修羅道 ~レベルを上げたいだけなのに~
第29話 国家崩壊のディエス・イレ
俺に促されて椅子に腰掛けた女は、居心地が悪そうだ。
「どうした汗なんかかいて? お前の部屋だろう、暑いなら冷房つけたらどうだ? あそこについてるのが最新式の冷房魔道具だろ?」
うつむきながら汗を拭いていた女はようやく手を止め、懸命に笑顔をつくる。
「よ、ようこそおいでくださいました。ワ、私がロトチャフ連邦国の代表を務めております。プラチネと申します」
それだけ言ってまた視線を下に向ける。
「プラチネ大統領、名前は部屋に入る時に聞いたよ、お互い色々と忙しい身だろ? さくっと話を済ませようじゃないか。もっとも大統領がゆっくり俺と話がしたいと言うのなら話は別だが?」
「いえいえ、滅相も御座いません! 早く、早く終わらせましょう。ハハハ」
「ほう、俺と話すのはそんなに嫌か?」
「いえいえ! いえいえいえいえ! ととととんでもも御座いません」
こんなおばさん虐いじめてもなんも面白くないな、本当に早く終わらせよう。
「さて、本題からいこう。俺は現段階でお前を殺そうとは思っていない、国を滅ぼすつもりも、統治する気もさらさらない。だから安心しろ。幸運にも手に入れた大統領の座は安泰だぞ。プラチネ嬢」
大統領の視線がこちらに向いた、俺は満面の笑みを浮かべてやる。
「でな。その代わりじゃないが、いくつか大統領にお願いがある。聴いてくれるか?」
「はい!」
「よし。まずは俺の泊まっているホテルな、今ジブラルドしかいなんだよ。お前もよく利用してたんだろ? そりゃジブラルドも頑張っちゃくれているが一人だと何かと大変だろう。あそこ気に入ったし、しばらくは居るつもりだから従業員を呼び戻せ。出来るか?」
「えーそうですね、デ出来ます」
「よしよし。で、ここからが本当の本題なんだが、この国の人間半分間引くから殺していい人間を一箇所に集めろ」
「――!」
「一箇所が難しいなら2~3ニサン箇所でも構わん。無理なら皆殺しだ」
せっかくプラチネがビビらないように、笑顔で話してやっているのに硬直して、動かなくなってしまった。
「半分残してやると言っているんだ、有難く思え。期限は2週間やろう」
「……………………わかりました」
ムサシが退室したあと、プラチネは再びうつむくのだった。
ホテルの従業員は指名手配されて戻ってきた。これで全てのサービスが24時間使い放題である。
どれだけレベルが上がり、ステータスが上昇しようとも、文明的で文化的な生活というのには他者の存在が必要不可欠なのだ。
会談から1週間して、プラチネ大統領が会見を開いた。
「まず、事・故・により多くの人命が失われたことに哀悼あいとうの意を表します。現在中央ホテルに滞在しておられるムサシ様は、伝説の勇者様の生まれ変りであります。不幸なすれ違いにより、先の事故が起きましたがご安心下さい。もう誰も死ぬことはありません。証拠にムサシ様はホテルの従業員ともうまくやっており、誰も死んではおりません。また、ムサシ様はロアーヌ領の温暖な土地の一部を、我らが生きてゆく為の必要な土地として認めてくださいました。再編する軍と共に対ロアーヌの作戦に参加下さいます。国民の皆様が、ムサシ様が勇者様の生まれ変りであるということに、疑問をもたれるのは判ります。ですが我が軍を単独で打倒できる人間は勇者様以外にありえません。勇者ムサシ様は、その使命と力にお目覚めになられたばかりで、秘密兵器を多数所持する我が国の軍を、魔王の手先と勘違いされたのであります。これからは未来のために、このロトチャフ連邦国にお力を貸して下さいます。具体的には、まずは病の治療をして下さいます。大きな病、小さな病、不治の病でも構いません。全国からこの中央にお集まり下さい。無償でムサシ様が治して下さいます。また詳しい内容は後ほど告知致しますが、一定以下の年収の物に金銭的支援を致します、こちらも同じく、中央都にお集まり頂くことになります」
長い会見で、勇者がどうだ誤解がどうだの言っていたが、重要なのは病人と貧困者で国・民・の・半・数・を・切・り・捨・て・る・と・決・ま・っ・た・ことだ。
なるほど、約束を守る女のようだ。生かしておいてやろう。
これでこの国は傾くだろうが、貧しい国には丁度良い口減らしなるかもしれない、俺のレベルも上がるし一石二鳥だな。
そして、その日が来た。
「どうした汗なんかかいて? お前の部屋だろう、暑いなら冷房つけたらどうだ? あそこについてるのが最新式の冷房魔道具だろ?」
うつむきながら汗を拭いていた女はようやく手を止め、懸命に笑顔をつくる。
「よ、ようこそおいでくださいました。ワ、私がロトチャフ連邦国の代表を務めております。プラチネと申します」
それだけ言ってまた視線を下に向ける。
「プラチネ大統領、名前は部屋に入る時に聞いたよ、お互い色々と忙しい身だろ? さくっと話を済ませようじゃないか。もっとも大統領がゆっくり俺と話がしたいと言うのなら話は別だが?」
「いえいえ、滅相も御座いません! 早く、早く終わらせましょう。ハハハ」
「ほう、俺と話すのはそんなに嫌か?」
「いえいえ! いえいえいえいえ! ととととんでもも御座いません」
こんなおばさん虐いじめてもなんも面白くないな、本当に早く終わらせよう。
「さて、本題からいこう。俺は現段階でお前を殺そうとは思っていない、国を滅ぼすつもりも、統治する気もさらさらない。だから安心しろ。幸運にも手に入れた大統領の座は安泰だぞ。プラチネ嬢」
大統領の視線がこちらに向いた、俺は満面の笑みを浮かべてやる。
「でな。その代わりじゃないが、いくつか大統領にお願いがある。聴いてくれるか?」
「はい!」
「よし。まずは俺の泊まっているホテルな、今ジブラルドしかいなんだよ。お前もよく利用してたんだろ? そりゃジブラルドも頑張っちゃくれているが一人だと何かと大変だろう。あそこ気に入ったし、しばらくは居るつもりだから従業員を呼び戻せ。出来るか?」
「えーそうですね、デ出来ます」
「よしよし。で、ここからが本当の本題なんだが、この国の人間半分間引くから殺していい人間を一箇所に集めろ」
「――!」
「一箇所が難しいなら2~3ニサン箇所でも構わん。無理なら皆殺しだ」
せっかくプラチネがビビらないように、笑顔で話してやっているのに硬直して、動かなくなってしまった。
「半分残してやると言っているんだ、有難く思え。期限は2週間やろう」
「……………………わかりました」
ムサシが退室したあと、プラチネは再びうつむくのだった。
ホテルの従業員は指名手配されて戻ってきた。これで全てのサービスが24時間使い放題である。
どれだけレベルが上がり、ステータスが上昇しようとも、文明的で文化的な生活というのには他者の存在が必要不可欠なのだ。
会談から1週間して、プラチネ大統領が会見を開いた。
「まず、事・故・により多くの人命が失われたことに哀悼あいとうの意を表します。現在中央ホテルに滞在しておられるムサシ様は、伝説の勇者様の生まれ変りであります。不幸なすれ違いにより、先の事故が起きましたがご安心下さい。もう誰も死ぬことはありません。証拠にムサシ様はホテルの従業員ともうまくやっており、誰も死んではおりません。また、ムサシ様はロアーヌ領の温暖な土地の一部を、我らが生きてゆく為の必要な土地として認めてくださいました。再編する軍と共に対ロアーヌの作戦に参加下さいます。国民の皆様が、ムサシ様が勇者様の生まれ変りであるということに、疑問をもたれるのは判ります。ですが我が軍を単独で打倒できる人間は勇者様以外にありえません。勇者ムサシ様は、その使命と力にお目覚めになられたばかりで、秘密兵器を多数所持する我が国の軍を、魔王の手先と勘違いされたのであります。これからは未来のために、このロトチャフ連邦国にお力を貸して下さいます。具体的には、まずは病の治療をして下さいます。大きな病、小さな病、不治の病でも構いません。全国からこの中央にお集まり下さい。無償でムサシ様が治して下さいます。また詳しい内容は後ほど告知致しますが、一定以下の年収の物に金銭的支援を致します、こちらも同じく、中央都にお集まり頂くことになります」
長い会見で、勇者がどうだ誤解がどうだの言っていたが、重要なのは病人と貧困者で国・民・の・半・数・を・切・り・捨・て・る・と・決・ま・っ・た・ことだ。
なるほど、約束を守る女のようだ。生かしておいてやろう。
これでこの国は傾くだろうが、貧しい国には丁度良い口減らしなるかもしれない、俺のレベルも上がるし一石二鳥だな。
そして、その日が来た。
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