Azurelytone 【1】~アズレリイトオン~

羽兼

012 キャリア(闇の深さ)

店内は異常な緊張感が満ちていた…。 


アズレリイトオン(碧天の調べ)という曲は、存在しない………

夜の明けない街では、不可能な奏で……


この店でその曲を選ぶということは、ありえないねがいを依頼するという事だったんだ。


レヴィンは、思い詰めた顔で
水晶球を見つめている……。


僕は沈黙に耐える事ができなかった。 



「レヴィン…ミヅキは、外に
    なにをしにいったの?」


「………………」

「…………」

「彼女の父親を……」

「父親は、ダーザインなんだ」 

「そして、彼の心は崩壊しかかっている。
    彼女に命の危険を与えてしまうほどに…」

老婆は小さく震えながら、自身の血が依頼した事態の結末を真摯に受け止めようとしている。


「まえ、僕に話してくれたように
   祓う事はできないの?」



「……何度も祓っている」

水晶を固く握りしめながら、
レヴィンは悔しそうにつぶやく。


「ダストを祓うと、ダーザインの
    期間の記憶も消える」


「彼は……またダストを
    受け入れてしまうんだ………」



「俺のこのダストの結晶では、
   キャリア(闇の深さ)が浅すぎる」

「彼のダストを完全に
   吸収できない 」

f は、思い詰めた二人を見比べた。
外のミヅキは、好んで彼女の父親を殺めようとしているわけではない。

もはや彼らには他に方法がないのだ。


「キャリア?   その人より深い
   ダーザインなら出来るって事?」

「キャリアなら……
    その結晶より僕の方が…… 」

「僕は…………」

「ダストが混ざってダーザインに
    なったんじゃない」


「産まれながらのダーザインなんだ」


f の瞳は、ミヅキのそれより
濃い紅であった。



「………君が?」 

「吸収するというのか?」






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