも大人でも入れる落とし穴でも目指しているのか……」
 神様が呆れたような顔で、誠司が掘った穴の上から見下ろしている。ちなみに誠司は穴の中だ。
「えっ?そうなんですか?だったら早く言ってくださいよ……。
 あ、ちなみに温泉が出たら、オレの取り分とか有るんですかぁ?」
 いくら信者が居ない――のだろう、こうして誠司をこき使っているのだから――神様とは言っても、それなりの馬鹿力――いや何て言ったっけ?――そうそう!神通力を持っているのだろう。サクサク掘り進めることが出来たので思わずハマってしまっていた。
「あのな、この土地は大学の敷地内だろう。そこから湧き出した――この日本は知ってのとおり――いや知らないかもだが……まあそれは置いておくとして、深ささえ気にしなければ必ず温泉が出る。それはこの土地の所有者のモノになるので、学生向けの温泉として開放するか、温泉付きで売却するかの二択だろうな……。誠司にはビタ一文入らない。
 それよりも金貨とかだと、遺失物扱いになる。正確な所有者は分からないので、発見者と土地を持っている人間と折半になるようだな。だから徳川家の埋蔵金などを探す人間が居るのも事実だ」

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