契約の森 精霊の瞳を持つ者
12.
「桃だろ?そんな大げさに驚かなくても」
タカオは手に持った桃をジェフに渡した。ジェフは両手で受け止ると、それを色々な角度から見た。
「伝説なんだって。そう、ただの伝説なんだけど、伝説じゃなかったんだ……」
ジェフはそう呟くと、それを一度タカオに返した。それから真剣な顔で言う。
「えっとね、木には精霊が宿る事があって、その緑色の精霊が宿る木には特別な果実が実るんだ」
「特別な果実?この桃が?」
"また精霊か"というセリフをタカオは静かに飲み込んだ。
「そう。その果実を食べると……なんかすっごい事が起こるって!!」
ジェフは興奮気味でそう言い、最後のほうは勢いよく終わらせたようで、結局タカオにはよく分からなかった。
「ジェフが言っているのは伝説か、神話のようなものだ。その伝説の実を食べると、大切な物を取り戻すことができる。そういう話だ」
グリフは木によりかかりながらそう言った。
「取り戻す……?この果物でなぁ。じゃあ緑色の人は?」
「ドリュアスという名の精霊だ」
タカオの隣でジェフはやっと思い出したように目を輝かせた。 
「体が緑色の精霊だと伝えられているが、話だけの存在で、まして果実なんて、ただの作り話だと思っていた」
グリフもドリュアスという精霊の事はあまり知らないようだった。
「桃、じゃないのか」
形や色や香りはそっくりなのに。
「ドリュアスの果実だよ!この果物、教科書に載ってた絵と一緒だもん!」
ジェフはタカオが言い終わる前に声を張って抗議をした。
ーーいや、桃だろ。
タカオは説明を聞いても、それだけは譲れなかった。
「食べてみればいい」
ジェフの後ろで、事の成り行きを見守っていたイズナがぼそりと言った。タカオもジェフも笑ったのは、イズナの腹からも凄みを増した魔物が唸っていたからだ。
「確かに!食べて望みが叶ったら、ドリュアスの果実だよね!」
ジェフは果実を一つ取るとそう言った。
――望みが叶う果実だっけ?
タカオはそう思いながらイズナとグリフにも渡した。
「とにかく、食べよう」
全員が期待を込めてかぶりつく。伝説の果実は美味いに決まっていると。しかし、一口食べても、二口食べても、誰も何も言わなかった。
「うん。なんか不思議な味というか、ね!」
ジェフは半分ほど食べると、ぼそぼそと沈黙を打ち破った。
「不味いな」
グリフが素っ気なく言い、
「臭いね……」
イズナも続いた。
食べるのを一旦止め、果実を握りしめている三人をよそにタカオは美味しそうに食べ続けていた。三人の視線にタカオは気がつくとぽそりと言った。
「これは美味しいよ。やっぱりただの桃だよ」
そう言って残った種を見せて笑った。
タカオは手に持った桃をジェフに渡した。ジェフは両手で受け止ると、それを色々な角度から見た。
「伝説なんだって。そう、ただの伝説なんだけど、伝説じゃなかったんだ……」
ジェフはそう呟くと、それを一度タカオに返した。それから真剣な顔で言う。
「えっとね、木には精霊が宿る事があって、その緑色の精霊が宿る木には特別な果実が実るんだ」
「特別な果実?この桃が?」
"また精霊か"というセリフをタカオは静かに飲み込んだ。
「そう。その果実を食べると……なんかすっごい事が起こるって!!」
ジェフは興奮気味でそう言い、最後のほうは勢いよく終わらせたようで、結局タカオにはよく分からなかった。
「ジェフが言っているのは伝説か、神話のようなものだ。その伝説の実を食べると、大切な物を取り戻すことができる。そういう話だ」
グリフは木によりかかりながらそう言った。
「取り戻す……?この果物でなぁ。じゃあ緑色の人は?」
「ドリュアスという名の精霊だ」
タカオの隣でジェフはやっと思い出したように目を輝かせた。 
「体が緑色の精霊だと伝えられているが、話だけの存在で、まして果実なんて、ただの作り話だと思っていた」
グリフもドリュアスという精霊の事はあまり知らないようだった。
「桃、じゃないのか」
形や色や香りはそっくりなのに。
「ドリュアスの果実だよ!この果物、教科書に載ってた絵と一緒だもん!」
ジェフはタカオが言い終わる前に声を張って抗議をした。
ーーいや、桃だろ。
タカオは説明を聞いても、それだけは譲れなかった。
「食べてみればいい」
ジェフの後ろで、事の成り行きを見守っていたイズナがぼそりと言った。タカオもジェフも笑ったのは、イズナの腹からも凄みを増した魔物が唸っていたからだ。
「確かに!食べて望みが叶ったら、ドリュアスの果実だよね!」
ジェフは果実を一つ取るとそう言った。
――望みが叶う果実だっけ?
タカオはそう思いながらイズナとグリフにも渡した。
「とにかく、食べよう」
全員が期待を込めてかぶりつく。伝説の果実は美味いに決まっていると。しかし、一口食べても、二口食べても、誰も何も言わなかった。
「うん。なんか不思議な味というか、ね!」
ジェフは半分ほど食べると、ぼそぼそと沈黙を打ち破った。
「不味いな」
グリフが素っ気なく言い、
「臭いね……」
イズナも続いた。
食べるのを一旦止め、果実を握りしめている三人をよそにタカオは美味しそうに食べ続けていた。三人の視線にタカオは気がつくとぽそりと言った。
「これは美味しいよ。やっぱりただの桃だよ」
そう言って残った種を見せて笑った。
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