三尊

ハッシャー

Touch me I'm sick

ああ、ここはどこだ
寒い
寒い
お母さん、どこ?
お腹が減ったよ
ごめんなさい
僕がいい子にしないから
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめん

寒い、よ

また、この夢だ。

わかっている、わかっているが恐怖が心臓を締め付け息ができなくなる。

冷や汗をべっとりとかいて飛び起きる。
半身を起こすとキングサイズのベッドの隣には知らない女が裸でぐっすりと眠っていた。
いや、確か新しい事業を起こすために融資を持ちかけてきた女だったか?
一つ舌打ちをしてシャワーを浴びにタワーマンションの最上階、ワンフロアをぶち抜いた広い部屋を横切りバスルームへ向かう。

こんなことを繰り返してなんになるのだろう、砂を噛むような思い。
しかしやめられない。愛が欲しい。
でも愛ってなんだ?俺は知らない。
さっきの女は教えてくれるのだろうか?与えてくれるのだろうか。

俺は物心ついた頃にはもう父は無く、そのうち母親にも捨てられ、施設で育った。
母は男を取っ替え引っ替え変えるような女だったが、母は優しかった愛してはくれなかった 、男がいないときは過剰に世話を焼くが、男が家に入り浸ると俺は家から追い出された。
俺は暖を求めて、食事を求めて近所をを訪ねて歩いた。近所の目はどんどん冷たくなり、警察に連れていかれたりもした。
正直、何がなんだかわからなかった。

つい昨日までは媚びるような笑顔であんなにベタベタしてきた母が、今日はゴミクズを見るかのような目で俺を見る。
最初は自分に落ち度があると思っていた、でも、俺がどんなにいい子にしていても、大人しくしていてもそれは変わらなかった。
心も体も充分に乾いていく、でも信じていた。まだ。

そんなある日、家に母が帰って来なくなった。
寒さとひもじさで気を失ってから、気付いた時には病院のベッドの上で、もう少し発見が遅れたら手遅れになっていたと後から聞かされた。

その日から俺は、他人を信じたり、頼ったりすることをやめた。




コメント

コメントを書く

「歴史」の人気作品

書籍化作品