契約の森 精霊の瞳を持つ者
11.
気のせいだ。タカオはそう思ったけれど、再び石を持とうとは思わなかった。そのかわり、木に近づき手をあてた。もしかしたら、鼓動が聞こえるかも知れないと思ったけれど、何も聞こえなかった。
特に変わった所もなく、何だったのだろうと思い根元に座り込んだ。タカオの頭上では葉が揺れて心地よい音に包まれると、小鳥が集まり歌い始めた。
タカオはそのあたりから、うとうととし始め、どこからが今なのか夢なのかが分からなくなっていた。小鳥は飛び交い、まるで会話をするようにお互いに可愛らしい声で囁いた。
そのうちに、枝には小鳥と、緑色をした人が現れた。肌も髪も葉の色と同じ緑だった。
「不思議な人だ」
タカオはそう呟くと、次の瞬間には緑色の人がタカオの隣にいた。
「お前こそ……不思議だ……なぜ戻ってきた……」
緑色の人は葉のざわめきに溶け落ちるような声でそう言った。タカオはその緑色の人をゆっくりと見つめた。それは夢にしては鮮明で美しい女性だった。
「なぜ、か……さぁ。どうしてこんな所にいるんだろうな。不思議で仕方がないよ」
タカオがそう言うと、緑色の人はにやりと不適な笑みを浮かべた。
「森のかけらか……やっかいだな……水の道筋ばかりを信じるなよ……呪われし者……」
その言葉の後は聞き取れなかった。もしかしたら何も言わなかったのかもしれない。彼女の声と葉のざわめく音が溶け合って、後は森の音が深く深くタカオに染み込んでいくようだった。
「タカオ!!」
その声でタカオは目覚めると、ジェフは少し怒ったような顔をしていた。
「すっごい探したんだよ!こんな所で寝るなんて!」
その言葉を遮るようにジェフの腹の魔物が大きな唸りを上げた。
「ごめん。何か食べる物を探そうと思ってたんだ」
そう言いながら木の枝を見上げた。ジェフも、後ろにいたグリフもイズナもタカオの視線の先を見上げた。見上げた先の枝には、果物も小鳥も、あの緑色の人もいなかった。
「夢かなぁ。木に果物がなっていて、緑色の人が……」
タカオは言葉にすると、自分が突拍子もないことを言っている事に気がついて、あれが夢だと知った。
「緑色の人?」
ジェフは何か考えながら聞き返した。
「いや、寝ぼけていたのかも」
そう言うタカオを無視して、グリフは木に近づいた。
「立派な木だ。それは何か言っていたか?」
グリフのその声が聞こえないほど、タカオは別の事に注目していた。すぐ近くの木の根元に、あの桃が4つ置いてあったのだ。
「これ……」
タカオは恐る恐る桃を手に取ってみると、思っていたよりもずっしりとしていた。スーパーで見る桃とは何かが違うとタカオは思ったが口にはしなかった。
手にとってみると、甘く瑞々しい香りがする。ジェフはきっと喜ぶだろうとタカオは思って振り向くと、ジェフは口を開けたまま目を丸くしていた。
「それ!本で見たことある!」
それだけ言うと固まってしまった。
特に変わった所もなく、何だったのだろうと思い根元に座り込んだ。タカオの頭上では葉が揺れて心地よい音に包まれると、小鳥が集まり歌い始めた。
タカオはそのあたりから、うとうととし始め、どこからが今なのか夢なのかが分からなくなっていた。小鳥は飛び交い、まるで会話をするようにお互いに可愛らしい声で囁いた。
そのうちに、枝には小鳥と、緑色をした人が現れた。肌も髪も葉の色と同じ緑だった。
「不思議な人だ」
タカオはそう呟くと、次の瞬間には緑色の人がタカオの隣にいた。
「お前こそ……不思議だ……なぜ戻ってきた……」
緑色の人は葉のざわめきに溶け落ちるような声でそう言った。タカオはその緑色の人をゆっくりと見つめた。それは夢にしては鮮明で美しい女性だった。
「なぜ、か……さぁ。どうしてこんな所にいるんだろうな。不思議で仕方がないよ」
タカオがそう言うと、緑色の人はにやりと不適な笑みを浮かべた。
「森のかけらか……やっかいだな……水の道筋ばかりを信じるなよ……呪われし者……」
その言葉の後は聞き取れなかった。もしかしたら何も言わなかったのかもしれない。彼女の声と葉のざわめく音が溶け合って、後は森の音が深く深くタカオに染み込んでいくようだった。
「タカオ!!」
その声でタカオは目覚めると、ジェフは少し怒ったような顔をしていた。
「すっごい探したんだよ!こんな所で寝るなんて!」
その言葉を遮るようにジェフの腹の魔物が大きな唸りを上げた。
「ごめん。何か食べる物を探そうと思ってたんだ」
そう言いながら木の枝を見上げた。ジェフも、後ろにいたグリフもイズナもタカオの視線の先を見上げた。見上げた先の枝には、果物も小鳥も、あの緑色の人もいなかった。
「夢かなぁ。木に果物がなっていて、緑色の人が……」
タカオは言葉にすると、自分が突拍子もないことを言っている事に気がついて、あれが夢だと知った。
「緑色の人?」
ジェフは何か考えながら聞き返した。
「いや、寝ぼけていたのかも」
そう言うタカオを無視して、グリフは木に近づいた。
「立派な木だ。それは何か言っていたか?」
グリフのその声が聞こえないほど、タカオは別の事に注目していた。すぐ近くの木の根元に、あの桃が4つ置いてあったのだ。
「これ……」
タカオは恐る恐る桃を手に取ってみると、思っていたよりもずっしりとしていた。スーパーで見る桃とは何かが違うとタカオは思ったが口にはしなかった。
手にとってみると、甘く瑞々しい香りがする。ジェフはきっと喜ぶだろうとタカオは思って振り向くと、ジェフは口を開けたまま目を丸くしていた。
「それ!本で見たことある!」
それだけ言うと固まってしまった。
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