契約の森 精霊の瞳を持つ者
35,
たった一瞬が間に合わない。もう無駄だと思いながらも、風の途切れる瞬間にグリフとコダは屋根の向こうに走り込む。
それと同時に、何故かタカオが正面から悲鳴をあげて倒れこんできた。コダとグリフはタカオに倒されて、3人とも屋根の上を転がった。
危うく屋根の上をみんな滑って落ちてしまいそうになる。コダとグリフは倒されながらも、なんとかギリギリのところで止める。
「おおおい!どうなってんだ!」
コダは怒鳴り、グリフは倒れこんだタカオを無理やりどかす。タカオがふざけてこんなことをしているはずがないことは、2人共分かっている。
タカオは屋根の上で方向感覚を失ったようにもがいている。やっと足は屋根の上で、頭上には空があると認識したところだった。
「分からない。何があったんだ」
きょとんと、とぼけたタカオの顔を見ると、コダは怒りを抑えきれずに胸ぐらをつかみ詰め寄った。
「いいから説明しろ。吹き飛ばされた方向から戻って来たんだぞ。ウェンディーネの力を使ったのか?」
タカオは少しずつ我に返り、ケンカ腰のコダに同じように怒ったように言い返す。
「ウェンディーネの力なんて、急にどうやって使うんだよ。そんな器用ならもっと前に使ってる」
タカオの言い分には全員が納得だった。そんな器用なら、どれほど頼もしいだろうと誰もが心の片隅で思ったほどだったけれど、軽く怒っているタカオには言えそうもなかった。
「だよな」
コダは急に怒りのトーンを下げてそう言うと、タカオもやっと冷静になって思い出していた。
「風が大きな壁みたいにぶつかってきて、気がついたら足元には屋根はなくて空中だった。それからもう一度衝撃があって、そのあとはもう、気がついたら転がってたんだ」
タカオはシアンのいる場所を見て、付け足した。
「2度目の衝撃も風だったと思う。でもシアンは、あの状態から動けてないよな……」
シアンは今だにどうして良いのか分からず、手を上にしたままだ。今はトッシュが駆け寄り、シアンはますます泣き出しそうだった。
そうこうしている間に、ライルが現れ、ユミルまで屋根の上にいる。ライルは一部始終をみていたようで、真っ青な顔でタカオの元にやってくる。
「無事ですか!?シアンがうかつなことをしてしまって、申し訳ない」
タカオは肩をすくめて、なんでもないことのように返事をする。
「いえ、驚いただけで、なんともないので」
ライルはそれでも謝り続け、ふいに、コダの開けた屋根の穴が目に入る。
「え、これ……」
ライルが思わずそう聞こうとした時、コダが慌てて大声を出す。
「そんなことより、どうなってんだよ!シアンの起こしてない風があったんだぞ!もしかしたら、シルフが正気に戻って助けたかもしれないし、アルが戻ってきたのかもしれねーだろ!屋根の穴のひとつやふたつ何だ!なあ!」
コダはそう言って、力強くタカオを叩く。すると、どこかから風が吹く。
「残念だけど、風の精霊様でも、アルでもないの」
そう言う声が聞こえると、屋根の端にはシアがいる。シアのずっと後ろでは、シアンがトッシュに見守られながらゆっくりと腕を下ろしているところだ。
「シア!いつの間に!」
タカオはそう言いながら、目を大きく見開いた。シアは屋根の端にいるわけではない。屋根のもう一歩向こう。空中でふわりと風を纏っている。それはまるで、アルが纏っていた風に良く似ている。
それと同時に、何故かタカオが正面から悲鳴をあげて倒れこんできた。コダとグリフはタカオに倒されて、3人とも屋根の上を転がった。
危うく屋根の上をみんな滑って落ちてしまいそうになる。コダとグリフは倒されながらも、なんとかギリギリのところで止める。
「おおおい!どうなってんだ!」
コダは怒鳴り、グリフは倒れこんだタカオを無理やりどかす。タカオがふざけてこんなことをしているはずがないことは、2人共分かっている。
タカオは屋根の上で方向感覚を失ったようにもがいている。やっと足は屋根の上で、頭上には空があると認識したところだった。
「分からない。何があったんだ」
きょとんと、とぼけたタカオの顔を見ると、コダは怒りを抑えきれずに胸ぐらをつかみ詰め寄った。
「いいから説明しろ。吹き飛ばされた方向から戻って来たんだぞ。ウェンディーネの力を使ったのか?」
タカオは少しずつ我に返り、ケンカ腰のコダに同じように怒ったように言い返す。
「ウェンディーネの力なんて、急にどうやって使うんだよ。そんな器用ならもっと前に使ってる」
タカオの言い分には全員が納得だった。そんな器用なら、どれほど頼もしいだろうと誰もが心の片隅で思ったほどだったけれど、軽く怒っているタカオには言えそうもなかった。
「だよな」
コダは急に怒りのトーンを下げてそう言うと、タカオもやっと冷静になって思い出していた。
「風が大きな壁みたいにぶつかってきて、気がついたら足元には屋根はなくて空中だった。それからもう一度衝撃があって、そのあとはもう、気がついたら転がってたんだ」
タカオはシアンのいる場所を見て、付け足した。
「2度目の衝撃も風だったと思う。でもシアンは、あの状態から動けてないよな……」
シアンは今だにどうして良いのか分からず、手を上にしたままだ。今はトッシュが駆け寄り、シアンはますます泣き出しそうだった。
そうこうしている間に、ライルが現れ、ユミルまで屋根の上にいる。ライルは一部始終をみていたようで、真っ青な顔でタカオの元にやってくる。
「無事ですか!?シアンがうかつなことをしてしまって、申し訳ない」
タカオは肩をすくめて、なんでもないことのように返事をする。
「いえ、驚いただけで、なんともないので」
ライルはそれでも謝り続け、ふいに、コダの開けた屋根の穴が目に入る。
「え、これ……」
ライルが思わずそう聞こうとした時、コダが慌てて大声を出す。
「そんなことより、どうなってんだよ!シアンの起こしてない風があったんだぞ!もしかしたら、シルフが正気に戻って助けたかもしれないし、アルが戻ってきたのかもしれねーだろ!屋根の穴のひとつやふたつ何だ!なあ!」
コダはそう言って、力強くタカオを叩く。すると、どこかから風が吹く。
「残念だけど、風の精霊様でも、アルでもないの」
そう言う声が聞こえると、屋根の端にはシアがいる。シアのずっと後ろでは、シアンがトッシュに見守られながらゆっくりと腕を下ろしているところだ。
「シア!いつの間に!」
タカオはそう言いながら、目を大きく見開いた。シアは屋根の端にいるわけではない。屋根のもう一歩向こう。空中でふわりと風を纏っている。それはまるで、アルが纏っていた風に良く似ている。
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