契約の森 精霊の瞳を持つ者
1. 別れの時
「それでね、そのあと、ルースとウィルさんは仲直りして、今じゃすっかりいつもどおりなの」
レノは窓から落ちる陽だまりの中で、シアの話しを聞いていた。ユミルは忙しく、レノが彼女を昼間に見かけることはほとんどなかった。
「コダおじさんはね、屋根に穴を開けたのがすぐにトッシュさんに見つかって、あれ以来ずっと村の修理をしてて、グリフとイズナも手伝ってて」
シアがそう言うなか、レノが窓の外を見ると、コダがこそこそと通り過ぎたところだった。シアは見ていなかったようで、相変わらず話しを続ける。
「そうそう、ママに言ったけ?ルースの石ね、シアンのことを考えると風が生まれるんだよ。シアンが転んで泣いちゃった時のこととか、ママに怒られて泣いちゃった時とか、でね、」
レノはシアの話しを止めようと優しく名前を呼ぶ。
「シア」
「でね、知ってた?ルースの石は特別なんだって。ウッドエルフの持つお守りとは違くて、〝祈りの石〟なんだって。あたしあんなのおとぎ話だと思ってた。風の岩山に最初に登ったウッドエルフが精霊様から貰ったっていう。そんな大切なものなら、ウィルさんが怒るのも無理ないなって、だって、もうこれしかないんだよ」
シアはレノが話しを止めようとしていることに気がつきながら、気がつかないふりをする。
「でね……」
けれど、困ったように微笑むレノを見上げて、シアはやっと喋るのをやめた。
「それで、同じ話を3日前から聞き続けてるけど、新しい情報はないの?」
レノはからかうようにシアにそう聞く。シアは困ったように肩をすくめて、思い出したように言った。
「あ!家がピカピカになったよ。特にバスルーム!ユミルさんの家と同じ!ほとんどユミルさんが直してくれちゃった!今夜はみんなで、私たちのお家で過ごせるね」
レノは嬉しそうにシアの手を握ると、声を弾ませる。
「もう動いていいって、イズナのお許しもでたしね……それで、」
レノは言葉を詰まらせて、言いづらそうにする。シアの髪を撫でると、やはり言うことにした。
「同じ話しばかりして、シアンの話しをしないのは、タカオさんが心配なんでしょう?」
レノはシアの顔をじっと見つめてそう聞くと、シアは笑ってそれを否定する。
「違うよ!明日みんな旅にでるでしょ。お兄ちゃんは連れていってもらえなくて落ち込んでるんじゃないかなんて……別に」
レノはシアの心を見透かしたように微笑む。そうやって見られると、嘘なんてついても無意味のように思えてしまう。
「だって、あれから3日だよ!シアンが力をコントロールできないから、水の精霊様のところで寝起きすることになって、お兄ちゃんまでテントとか持ち出して帰ってこないし」
シアは首を振る。そのたびに髪は揺れてきらきらと光った。
「絶対、ふてくされてみんなから離れてるんだと思う。それでみんな旅にでちゃったら、きっと水の精霊様にお願いして帰っちゃうんだよ」
シアは困ったようにそう言ってうつむいた。
レノは窓から落ちる陽だまりの中で、シアの話しを聞いていた。ユミルは忙しく、レノが彼女を昼間に見かけることはほとんどなかった。
「コダおじさんはね、屋根に穴を開けたのがすぐにトッシュさんに見つかって、あれ以来ずっと村の修理をしてて、グリフとイズナも手伝ってて」
シアがそう言うなか、レノが窓の外を見ると、コダがこそこそと通り過ぎたところだった。シアは見ていなかったようで、相変わらず話しを続ける。
「そうそう、ママに言ったけ?ルースの石ね、シアンのことを考えると風が生まれるんだよ。シアンが転んで泣いちゃった時のこととか、ママに怒られて泣いちゃった時とか、でね、」
レノはシアの話しを止めようと優しく名前を呼ぶ。
「シア」
「でね、知ってた?ルースの石は特別なんだって。ウッドエルフの持つお守りとは違くて、〝祈りの石〟なんだって。あたしあんなのおとぎ話だと思ってた。風の岩山に最初に登ったウッドエルフが精霊様から貰ったっていう。そんな大切なものなら、ウィルさんが怒るのも無理ないなって、だって、もうこれしかないんだよ」
シアはレノが話しを止めようとしていることに気がつきながら、気がつかないふりをする。
「でね……」
けれど、困ったように微笑むレノを見上げて、シアはやっと喋るのをやめた。
「それで、同じ話を3日前から聞き続けてるけど、新しい情報はないの?」
レノはからかうようにシアにそう聞く。シアは困ったように肩をすくめて、思い出したように言った。
「あ!家がピカピカになったよ。特にバスルーム!ユミルさんの家と同じ!ほとんどユミルさんが直してくれちゃった!今夜はみんなで、私たちのお家で過ごせるね」
レノは嬉しそうにシアの手を握ると、声を弾ませる。
「もう動いていいって、イズナのお許しもでたしね……それで、」
レノは言葉を詰まらせて、言いづらそうにする。シアの髪を撫でると、やはり言うことにした。
「同じ話しばかりして、シアンの話しをしないのは、タカオさんが心配なんでしょう?」
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シアは困ったようにそう言ってうつむいた。
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