神と精霊の祝福を受けた悪役令嬢

Kei

プロローグ 〜予想外の…事故?〜

「嫌よ!パパ、ママ!私は誰と結婚しようが気にしないのだけど、この人だけは嫌 ︎絶っっっっ対に嫌 ︎ 」

 「だけど…うちの会社が潰れないようにする為にも、あの有名な大手企業会社の社長の大谷さんと結婚した方が…それに、貴女も贅沢できるでしょう?」

 「で、でも… ︎だって、あの人は…!まだ30代前半なのに頭ハゲてるし、妻も既に何人か娶っているって噂があるし!
しかもあの顔 ︎胡散臭そうだし変態だって!絶対!それに、私と10歳ぐらいも歳の差があるのよ⁈そんな人、好きになれっこないわ!」

「コ、コラ!美花!そう思っていても口にして良いものといけないものがあるぞ!だが、この後お見合いがある。その時に好きになれる要素を見つければいいだけの話だ。
    ちゃんと綺麗にして、丁寧な対応をするのだぞ。分かったな?」

「パパ!好きになれる要素なんて絶対にないわ ︎そうに決まっているわよ!」

「まぁ、美花。そんな事を言わずに、お見合いをしてみましょう。気が変わるかもしれないわよ?」

「ママまで!そんな事を言われても…しかも私、まだ19歳よ?結婚には早すぎるわ!」

「お嬢様、お見合いまでそろそろですよ。終わったらハーブティーと暖かいお風呂を用意致します。」

「うっ…爺や…………分かったわ。お見合いに行く…。」


 数分後…


 美花は今、お見合い会場に行っている最中である。

「はぁ…如何してこうなったのかしら。あんなクッソオヤジ……コホン、
大谷さんと結婚だなんて。」

 美花はまだ知らない、この忌々しい記憶から、日々の楽しい記憶までほぼ全て頭の中から消え去る事を…

「あ、それより、ロイプリ 全クリアし      て、隠しルートも攻略しましたわ。
 …また、最初からやろうかしら?」


 ロイプリ、通称
「ロイヤル プリンス with ラブ 
 〜神々の庭園〜」
という王道の乙女ゲームである。
 主に、主人公基ヒロインが、攻略対象の一癖も二癖もあるイケメンズと恋愛をするゲームである。

 赤信号が変わるのを待っていた美花は、信号が青に変わるのを見て、そんな事を考えながら横断歩道を渡る…

パッ ︎!パアアアァァァアアア ︎ ︎

 ブレーキを踏み間違えたのか、大型トラックが突っ込んでくる。しかし美花は運良くそれを避け…たが…

「う、うわぁぁぁ〜〜 ︎ ︎俺は悪くない!彼奴らが、彼奴らがいいけないんだぁぁぁ ︎うおぉぉぉ ︎!」

 そう叫びながら、黒のフードを深く被り、マスクを付け、手にナイフを持った男性が此方に向かって走って来るではありませんか。

「え…?」

 その男性が此方に向かって来ると、美花はまだ分かっていない。
 
 テンパリながら、美花は声がした後方を振り返ったその時…

ザクッ

 肉が刺される音がしたと同時に、血が流れ辺りに血溜りができる。

「ウッ!ガ、カハッ!ゴホッ…」

 美花…の前に居た人が倒れた。美花は顔を蒼白くして唖然と立ち尽くす事しか出来なかった…。
 男性は人を刺して気が気ではなくなったのか…いや、元から狂ってはいたが、これではマズイと思ったようで、その場から逃げようとした…

ドンッ…!

 男性が逃げ、そのすれ違い側に美花にぶつかる。男性はそのまんま逃げたが、美花はぶつかった時の衝撃で少し跳ね飛ばされる。

ゴッ……。

 さっき横から突っ込んできたトラックの運転手は、トラックを止め、そこから降りて周囲を慌てた様子でウロウロしている。
 美花はその止めていたトラックの角に頭を打ち付け、血を流した…。

「イ、イタ…イ…。誰か、ダレ…カ…」

(私、死ぬのかな?これからが私の人生なのに…。もし…もし、生まれ変われるのなら、今度はあんな人と結婚だなんて絶対にしないし、自分の好きな人と一緒にいるんだか…ら… ︎)

 美花はそのまま目を閉じ、その短い人生を終えるのだった…。

 しかしこの光景はきっとカオスだ。トラックが突っ込み、通り魔が人を刺し、そして逃げた時にぶつかった人が、止めていたトラックに頭を打ち、血を流して倒れているのだ。
 この出来事を観ていたものは、助けを呼ぶのも忘れて口々に、

「カオス……」

 と、呟いたとか呟いてないとか…。
 


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