ポケベルは鳴るのか

こうやまみか

最終回

「あ、オレ、花田さん、あのさ雑誌のせいでテレビに出ませんかとか誘い来たってホント?テレビ局の人と話したんだよね」
 電話出来るほどには親しい花田さんに早速電話した。
「うん、したよ。名刺貰って、その気が有るなら連絡下さいって。それが?」
 オレは一部始終を話した。もちろん秋月さんへの想いは端折ったけど。
「でさ、ドラマの小道具でポケベルが必要とかそういうのを学内掲示板に貼って、ついでに花田さんのお昼の放送で言って欲しいんだけど……」
 途中から花田さんもとても乗り気になってくれていた。
「オッケー!盛りに盛って話すね。ドラマの収録なんてマジ時間との戦いみたいなものだから。それに今、使用可能なポケベルを持っていて、一日貸して欲しい。その代わりレンタル料は高いとか言えば良いんだよね」
 その翌日は気持ちが良いくらいに晴れていた。キッパリとした冬空で何だか幸先が良いような。
 そしてその予感が的中したのか、放送部の花田さんのお昼の放送を聞いた三年生がウチのクラスに訪ねてきた。秋月さんに良く似た繊細でそして男らしく整った顔の持ち主だった。
「早速ですが参考までに操作方法教えて貰えますか……。そして、試しに『今日、北公園で待っている』と送信してください、お願いします」 
 ともすればその池波和馬先輩の顔とかスタイルの良さに目を奪われそうになりながらもそう頼んだ。
 先輩は戸惑いがちだったけれども、裕史の言う通りに文字を打ってくれた。
 今頃は秋月さんのポケベルが鳴っているのだと思うと何だか泣きそうになった。
「北公園で待っている。まずは色々な話をしよう」その画面を見ているうちに、千切れかけていた親子の絆が無事繋がった第一歩を目の前で見て涙が零れそうになった。
「これ……親父から……」
 信じられないような表情を浮かべた先輩は「ポケベルを後生大事に持っていてよかった。そして、繋いでくれて有り難う」と小声で呟くと、教室から大急ぎで出て行った。行先は北公園に違いない。
 

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