十の学院と略奪者

悠希遥人

episode5

 悠人がCクラスの教室に入るとそこには意外な光景が広がっていた。
 普通であるならば入学初日ならばクラスで友達を作るために皆が集まり、賑やかに談笑しているだろう。
 しかし、現実はそれを大きく裏切るような光景だった。

「これは……」

 まだ来てない者も居るのか空席がちらほらあるが殆どの生徒が自分の席でぐったりとしていたのだ。

 何故こんなことに?と初めは疑問に思った悠人だが、その経緯を思い出し、あぁと納得する。

 ―――ここにいる生徒は皆、会長の異能による影響でこうなったのだと。

 先程Aクラスの教室にいた生徒達はこんなに酷い状況じゃ無く、寧ろ悠人の想像していたような光景が浮かんでいた。
 Bクラスもはっきりと見たわけじゃないが後ろから聞こえてくる声の限りはこんな状況では無いと推測される。

 では何故Cクラスはこんな状況なのか?

 そう、ここにいる生徒のほとんどが、

「会長の異能を強く干渉した奴ら……か」

 ということなのである。
 生徒会長、四皇帝の異能を強く干渉したもの、即ち気絶させられた生徒達のほとんどがこのCクラスに在籍していたのだ。
 恐らく試験の際、異能の力とは別にそういった内面的な事も評価の対象にされていたのだ。

(Aクラスの生徒が落ちこぼれと称したのも納得だな……)

 悠人は引き攣った笑みを浮かべながら自分の席へと向かう。
 悠人の席は窓側の後ろから二番目の席だった。席に座り頬杖をつきながら外の様子をぼうっと眺めていると突然後ろから肩を叩かれた。

「なぁなぁ。ちょっといいか?」

「っ ︎」

 突然のことに肩を若干震わせながら振り向く。
 するとそこには先程までは空席だった席に茶髪の青年が腕を伸ばして悠人の肩を掴んでいた。
 その青年は悠人よりも一回り程体格も良く身長も一八○センチを軽く超えていた。短く切り揃えられた茶髪は整髪料で固められているのか上の方に刺々しく立たせている。
 その青年は悠人の反応に白い歯を見せながらニッと笑った。

「驚かせて悪かったな!まさかそんな風にびっくりするとは思わなかったぜ!」

 わははっと笑う青年。
 しかし不思議と不快感は全くない。

「いや、別に肩を叩かれて驚いたわけではないぞ。俺みたいな変わり者に声を掛けてきたことに驚いたんだ」

「なるほどな!それよりも変わり者ってどういうことだ?」

 そう言ってまじまじと悠人を見つめる青年。

「お前は俺の髪の色を見ても特に何も思わないのか?」

「髪?あぁそういえば確かに珍しい色してるな!けどそれだけだろ」

「へぇ……」

 悠人は青年の言葉に関心の声を上げる。
 人を見かけで判断しないこの青年はそれ程優れた観察眼を持っているのか或いは……

「そう言えばお前は身体の方は特になんともないのか?」

 よく見れば青年の表情はほかの生徒とは違い健康そのものだった。

「身体?別に何ともねぇけど何でだ?」

「いや、入学式の時生徒会長の異能を干渉しただろ?周りの奴らはグロッキーだけどお前は普通にしてるからさ」

「あぁ〜……あぁ?」
 と茶髪の青年は曖昧な声を出しながら首をかしげる。

「入学式か……ずっと寝てたから覚えてねぇや」

「はい?」

 今何と言ったのだろうか。

「いやだからずっと寝てたからわかんねーんだって。っていうか異能使ったのか?生徒会長」

「まじか……」

 あまりの驚きに思わずそんな言葉が出てくる。
 この男はあの状況の中ずっと寝ていたのかと。それだけなら他の生徒と変わらない。

 だが、事はそれ程単純では無い。

 もしあの時寝ていない又は談笑にかまけていなかったのならば姫百合や他のクラスの生徒達のように既に体力は回復し普通に過ごせるようになっている。(悠人の場合はそれすらなかったが)

 あの生徒会長はピンポイントで素行の悪い生徒へ異能を強く行使していた。であるならば当然その時寝ていたというこの青年もこのクラスの生徒のようなダメージはあっただろう。

 なのに、

(それに気付かずに爆睡していたのか……)

 恐ろしいほど精神力が高いのか。この青年は。
 悠人はこの青年に少しばかり興味を持ちはじめていた。

「なぁ、そう言えば何で俺に声をかけたんだ?」

「っと、そうだった!いやぁ〜友達作りてぇなと思ってこのクラスで声を掛けまくろうと思ったんだが……」

 茶髪の青年はそこで一度区切り、視線を周りに移す。
 つられて悠人も周りを見て「あぁ」と納得した。

「みんなグロッキー状態で声をかけられた相手がいない……と」

「そうなんだよ〜。なんでみんな寝てんだ?寝不足か?」

「おいおい……だからさっき……」

 そこまで言いかけて悠人は一つの答えを導き出す。
 もしかして……

(こいつは……ただのバカなだけなのか……?)

 ……と。
 そしてそれを納得できる材料も十分にあった。
 つまり本当にこの男はバカなだけだったのだ。

「はは……」

 乾いた笑みを浮かべる悠人。

(深読みしすぎていた俺も十分馬鹿か……)

 そして心の中で自分の評価を下げるのであった。

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