契約の森 精霊の瞳を持つ者
3.
タカオは驚いて慌てて説明した。
「あ、アレルさんが言ってたんだ。でもエントはすごい怒ってたな。王子がどうのこうのって、たしか」
グリフは眉間にシワをよせて、何か考えこむように視線を鍋に移した。グリフがなにも言わないのでタカオは1人で喋っていた。
「ジェフが言ってたアレルさんが闇の者って話、もしかしたらそうなのかもしれないな。王家の地図も持っていたし。それにしても、どうして渡したんだろう」
「精霊に会わせたいんだ。アレルは」
そう言ってグリフは鍋に蓋をした。
「会わせたい?まるで居場所を知っているみたいだな」
「知っているさ。あれはその為の地図だ。どうして持っていたのかはわからないけど。何を企んでいるのかも……」
グリフは鍋を見つめたまま微動だにしない。
「その為の地図……エントは精霊は見つけられないって言ってのに」
エントはたしかにそう言っていた。
「まさか、アレルが持っているとは思わなかったんだろうな。王都や城は、今は閉ざされている。あれを持っているということは、闇のものが攻め込む前に手に入れたんだろう」
焚き火は時々はじけるような音を出し、火の粉を放つ。
「森のかけらか。毒とも、命を与えるものとも伝えられているが、それを語り継いでいたのは王家のごく一部の者だけだ。それこそ、あいつの得意分野だな」
グリフはまるで独り言のようにそう言うと首を振ってため息をついた。その時ちょうど、鍋の蓋がコトリと音を立てた。グリフは鍋の蓋をとり、まぜると器によそった。
こんな大きな鍋や器など、一体どうやって持っていたのだろうとタカオは不思議に思った。
「食べろ」
グリフはそう言うとタカオに器を差し出した。
「……食欲がないんだ」
タカオは目を逸らした。
「いいから、食べろ」
面倒くさそうに言うグリフに、タカオは自分自身が情けなくなった。何が悲しくて、グリフのような子供に飯を食えと叱られなければならないのか。
タカオは意を決して器を受け取りムリヤリに口に入れようとした。けれど、食べることは出来なかった。口まで運ぶと、何故だか恐怖が沸き起こって手が震える。
タカオはこの得体の知れない恐怖をどうする事もできなかった。グリフの作ってくれたものは、野菜が入ったスープだった。黄金色の透き通ったスープに野菜が入っている。にんじんや玉ねぎ、キャベツが器の中に収まっていた。
それはタカオにも馴染み深い野菜で、抵抗なく食べれるはずのものだった。
「毒は、入ってないぞ」
ほら、というようにグリフは自分が食べる姿をタカオに見せた。タカオはその時になってようやく、何故食べることが出来ないのか分かった。それから何も言わず、スープの入った器を両手で持って見つめた。野菜の溶け合う良い香りが、タカオを包み込んでいた。
「あ、アレルさんが言ってたんだ。でもエントはすごい怒ってたな。王子がどうのこうのって、たしか」
グリフは眉間にシワをよせて、何か考えこむように視線を鍋に移した。グリフがなにも言わないのでタカオは1人で喋っていた。
「ジェフが言ってたアレルさんが闇の者って話、もしかしたらそうなのかもしれないな。王家の地図も持っていたし。それにしても、どうして渡したんだろう」
「精霊に会わせたいんだ。アレルは」
そう言ってグリフは鍋に蓋をした。
「会わせたい?まるで居場所を知っているみたいだな」
「知っているさ。あれはその為の地図だ。どうして持っていたのかはわからないけど。何を企んでいるのかも……」
グリフは鍋を見つめたまま微動だにしない。
「その為の地図……エントは精霊は見つけられないって言ってのに」
エントはたしかにそう言っていた。
「まさか、アレルが持っているとは思わなかったんだろうな。王都や城は、今は閉ざされている。あれを持っているということは、闇のものが攻め込む前に手に入れたんだろう」
焚き火は時々はじけるような音を出し、火の粉を放つ。
「森のかけらか。毒とも、命を与えるものとも伝えられているが、それを語り継いでいたのは王家のごく一部の者だけだ。それこそ、あいつの得意分野だな」
グリフはまるで独り言のようにそう言うと首を振ってため息をついた。その時ちょうど、鍋の蓋がコトリと音を立てた。グリフは鍋の蓋をとり、まぜると器によそった。
こんな大きな鍋や器など、一体どうやって持っていたのだろうとタカオは不思議に思った。
「食べろ」
グリフはそう言うとタカオに器を差し出した。
「……食欲がないんだ」
タカオは目を逸らした。
「いいから、食べろ」
面倒くさそうに言うグリフに、タカオは自分自身が情けなくなった。何が悲しくて、グリフのような子供に飯を食えと叱られなければならないのか。
タカオは意を決して器を受け取りムリヤリに口に入れようとした。けれど、食べることは出来なかった。口まで運ぶと、何故だか恐怖が沸き起こって手が震える。
タカオはこの得体の知れない恐怖をどうする事もできなかった。グリフの作ってくれたものは、野菜が入ったスープだった。黄金色の透き通ったスープに野菜が入っている。にんじんや玉ねぎ、キャベツが器の中に収まっていた。
それはタカオにも馴染み深い野菜で、抵抗なく食べれるはずのものだった。
「毒は、入ってないぞ」
ほら、というようにグリフは自分が食べる姿をタカオに見せた。タカオはその時になってようやく、何故食べることが出来ないのか分かった。それから何も言わず、スープの入った器を両手で持って見つめた。野菜の溶け合う良い香りが、タカオを包み込んでいた。
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