契約の森 精霊の瞳を持つ者
5.
「ねぇ、ママ」
イズナが居心地の悪そうにぱたぱたと部屋から出て行ってしまうと、シアはレノを見上げて聞いた。
「目が覚める前に言ってたことってどういう意味なの?ほら、予感がするって」
レノはそれを聞いても、すぐには思い出せない様子だった。それでも無意識ながらにいった言葉をうっすらと思い出していた。
「……タカオさんなら、あの子を助けてくれる。そんな予感がするの。だから大丈夫よ」
レノは村人の声が聞こえる窓を見つめていた。シアもその窓を見つめてぼそりと呟く。
「そう……うん。いつか、お兄ちゃんがシアンを見つけてくれるかもしれないね」
シアにしてみれば、全ての物事が終わってしまっているように感じていた。レノが言うことも、もう有りもしないことを期待しているとしか思えなかった。
「シアが帰ってくるって予感も、当たったんだから」
レノは優しくそういうと、シアの頬を両手で包んで微笑む。それから思い出したようにライルを振り返った。
「そう言えば、タカオさんは?あの騒ぎが少しおさまったら、お礼を言わなきゃね」
ライルは今になって、そういえばと窓に張り付いて村の中に目をこらす。
「あれ、見かけてないな。タカオさんも一緒に帰ってきたんだよな?」
「え……?」
シアは急に背筋を伸ばすと、上を見上げて、帰り道のことを思い出しているようだった。
「たいへん!お兄ちゃんのこと、置いてきちゃったみたい!!」
シアの言葉にレノは目を丸くし、口に手を当てて、驚いて大声を上げそうになるのをこらえた。ライルはさっと顔色を変えて、慌てて外に飛び出していく。シアもそんなライルを追う。村の中は、こんな夜中からお祭りでもはじまりそうな陽気だった。
ライルがユミルの家の玄関を開けると、ルースが息を切らせて走ってきたところだった。
「ルース、大変なんだ!グリフは?アーノルドがいればすぐに知らせてくれるのに、あいつまで姿が見えないなんて」
ライルはものすごい勢いで走り込んできたルースを捕まえるとグリフとアルを探すように村全体を見渡す。
「タカオのことだろ?俺、帰り道ほかのことを考えてて、置いてきちゃったみたいで」
ルースは一旦息を吐き切る。
「私も小さい子達が気がかりで、気がつかなくって」
シアもライルの後ろからそう言うと、ルースは息を整えて早口で伝えた。
「それで、グリフって人なら怖い顔して村の入り口を睨んでるよ。ここで待つって、ライルに知らせて来いって。伝えたからな!」
ルースは弾けるようにライルの手から飛び出していくと、今きた道を急いで戻っていった。
「全員気がつかなかったのか?一体、何があったんだ……」
ライルはルースの後を追いながらそう呟く。それにはシアも答えられないほど、ライルは全力で走っていた。そう呟く頃にはルースさえも追い越していた。
まるで風のように走り抜けていくと、村の入り口の近い家の庭で、コダが力なく座り込み、その横で微動だにせず村の入り口を見つめているグリフがいた。
イズナが居心地の悪そうにぱたぱたと部屋から出て行ってしまうと、シアはレノを見上げて聞いた。
「目が覚める前に言ってたことってどういう意味なの?ほら、予感がするって」
レノはそれを聞いても、すぐには思い出せない様子だった。それでも無意識ながらにいった言葉をうっすらと思い出していた。
「……タカオさんなら、あの子を助けてくれる。そんな予感がするの。だから大丈夫よ」
レノは村人の声が聞こえる窓を見つめていた。シアもその窓を見つめてぼそりと呟く。
「そう……うん。いつか、お兄ちゃんがシアンを見つけてくれるかもしれないね」
シアにしてみれば、全ての物事が終わってしまっているように感じていた。レノが言うことも、もう有りもしないことを期待しているとしか思えなかった。
「シアが帰ってくるって予感も、当たったんだから」
レノは優しくそういうと、シアの頬を両手で包んで微笑む。それから思い出したようにライルを振り返った。
「そう言えば、タカオさんは?あの騒ぎが少しおさまったら、お礼を言わなきゃね」
ライルは今になって、そういえばと窓に張り付いて村の中に目をこらす。
「あれ、見かけてないな。タカオさんも一緒に帰ってきたんだよな?」
「え……?」
シアは急に背筋を伸ばすと、上を見上げて、帰り道のことを思い出しているようだった。
「たいへん!お兄ちゃんのこと、置いてきちゃったみたい!!」
シアの言葉にレノは目を丸くし、口に手を当てて、驚いて大声を上げそうになるのをこらえた。ライルはさっと顔色を変えて、慌てて外に飛び出していく。シアもそんなライルを追う。村の中は、こんな夜中からお祭りでもはじまりそうな陽気だった。
ライルがユミルの家の玄関を開けると、ルースが息を切らせて走ってきたところだった。
「ルース、大変なんだ!グリフは?アーノルドがいればすぐに知らせてくれるのに、あいつまで姿が見えないなんて」
ライルはものすごい勢いで走り込んできたルースを捕まえるとグリフとアルを探すように村全体を見渡す。
「タカオのことだろ?俺、帰り道ほかのことを考えてて、置いてきちゃったみたいで」
ルースは一旦息を吐き切る。
「私も小さい子達が気がかりで、気がつかなくって」
シアもライルの後ろからそう言うと、ルースは息を整えて早口で伝えた。
「それで、グリフって人なら怖い顔して村の入り口を睨んでるよ。ここで待つって、ライルに知らせて来いって。伝えたからな!」
ルースは弾けるようにライルの手から飛び出していくと、今きた道を急いで戻っていった。
「全員気がつかなかったのか?一体、何があったんだ……」
ライルはルースの後を追いながらそう呟く。それにはシアも答えられないほど、ライルは全力で走っていた。そう呟く頃にはルースさえも追い越していた。
まるで風のように走り抜けていくと、村の入り口の近い家の庭で、コダが力なく座り込み、その横で微動だにせず村の入り口を見つめているグリフがいた。
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