十の学院と略奪者
episode1
 ―――四月。
 それは始まりの月であり、出会いの季節である。
 昔も今もそれは変わらない。
「中々広いんだな……」
悠人の歩く両脇は春を象徴する桜がずらりと並び悠人の目的地へと伸びている。当たり障りのない心地良い風を頬で感じながら悠人は目の先にあるそれを見て感嘆の声を漏らす。
―――四皇帝学院。
それこそ悠人が今日から三年間通う学院の名である。
白を基調とした校舎であるが身を包む制服は黒をベースとし、少しばかりしの白のコントラストが特徴的だ。
なんの花かは定かではないが花弁を下地にした校章も黒と白で構成されている。
ここ四皇帝学院は日本で四番目に創設された学院だ。
十ある内の四番目と割と古参ではあるが外壁には目立った傷など見られず、まるで造られてから数年しか経っていないように美しかった。
「お前それ全然似合ってねぇな」
「うるせぇ!お前だって服に着せられてるぞ!」
悠人が足を止めてぼうっと校舎を眺めていると左右からがやがやと声がしてくる。
見れば今年入学する新入生達が次々と悠人の横を通り過ぎていっている。
耳に残った先程の少年らの会話を聞く限り、どうやらこの学院には身分に関わらず実力があれば入学できるらしい。
一部の学院では名のある名家のものしか入れないといった制度を取る学院もあるらしいが、軍に所属するには実力を共わなければすぐに命を落とす為、実に無意味な制度と言えるだろう。
そう言う意味では悠人が通うこの学院はある意味当たりと言っていい。
「さて、俺もそろそろ……」
再び歩き出そうとした悠人だが不意にその足を止めることとなる。
「ねえねえ」
「 ︎」
突然、後ろから声を掛けられたことに一瞬驚いたが直ぐに持ち直すと身体ごと振り返ってそちらをむいた。そこには肩ほどまで伸びた甘栗色の髪をそよ風で靡かせ、ヘーゼルカラーの瞳でこちらを見て微笑む美少女がいた。
くりっとした目、整った顔立ち、年相応に発育が進んでいる肢体から誰が見ようと美少女と言えるであろう。
それを裏付けるかのように道行く少年、少女までもが立ち止まり彼女に見惚れていた。
当然悠人にもその基準は当てはまるらしく、その黒瞳からは僅かながら動揺の色が伺えた。
悠人には棗と言うこれまたとんでもない美少女、というより美女の姉がいる。それ故、並大抵の事では驚いたりはしないのだが、どうやらこの目の前にいる美少女は棗とは違う魅力を持つ女の子のようだ。
棗はどちらかと言うと大人びた雰囲気で可憐と言う言葉がふさわしいのだが、こちらの美少女は子供らしいあどけなさを残した可愛らしさがあった。
「俺になんか用?」
なんとか平静を取り戻した悠人は身の前の彼女にぶっきら棒に尋ねる。
「用ってほどじゃ無いんだけどね……ただちょっと貴方のその黒い髪が珍しくて咄嗟に声を掛けちゃったみたい。ごめんね」
 
「ああ……」
なるほど、と納得する。
確かに悠人の髪の色は目を引いているらしい。
周りを視線のみで見渡すとどうやら目の前の美少女に見惚れているものの他に悠人の髪の色を見て怪奇な視線を向ける者のしばしばいた。
「生まれた時からこの色で、染めたりとかしているわけじゃないけどな」
「そうなんだ!やっぱり珍しいね」
そう言って彼女は気さくに笑う。
「良かったら一緒に学院へ向かわない?って言ってももうすぐそこだけど」
どういうわけか彼女は悠人にそう提案してくる。
悠人の方も特に断る理由も無いのでその提案を「ああ」と承諾した。
 それは始まりの月であり、出会いの季節である。
 昔も今もそれは変わらない。
「中々広いんだな……」
悠人の歩く両脇は春を象徴する桜がずらりと並び悠人の目的地へと伸びている。当たり障りのない心地良い風を頬で感じながら悠人は目の先にあるそれを見て感嘆の声を漏らす。
―――四皇帝学院。
それこそ悠人が今日から三年間通う学院の名である。
白を基調とした校舎であるが身を包む制服は黒をベースとし、少しばかりしの白のコントラストが特徴的だ。
なんの花かは定かではないが花弁を下地にした校章も黒と白で構成されている。
ここ四皇帝学院は日本で四番目に創設された学院だ。
十ある内の四番目と割と古参ではあるが外壁には目立った傷など見られず、まるで造られてから数年しか経っていないように美しかった。
「お前それ全然似合ってねぇな」
「うるせぇ!お前だって服に着せられてるぞ!」
悠人が足を止めてぼうっと校舎を眺めていると左右からがやがやと声がしてくる。
見れば今年入学する新入生達が次々と悠人の横を通り過ぎていっている。
耳に残った先程の少年らの会話を聞く限り、どうやらこの学院には身分に関わらず実力があれば入学できるらしい。
一部の学院では名のある名家のものしか入れないといった制度を取る学院もあるらしいが、軍に所属するには実力を共わなければすぐに命を落とす為、実に無意味な制度と言えるだろう。
そう言う意味では悠人が通うこの学院はある意味当たりと言っていい。
「さて、俺もそろそろ……」
再び歩き出そうとした悠人だが不意にその足を止めることとなる。
「ねえねえ」
「 ︎」
突然、後ろから声を掛けられたことに一瞬驚いたが直ぐに持ち直すと身体ごと振り返ってそちらをむいた。そこには肩ほどまで伸びた甘栗色の髪をそよ風で靡かせ、ヘーゼルカラーの瞳でこちらを見て微笑む美少女がいた。
くりっとした目、整った顔立ち、年相応に発育が進んでいる肢体から誰が見ようと美少女と言えるであろう。
それを裏付けるかのように道行く少年、少女までもが立ち止まり彼女に見惚れていた。
当然悠人にもその基準は当てはまるらしく、その黒瞳からは僅かながら動揺の色が伺えた。
悠人には棗と言うこれまたとんでもない美少女、というより美女の姉がいる。それ故、並大抵の事では驚いたりはしないのだが、どうやらこの目の前にいる美少女は棗とは違う魅力を持つ女の子のようだ。
棗はどちらかと言うと大人びた雰囲気で可憐と言う言葉がふさわしいのだが、こちらの美少女は子供らしいあどけなさを残した可愛らしさがあった。
「俺になんか用?」
なんとか平静を取り戻した悠人は身の前の彼女にぶっきら棒に尋ねる。
「用ってほどじゃ無いんだけどね……ただちょっと貴方のその黒い髪が珍しくて咄嗟に声を掛けちゃったみたい。ごめんね」
 
「ああ……」
なるほど、と納得する。
確かに悠人の髪の色は目を引いているらしい。
周りを視線のみで見渡すとどうやら目の前の美少女に見惚れているものの他に悠人の髪の色を見て怪奇な視線を向ける者のしばしばいた。
「生まれた時からこの色で、染めたりとかしているわけじゃないけどな」
「そうなんだ!やっぱり珍しいね」
そう言って彼女は気さくに笑う。
「良かったら一緒に学院へ向かわない?って言ってももうすぐそこだけど」
どういうわけか彼女は悠人にそう提案してくる。
悠人の方も特に断る理由も無いのでその提案を「ああ」と承諾した。
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