修羅道 ~レベルを上げたいだけなのに~
第17話 2回戦 鎧斬りのヒルデ
本戦トーナメント3日目、2回戦8試合が行われる。
レベルがあり、身体能力が常人を超える俺は有利だと思っていたが昨日の闘いを経て認識を改めた。
本戦まで勝ち上がった奴らは強い。なめてかかると痛い目を見る。
その強さの理由は魔法だ。
魔法による武器性能及び身体能力の向上が戦士達を高いレベルに押し上げているからだ。
身体能力が拮抗した場合、武器の性能差で不利だ。
今日の対戦相手は「鎧斬りのヒルデ」身体能力強化の魔法を使い、重い剣を自在に振るう、ここいらの戦士じゃオーソドックスなタイプだ。
当然剣にも威力上昇か軽量化か何かしらの魔法が付与されているだろう。
向かいあった女剣士がその背丈より大きな剣を、軽々担いで柄を握り締める。
――試合が始まる。
ヒルデが真っ直ぐ突っ込んでくる。ナメられているのか度胸があるのか。
こちらも往く、まずは武器の差を確認しようじゃないか。
[武器強化:壱]を刃引きされた剣に使う。
ユリウスは必要以上に相手を傷つけない為に闘技場から借りたのだろうが、俺は手持ちの武器が貧弱すぎるから借りた。棍棒より上等なのは間違いない。
二つの刃、2人の闘志が激突する。
こすれあう刃が火花をちらし、生み出された反発力を使い、互いに距離をとる。
この手ごたえならば戦える。ヒルダに対しては俺の力の方が上だ。
今の一合で互いの腕力の差を確認できた。
武器の性能では多少劣るかもしれないが、単純な力の差で勝っている。
いけそうならば次で押し切ってやる。
両者が再度加速しお互いの距離を無くす。
2度目の激突。刃越しにヒルダと視線が交錯する。
反発を利用しヒルダが後退しようとするが、俺はさらに押し込んでいく。
ヒルダの足が止まり鍔競り合いの格好となる。
「降参したほうがいいんじゃないか?」
形勢有利となった俺が降参を促すと、ヒルダの口角が上がった。
ヒルダは剣から力を一瞬抜くと、その大きな剣を巧みに使い、俺の剣を巻き上げた。
「――!」
剣はあっけなく飛んでいき、無手となった俺の首に剣がつきつけられる。
「降参しろチンピラ」
降参すれば当然負け。
そうでなくとも審判から負けの判定を出されても仕方の無い状況。
ためらう暇はない!
手を上げ降参すると見せかけた俺はヒルダとの僅かな間合いを刹那で詰める。
ヒルダの手首を両手で掴む。最短距離で奴の剣を封じることができた。
「卑怯だぞー」「往生際が悪い」
観客からブーイングと野次が飛ぶ。知ったこっちゃない。
ヒルダは自由な方の手で俺を殴りつけてくる。ここからは根競べだ。
俺は雑巾を絞るようにヒルダの手首を締め上げていく。
まるで水分を全て絞り出すように、あるいは万力が枝を押しつぶすように。
手首の上下が徐々にうっ血し、変色していく。
伸びた皮膚が裂け、血と肉が見える。
「くあああああああッ!」
それでもヒルダは諦めない。悲鳴を上げながら懸命に殴りつけてくる。
さっさと降参すればいいのに強情な女だ。
「ヒルダ負けないでー」「頑張れ鎧斬りぃー」
声援に後押しされているとでもいうのか? 愚かなことだ。
もうすでにヒルダの手に剣を握る力はない。
剣の勝負はとうの昔に終わっていた。
俺を殴り続けるヒルダの拳からも血が出ている。
そして……その時が来る。
ぐしゃ。
ヒルダの手首が潰れる。
「イヤァァァアァァァッー」
ウルセェよ。しこたま殴られた顔面と、万力と化した手が痛い。腕の筋肉も限界だ。
「そこまで!勝者チンピラのムサシ」
審判がやっと決着を言い渡す。
手首を押さえ泣きじゃくるヒルダに、医療班が駆けつけて来る。
「死ねチンピラァ!」「最低!」「ヒルダに謝れ!」
勝者である俺に客席から罵声が浴びせられる。
俺が何をしたというのだ? ルールの範囲で戦っただけだ、欺きはしたが闘いのなかでの虚実は在って当然のものだ。
「うるせぇ! 文句があるなら降りて来い! ぶっ殺してやる!……お前か?! お前か? それともお前か?! さぁこいよ!」
俺が叫び、視線を向けると途端におとなしくなる。威勢だけのヘタレがッ。
そうして静まり返った観客席から1人の男が立ち上がり鞘から剣を抜き放った。
切っ先を俺に向け名乗りをあげる。
「我が名はフィリップ・ウィンザード!貴様の悪性は今明らかになった!騎士として、貴族として、そして善良なるロアーヌ人の1人として、見過ごすことは出来ぬ! 運命は貴様に敗北を与え、反省を促せと言っている。何故ならば次の対戦相手は私だからだ。この場にいる皆に誓おう、私の正義の剣が彼の悪を打ち破り、この神聖なる闘技場に戦士の誇りをもたらすことをッ!」
客席から拍手が巻き起こる。
「キャー フィリップ様、頑張って」「騎士様ならあんな悪党楽勝です!」
男の演説は完全に観客を味方につけたようだ。
ああ、明日はコイツか。
ヒルダや人形使い程の強さがこいつにあるのならば苦戦必死だ。
医務室で手当てをしてもらうこともで出来たが、真っ直ぐ家に帰った俺は簡単な食事を取った後キャサリンを置いて独り、夜のスラムへ向かった。
もっと強くなる必要があった。
レベルがあり、身体能力が常人を超える俺は有利だと思っていたが昨日の闘いを経て認識を改めた。
本戦まで勝ち上がった奴らは強い。なめてかかると痛い目を見る。
その強さの理由は魔法だ。
魔法による武器性能及び身体能力の向上が戦士達を高いレベルに押し上げているからだ。
身体能力が拮抗した場合、武器の性能差で不利だ。
今日の対戦相手は「鎧斬りのヒルデ」身体能力強化の魔法を使い、重い剣を自在に振るう、ここいらの戦士じゃオーソドックスなタイプだ。
当然剣にも威力上昇か軽量化か何かしらの魔法が付与されているだろう。
向かいあった女剣士がその背丈より大きな剣を、軽々担いで柄を握り締める。
――試合が始まる。
ヒルデが真っ直ぐ突っ込んでくる。ナメられているのか度胸があるのか。
こちらも往く、まずは武器の差を確認しようじゃないか。
[武器強化:壱]を刃引きされた剣に使う。
ユリウスは必要以上に相手を傷つけない為に闘技場から借りたのだろうが、俺は手持ちの武器が貧弱すぎるから借りた。棍棒より上等なのは間違いない。
二つの刃、2人の闘志が激突する。
こすれあう刃が火花をちらし、生み出された反発力を使い、互いに距離をとる。
この手ごたえならば戦える。ヒルダに対しては俺の力の方が上だ。
今の一合で互いの腕力の差を確認できた。
武器の性能では多少劣るかもしれないが、単純な力の差で勝っている。
いけそうならば次で押し切ってやる。
両者が再度加速しお互いの距離を無くす。
2度目の激突。刃越しにヒルダと視線が交錯する。
反発を利用しヒルダが後退しようとするが、俺はさらに押し込んでいく。
ヒルダの足が止まり鍔競り合いの格好となる。
「降参したほうがいいんじゃないか?」
形勢有利となった俺が降参を促すと、ヒルダの口角が上がった。
ヒルダは剣から力を一瞬抜くと、その大きな剣を巧みに使い、俺の剣を巻き上げた。
「――!」
剣はあっけなく飛んでいき、無手となった俺の首に剣がつきつけられる。
「降参しろチンピラ」
降参すれば当然負け。
そうでなくとも審判から負けの判定を出されても仕方の無い状況。
ためらう暇はない!
手を上げ降参すると見せかけた俺はヒルダとの僅かな間合いを刹那で詰める。
ヒルダの手首を両手で掴む。最短距離で奴の剣を封じることができた。
「卑怯だぞー」「往生際が悪い」
観客からブーイングと野次が飛ぶ。知ったこっちゃない。
ヒルダは自由な方の手で俺を殴りつけてくる。ここからは根競べだ。
俺は雑巾を絞るようにヒルダの手首を締め上げていく。
まるで水分を全て絞り出すように、あるいは万力が枝を押しつぶすように。
手首の上下が徐々にうっ血し、変色していく。
伸びた皮膚が裂け、血と肉が見える。
「くあああああああッ!」
それでもヒルダは諦めない。悲鳴を上げながら懸命に殴りつけてくる。
さっさと降参すればいいのに強情な女だ。
「ヒルダ負けないでー」「頑張れ鎧斬りぃー」
声援に後押しされているとでもいうのか? 愚かなことだ。
もうすでにヒルダの手に剣を握る力はない。
剣の勝負はとうの昔に終わっていた。
俺を殴り続けるヒルダの拳からも血が出ている。
そして……その時が来る。
ぐしゃ。
ヒルダの手首が潰れる。
「イヤァァァアァァァッー」
ウルセェよ。しこたま殴られた顔面と、万力と化した手が痛い。腕の筋肉も限界だ。
「そこまで!勝者チンピラのムサシ」
審判がやっと決着を言い渡す。
手首を押さえ泣きじゃくるヒルダに、医療班が駆けつけて来る。
「死ねチンピラァ!」「最低!」「ヒルダに謝れ!」
勝者である俺に客席から罵声が浴びせられる。
俺が何をしたというのだ? ルールの範囲で戦っただけだ、欺きはしたが闘いのなかでの虚実は在って当然のものだ。
「うるせぇ! 文句があるなら降りて来い! ぶっ殺してやる!……お前か?! お前か? それともお前か?! さぁこいよ!」
俺が叫び、視線を向けると途端におとなしくなる。威勢だけのヘタレがッ。
そうして静まり返った観客席から1人の男が立ち上がり鞘から剣を抜き放った。
切っ先を俺に向け名乗りをあげる。
「我が名はフィリップ・ウィンザード!貴様の悪性は今明らかになった!騎士として、貴族として、そして善良なるロアーヌ人の1人として、見過ごすことは出来ぬ! 運命は貴様に敗北を与え、反省を促せと言っている。何故ならば次の対戦相手は私だからだ。この場にいる皆に誓おう、私の正義の剣が彼の悪を打ち破り、この神聖なる闘技場に戦士の誇りをもたらすことをッ!」
客席から拍手が巻き起こる。
「キャー フィリップ様、頑張って」「騎士様ならあんな悪党楽勝です!」
男の演説は完全に観客を味方につけたようだ。
ああ、明日はコイツか。
ヒルダや人形使い程の強さがこいつにあるのならば苦戦必死だ。
医務室で手当てをしてもらうこともで出来たが、真っ直ぐ家に帰った俺は簡単な食事を取った後キャサリンを置いて独り、夜のスラムへ向かった。
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