僕の日記と日常

天夜婀ネル

4月6日 現実

現在の時刻は朝の7時半、みんなが来るまで後30分はある、だがそれでも海斗は教室へ向かっていた。

なぜかというと…

「あ!おはよう凛さん!」

「やっぱり早くきたね、おはよ〜!」

彼女がいるからだ、海斗にとってはこの高校での初めての友達、もっと仲良くしたいと思っていたのだ。

「やっぱりって…、僕そんなに早く来そうだったかな?」

「んー、なんとなくかな?」

「なんだよそれ〜!」

友達と過ごす時間はとても楽しく、この時間が永遠に続けばいいのに、そう思っていた。

だが時間は残酷なことに過ぎていく、時刻は8時を指していた。

「あ、そろそろ時間だから僕席戻るよ」

「そうだね、それじゃ、私も読書に戻るよ」

それまで仲が良かったのが嘘であったかのように離れていく、それは男女の友情であるから、この学校に来てまだ日が浅いから、様々な理由があったのかもしれない。

なんであれ、海斗にはこの様々な人たちの前で友達、凛と話す勇気がなかった。


朝のホームルームが終わり、今は休み時間、そして次の時間は昨日言っていた通り自己紹介の時間となっていた。

「なー、お前何言うか決めた?」

「いや〜全然、趣味とか言っておけばいんじゃね?」

みんな人前で話すのは嫌なのだろう、様々な会話が飛び交っていた。

そんな中海斗は、誰とも話せずに読書をしていた。

本は何も言わないし裏切らない、そして特別な世界へ誘ってくれるから好きなのだ。

そうやって時間が過ぎていき、休み時間が終わる、いよいよ自己紹介の時間だ。

「さーて、自己紹介やるぞー、順番は…」

海斗は安心していた、こう言うものは必ずと言っていいほど出席番号順に行うからだ。

そして海斗の出席番号は11、男子の中では後の方だこれだったら何を言うか考える時間もある。

だが先生の言葉はその考えを否定するものだった。

「出席番号…といきたいところだがそれは不公平だよなぁ?だから公平にくじ引きでいくぞ〜」

「やった〜!俺1番じゃねえ!」

「なんだよそれ!俺1番になったらどうすんだ!!」

喜びの声、悲しみの声、罵倒…etc..

様々な声が飛び交った

「うるさいぞーお前ら、それじゃあ最初の人は…11番!前出ろ〜」

それにより、みんなからは1番最初じゃないという安心の声、だが海斗は全然安心しなかった。

こんなに教壇に行くまでの足取りが重いのは生まれて初めてだ。

なんとか前に立ち、みんなを見渡す、こんな時に限ってみんなちゃんとこちらを見ている、誰かと目があってしまったくらいだ。

「えっと、僕の…な…なま…」

緊張で声が詰まる、だが下を向いてしまったら今まで通りだ、変わろうとしたはずなのに。

そして、


凛と目が合った。


凛が口を動かしている、どうやら口パクらしい。


あの口の動きは、


が  ん  ば  っ  て


「…!、僕の名前は葉沢 海斗です、趣味は読書です、この学校には中学校からの同級生がいなく、知らない人ばかりで緊張していますが、皆さんと早く話せるようになりたいです、よろしくお願いします!」

なんとか彼女のおかげで緊張がほぐれた、あとでお礼を言わなければ、そう思う海斗だった。

「おー、1番最初にしてはなかなかいい感じだったんじゃないか?じゃあ次の人だが…」




みんなの発表が終わり、ここからは授業がなく自由時間となっていた、かなり自由な感じなのだろうか、だがその自由時間に海斗は本を読んで…

「えーっと…海斗って言ったよな?」

「えっ!?あ、うん…僕海斗です」

いなかった、とある男子が海斗にに話しかけたのだ。

「へっ、何緊張してんだよ!、俺、名前覚えているか?」

彼の名前は樫澤 翔かしざわ かける、いかにもスポーツマンという感じの子だ、そして多分とてもチャラいのだろう、と予想していた。

「えっと、翔君だよね?よろしく」

「なんつーか…君っていらねぇよ、なんか〜、気持ち悪りぃし」

「うん、わかったよ…翔…?」

「あっはっは!おめぇなんか面白ぇわ!これから仲良くしようぜ!」

「う、うん!よろしく!」

こうして、また話せる人が増えた、その後彼、翔とは様々なことを話していた。

中学校の頃、サッカー部であったこと、FWとしてかなり活躍していたらしい

そして彼はモテる方らしくなぜか昔の彼女の話もしてくれた、まぁイケメンに入る部類だしモテるのは必然的、と考えた。

だが翔は女子といるより男子といる方が気楽に付き合えるから、もう彼女はいらないとのこと。

ただ、そんなことをなぜ海斗に話したのかはわからない。

「いやー、お前聞き上手って言われね?」

「え?そうかな…、言われたことないよ」

「なんつーか、お前すごい真剣に話聞いてくれるからなんでも話しちまいそうだわ!」

聞き上手、彼は初めて言われた言葉だった。

「へーそうなんだ…えへへへ〜」

「なんつー笑い方してんだよ!」

ははは、と揃って笑う、こんなに楽しい思いは久しぶりかもしれない、そう感じていた。

そして時刻は12時となる。

「よーし、みんなー、今日はこれで終わりだー、帰っていいぞー」

「よっしゃ!、帰ろうぜ!海斗!」

「うん!わかった!」

 そして話しながら玄関まで向かう、そこで彼女のことを思い出していた。

「あ…僕忘れ物したから教室行ってくる!先行ってて!」

「了解、遅くなんなよ?」

駆け足で教室へ向かう、だがそこには誰の姿もなかった。

帰ってしまったのだろうか、いや、彼女にも友達がいるのだ、そういった子と一緒なはずだ、だから海斗が気にする必要はない、そんなはずなのにどこか悲しい気持ちがあった。

「おーい、忘れ物あったか?」

「あ、翔、先行っててっていったのに」

「何言ってんだよ馬鹿、おめぇが遅いからだろ?」

「あ、そうだよね、ごめん…」

「ま、気にすることでもねぇよ、んじゃ、帰ろーぜ!」

階段を降りるときに翔から話しかけられているのはわかっていたが、何を言っていたのかはいまいち覚えていない、ずっと凛のことを考えていたのだ。

もしかしたら…、だがそんな考えをすぐに捨て玄関を出た。

なぜなら、自分にはどうせ無理だから。

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