契約の森 精霊の瞳を持つ者
22.
「ああ、これは……」
うまい言い逃れを探そうとしたけれど、タカオには見つけられそうになかった。何より、父親の瞳は真実を見抜こうとしている。
ーー誤魔化しても見抜かれるだろう。正直に話す事で、気味悪がれたり、追い出されても、それはそれで仕方がない。
タカオはそう覚悟を決めて話す事にした。この森に迷い込んだ時の事から、今までの出来事の全てを。どこまでの事を信じてくれるだろうかと心配はあった。けれど、彼はタカオの話を遮ることもなく、じっと話を聞いていた。
話し終わっても表情は相変わらず鋭いままだ。
「自己紹介もまだでしたね。私の名は、ライルといいます」
全てを聞いてもライルは動じることはなかった。鋭い目でタカオを見つめるだけだ。タカオも慌てて名前を言う。
「あ、タカオ……浅川孝雄と言います」
「タカオさんですか」
ライルは名前を聞くと、一瞬だけ鋭さが消え、悲しそうな顔をした。
「あの、信じてもらえないとは思いますが……」
タカオはライルの反応に違和感を感じながらもそう言うと、ライルはその言葉を止めるように話した。
「いえ、信じますよ。精霊の事も、その夢の話も。何よりその箱はこの森では見た事もない紐がついている。この森の物ではない事は確かだ。それに、追いかけてきた闇は恐らく、タカオさんが言うようにこの森を奪おうとする闇の者でしょう」
タカオは驚いた顔のままでライルを見つめた。それもそうだった。サラやウェンディーネの話や、夢の話を自分が聞く立場なら信じられないような話ばかりだったからだ。
いくらライルが森の住人でも、夢の話までは信じがたいことのはずなのではと、ライルがなぜすんなりと信用するのか、不思議で仕方がなかった。
それは、グリフに抱く疑問と似ていた。何故、命をかけても守ろうとするのか。
「そうですか……サラとウェンディーネが大地の契約を……」
ライルは噛みしめるようにそう言うと、両の手を祈るように合わせる。指に力が入っているのがタカオにも分かった。
「あの、ライルさん?」
タカオが不安げに話かけると、ライルは嬉しそうな悲しそうなどちらとも分からない表情をしていた。
「私は昔、王家に仕えていたんです。王子の護衛を担当していた時もありました。だから、精霊達の事もよく知っています。彼らが再び契約を結んだとなれば……」
タカオにとって、ライルの話は興味深いものだった。今まで森の歴史については、表面上の事しか知る事がなかった。ライルのように城にいた者であればより詳しい事が分かるだろうと思ったのだ。
何より、『闇の者』にライルは詳しそうだった。何か考えごとをしているライルに、タカオは遠慮がちに声をかけた。
「ライルさん、森の事を教えてもらえませんか。闇の者や、大地の契約や精霊のこと。分からないことばかりなんです」
「もちろん。私の分かることであれば。でも一体、何から話すべきか。こういうのは、グレイスが得意なんですけどね」
ライルはどこか遠い目をして優しい顔でそう笑った。
うまい言い逃れを探そうとしたけれど、タカオには見つけられそうになかった。何より、父親の瞳は真実を見抜こうとしている。
ーー誤魔化しても見抜かれるだろう。正直に話す事で、気味悪がれたり、追い出されても、それはそれで仕方がない。
タカオはそう覚悟を決めて話す事にした。この森に迷い込んだ時の事から、今までの出来事の全てを。どこまでの事を信じてくれるだろうかと心配はあった。けれど、彼はタカオの話を遮ることもなく、じっと話を聞いていた。
話し終わっても表情は相変わらず鋭いままだ。
「自己紹介もまだでしたね。私の名は、ライルといいます」
全てを聞いてもライルは動じることはなかった。鋭い目でタカオを見つめるだけだ。タカオも慌てて名前を言う。
「あ、タカオ……浅川孝雄と言います」
「タカオさんですか」
ライルは名前を聞くと、一瞬だけ鋭さが消え、悲しそうな顔をした。
「あの、信じてもらえないとは思いますが……」
タカオはライルの反応に違和感を感じながらもそう言うと、ライルはその言葉を止めるように話した。
「いえ、信じますよ。精霊の事も、その夢の話も。何よりその箱はこの森では見た事もない紐がついている。この森の物ではない事は確かだ。それに、追いかけてきた闇は恐らく、タカオさんが言うようにこの森を奪おうとする闇の者でしょう」
タカオは驚いた顔のままでライルを見つめた。それもそうだった。サラやウェンディーネの話や、夢の話を自分が聞く立場なら信じられないような話ばかりだったからだ。
いくらライルが森の住人でも、夢の話までは信じがたいことのはずなのではと、ライルがなぜすんなりと信用するのか、不思議で仕方がなかった。
それは、グリフに抱く疑問と似ていた。何故、命をかけても守ろうとするのか。
「そうですか……サラとウェンディーネが大地の契約を……」
ライルは噛みしめるようにそう言うと、両の手を祈るように合わせる。指に力が入っているのがタカオにも分かった。
「あの、ライルさん?」
タカオが不安げに話かけると、ライルは嬉しそうな悲しそうなどちらとも分からない表情をしていた。
「私は昔、王家に仕えていたんです。王子の護衛を担当していた時もありました。だから、精霊達の事もよく知っています。彼らが再び契約を結んだとなれば……」
タカオにとって、ライルの話は興味深いものだった。今まで森の歴史については、表面上の事しか知る事がなかった。ライルのように城にいた者であればより詳しい事が分かるだろうと思ったのだ。
何より、『闇の者』にライルは詳しそうだった。何か考えごとをしているライルに、タカオは遠慮がちに声をかけた。
「ライルさん、森の事を教えてもらえませんか。闇の者や、大地の契約や精霊のこと。分からないことばかりなんです」
「もちろん。私の分かることであれば。でも一体、何から話すべきか。こういうのは、グレイスが得意なんですけどね」
ライルはどこか遠い目をして優しい顔でそう笑った。
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