契約の森 精霊の瞳を持つ者
8.
全員集まると、ジェフの母が作ってくれたサンドイッチを食べた。パンに野菜や卵が挟まっていて、ジェフは嬉しそうに頬張った。
けれどタカオは、やはり食欲がなかった。腹は減っているのに、何かを食べるという行為に何故か躊躇し、結局食べる事が出来ない。
ジェフもグリフもイズナでさえも、このタカオの異変にすでに気がつき始めていた。
「食べないの?」
ジェフが心配そうに聞く。タカオは食べようと口元に持っていくだけで、口は固く閉ざされ結局、口から遠ざけてしまう。それを何度か繰り返すと、ため息をつくのだ。
「やっぱりまだ、食欲がないな」
そう言って、ジェフに渡す。そんなタカオをよそに、グリフは食べ終わるとすぐに姿を消した。タカオは水を飲むと、聞こうと思って後回しにしていた事を思い出した。
「聞きそびれてたんだけど……」
そう言ってタカオはイズナを見た。
「イズナはどうしてついて来てくれるんだ?やっぱり……精霊と何か関係してるの?」
イズナはサンドイッチを口に沢山詰めたまま、大きく首を横に振った。それからタカオの方を指差した。正確にはタカオの顔の少し横の空間だ。
タカオはその指した方を振り返るように見ると、ちょうどグリフが戻ってきた所だった。
「グリフ……?」
タカオがイズナに聞くと大きく頷いた。それから肩掛けにしていた大きなカバンを出して、中を見せてくれた。カバンの中には包帯や消毒液、飲み薬や塗り薬が色々と詰まっていた。
ジェフもカバンを覗くと、納得したように頷いた。
「そっか!グリフは大怪我したばっかりだったもんね。イズナはグリフが心配で来てくれたんだね!」
ジェフは納得したようにサンドイッチを口いっぱいに頬張りながら喋る。タカオも納得して頷いていると、イズナはタカオに近づいて左腕を掴んだ。
タカオはぎくりとして、うめき声を上げそうになった。
「食べないと、治らない……と思う」
イズナは無表情で包帯の巻かれたタカオの腕に視線を落とすと、自分の方にタカオの腕を引っ張った。
「イズナ……?」
タカオが驚いている間にイズナは包帯を外し、傷口を覆っていたガーゼをはがした。その時初めて、タカオは自分の傷口を見た。
痛いとは思っていたけれど、こんなにひどいとは考えもしなかった。
傷口の血は不思議なほど鮮やかで、固まる気配はなかった。その上、もう自分の腕とは思えないほど腫れ上がっている。
腕の外側部分に傷があり、手首から肘まで、サラの爪痕そのものだ。それにあの黒い炎に焼かれたせいだろう。皮膚が紫と赤を混ぜたような色をして、タカオはもう自分では見ることができなかった。
そして痛みは先程よりも増したような気がして、傷口は脈打ちはじめた。
けれどタカオは、やはり食欲がなかった。腹は減っているのに、何かを食べるという行為に何故か躊躇し、結局食べる事が出来ない。
ジェフもグリフもイズナでさえも、このタカオの異変にすでに気がつき始めていた。
「食べないの?」
ジェフが心配そうに聞く。タカオは食べようと口元に持っていくだけで、口は固く閉ざされ結局、口から遠ざけてしまう。それを何度か繰り返すと、ため息をつくのだ。
「やっぱりまだ、食欲がないな」
そう言って、ジェフに渡す。そんなタカオをよそに、グリフは食べ終わるとすぐに姿を消した。タカオは水を飲むと、聞こうと思って後回しにしていた事を思い出した。
「聞きそびれてたんだけど……」
そう言ってタカオはイズナを見た。
「イズナはどうしてついて来てくれるんだ?やっぱり……精霊と何か関係してるの?」
イズナはサンドイッチを口に沢山詰めたまま、大きく首を横に振った。それからタカオの方を指差した。正確にはタカオの顔の少し横の空間だ。
タカオはその指した方を振り返るように見ると、ちょうどグリフが戻ってきた所だった。
「グリフ……?」
タカオがイズナに聞くと大きく頷いた。それから肩掛けにしていた大きなカバンを出して、中を見せてくれた。カバンの中には包帯や消毒液、飲み薬や塗り薬が色々と詰まっていた。
ジェフもカバンを覗くと、納得したように頷いた。
「そっか!グリフは大怪我したばっかりだったもんね。イズナはグリフが心配で来てくれたんだね!」
ジェフは納得したようにサンドイッチを口いっぱいに頬張りながら喋る。タカオも納得して頷いていると、イズナはタカオに近づいて左腕を掴んだ。
タカオはぎくりとして、うめき声を上げそうになった。
「食べないと、治らない……と思う」
イズナは無表情で包帯の巻かれたタカオの腕に視線を落とすと、自分の方にタカオの腕を引っ張った。
「イズナ……?」
タカオが驚いている間にイズナは包帯を外し、傷口を覆っていたガーゼをはがした。その時初めて、タカオは自分の傷口を見た。
痛いとは思っていたけれど、こんなにひどいとは考えもしなかった。
傷口の血は不思議なほど鮮やかで、固まる気配はなかった。その上、もう自分の腕とは思えないほど腫れ上がっている。
腕の外側部分に傷があり、手首から肘まで、サラの爪痕そのものだ。それにあの黒い炎に焼かれたせいだろう。皮膚が紫と赤を混ぜたような色をして、タカオはもう自分では見ることができなかった。
そして痛みは先程よりも増したような気がして、傷口は脈打ちはじめた。
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