契約の森 精霊の瞳を持つ者
2.
イズナとジェフが村に着いた頃、タカオは暖炉のある部屋にいた。大きなソファーに横たわり、毛布にくるまれていた。
窓から差し込む光で何度か目を覚ましたけれど、その度に誰かの声が聞こえて暗闇に引き戻された。あの虫のように行ったり来たり。羽音を立てて、暖炉の部屋と暗闇の世界を。
――起きたの……?
――……タカオ……
――本当に目が金色……
――……タカオ……タカオ……
「タカオ……タカオ!浅川孝夫!おい!」
懐かしい声に半ば驚いて、タカオは目を開けた。
「え?」
目の前の光景に理解ができずに、タカオは思わず間の抜けた声を出した。地面に背中をつけたまま、反射的に辺りを見渡す。よく見ようと、眉間にシワを寄せている事にも気が付かなかった。
後になって首が痛くなる事も気にせずに、勢いよく無理に首だけを動かす。辺りには木、木、木。ここ何日か見慣れすぎた光景だった。
けれど何点か大きく違った。あの森では決して目にする事のない光景がそこにはあった。
「神社だ」
思わず、頭に浮かんだ言葉が口から出た。目に映るのは紛れもない神社。そして自分の名を呼ぶこの人物にも戸惑った。
「松嶋さん!!」
タカオの大声が辺りに響く。
「お....?おう。大丈夫か?....ま、それだけ大声が出れば大丈夫か」
自分の名前をやけに大声で呼ばれ、戸惑ったのは松嶋と呼ばれた男だった。
「なんでここに?」
起き上がりながらタカオは聞く。
あの森の事は夢だったのだろうかと考えながら。夢だとしたら、なんて長くてリアルな夢だったのだろうか。
「それはこっちのセリフだ!時間になってもお前が現れないから、心配して来たんだろうが!」
松嶋は長いため息をつくと続けた。
「この間、この神社の事を話してただろう?まさかこんな所で油でも売ってんじゃないかと思ってな」
そう言いながら、誇らしげに鼻を触った。
「サボってるなら怒ってやろうと思って見にきたら、コレだ!ビックリさせるなよ!まったく!」
そう言って今度は首の後ろの汗を拭う。それと同時にどこかの木で蝉が鳴いた。一匹が鳴き始めると、どこに隠れているのか次々と鳴き始めた。気が付けば大合唱となっていた。
「おい、本当にもう大丈夫か?なんで倒れてたんだ?熱中症か?」
松嶋はタカオを質問攻めにしたけれど、当の本人でさえも記憶が曖昧だった。なにせこの数日というもの森の中を旅していたのだから。なんて、そんな事を言葉にするわけにはいかない。
「そうだと思います。気分が悪くなったのは覚えているんですけど……」
適当に話を合わせるしかなかった。
「そうか……とにかく!今日は大事をとって休め!な!上には俺が報告しておくから」
そう言うと松嶋は大丈夫だというタカオを止めて、慌ただしく車を近くまで移動するために車道に続く道に消えて行った。
窓から差し込む光で何度か目を覚ましたけれど、その度に誰かの声が聞こえて暗闇に引き戻された。あの虫のように行ったり来たり。羽音を立てて、暖炉の部屋と暗闇の世界を。
――起きたの……?
――……タカオ……
――本当に目が金色……
――……タカオ……タカオ……
「タカオ……タカオ!浅川孝夫!おい!」
懐かしい声に半ば驚いて、タカオは目を開けた。
「え?」
目の前の光景に理解ができずに、タカオは思わず間の抜けた声を出した。地面に背中をつけたまま、反射的に辺りを見渡す。よく見ようと、眉間にシワを寄せている事にも気が付かなかった。
後になって首が痛くなる事も気にせずに、勢いよく無理に首だけを動かす。辺りには木、木、木。ここ何日か見慣れすぎた光景だった。
けれど何点か大きく違った。あの森では決して目にする事のない光景がそこにはあった。
「神社だ」
思わず、頭に浮かんだ言葉が口から出た。目に映るのは紛れもない神社。そして自分の名を呼ぶこの人物にも戸惑った。
「松嶋さん!!」
タカオの大声が辺りに響く。
「お....?おう。大丈夫か?....ま、それだけ大声が出れば大丈夫か」
自分の名前をやけに大声で呼ばれ、戸惑ったのは松嶋と呼ばれた男だった。
「なんでここに?」
起き上がりながらタカオは聞く。
あの森の事は夢だったのだろうかと考えながら。夢だとしたら、なんて長くてリアルな夢だったのだろうか。
「それはこっちのセリフだ!時間になってもお前が現れないから、心配して来たんだろうが!」
松嶋は長いため息をつくと続けた。
「この間、この神社の事を話してただろう?まさかこんな所で油でも売ってんじゃないかと思ってな」
そう言いながら、誇らしげに鼻を触った。
「サボってるなら怒ってやろうと思って見にきたら、コレだ!ビックリさせるなよ!まったく!」
そう言って今度は首の後ろの汗を拭う。それと同時にどこかの木で蝉が鳴いた。一匹が鳴き始めると、どこに隠れているのか次々と鳴き始めた。気が付けば大合唱となっていた。
「おい、本当にもう大丈夫か?なんで倒れてたんだ?熱中症か?」
松嶋はタカオを質問攻めにしたけれど、当の本人でさえも記憶が曖昧だった。なにせこの数日というもの森の中を旅していたのだから。なんて、そんな事を言葉にするわけにはいかない。
「そうだと思います。気分が悪くなったのは覚えているんですけど……」
適当に話を合わせるしかなかった。
「そうか……とにかく!今日は大事をとって休め!な!上には俺が報告しておくから」
そう言うと松嶋は大丈夫だというタカオを止めて、慌ただしく車を近くまで移動するために車道に続く道に消えて行った。
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