契約の森 精霊の瞳を持つ者
5.
ジェフの荷物を少し持ってやり、歩いて行くと小さな橋に出た。石の橋だったけれど、それは森と一体化して石は土と草でほとんど見えなくなっていた。
この橋がどれくらい前からあるのか、その歴史を物語っていた。橋を渡りきった所には人影が2つあった。
グリフと、女の子だ。グリフはジェフと同じようにポンチョのようなマントのようなものを羽織っている。ジェフとは違い黒のコートで丈が膝まである長いものだった。
ズボンはやはりブーツに入れて、コートと同じ黒だった。それはタカオに中世ヨーロッパの修道士を連想させ、フードをかぶれば死神を思い出させた。
「遅い。早く来い」
相変わらずの命令口調に、タカオは笑いそうになる。けれど笑う暇もなく、グリフはタカオに荷物を渡した。
不思議に思って見ると、グリフと同じコートとブーツ、それに着替えや色々と入った斜め掛けの鞄を渡された。
「あ……ありがとう!」
革靴では歩きづらかったので助かった。これで泥があろうが、草の中だろうが進んでいける。その時はそう思っていた。
コートはずっしりと重かった。けれどスーツだけで歩くには寒すぎたから、タカオは嬉しかった。
「ありがとう。本当に助かるよ」
タカオはまた礼を言ったが、グリフは特に何も言わなかった。グリフの横にいた女の子と目が合うと、ジェフがすかさず言った。
「イズナだよ!あんまり喋らないんだ」
イズナは髪の長い女の子で、丈の短い、ジェフと同じ茶色のポンチョを羽織り、短パンにタイツにブーツをはいていた。倉庫で怪我をしたグリフに駆け寄った少女だった。
「イズナ?その名前ってどこかで聞いたことがあるような……。まぁとにかく、よろしく」
ジェフのことがあって、勝手に心配して戻ったほうがいいと言うのはやめることにした。
イズナは突然思い出したように斜め掛けにしていたかばんから、四つ折りの紙を取り出してタカオに差し出した。
「アレルさんから……」
そう言って黙ってしまった。
「アレルさんから?」
タカオは不審に思いながらもイズナからその紙を受け取った。四つ折りにされた紙を開くと、それは古い紙に書かれた地図だった。
それも、実に細かく書かれた地図だ。細かすぎて密集している部分や、小さく書かれた場所は何が書いてあるか読み取る事ができそうにない。
そして、書いてある文字はタカオには読めない文字だった。
「地図だ」
タカオはそう言うと、ジェフに見せた。
「これ、王家の地図じゃない?紋章が入ってるよ……初めて見た!なんでアレルさんがくれたんだろう?」
そう言って首を傾げた。
「さぁ……?」
タカオも首を傾げる。
「不思議だな。アレルがその地図をどうして持っていたのか、そっちの方が重要だ」
グリフはタカオの手から地図を受け取ると、そのまま歩き始めた。それから地図を陽の光に透かす。
「本物だな」
小さく、どこか悲しそうに呟いた。
この橋がどれくらい前からあるのか、その歴史を物語っていた。橋を渡りきった所には人影が2つあった。
グリフと、女の子だ。グリフはジェフと同じようにポンチョのようなマントのようなものを羽織っている。ジェフとは違い黒のコートで丈が膝まである長いものだった。
ズボンはやはりブーツに入れて、コートと同じ黒だった。それはタカオに中世ヨーロッパの修道士を連想させ、フードをかぶれば死神を思い出させた。
「遅い。早く来い」
相変わらずの命令口調に、タカオは笑いそうになる。けれど笑う暇もなく、グリフはタカオに荷物を渡した。
不思議に思って見ると、グリフと同じコートとブーツ、それに着替えや色々と入った斜め掛けの鞄を渡された。
「あ……ありがとう!」
革靴では歩きづらかったので助かった。これで泥があろうが、草の中だろうが進んでいける。その時はそう思っていた。
コートはずっしりと重かった。けれどスーツだけで歩くには寒すぎたから、タカオは嬉しかった。
「ありがとう。本当に助かるよ」
タカオはまた礼を言ったが、グリフは特に何も言わなかった。グリフの横にいた女の子と目が合うと、ジェフがすかさず言った。
「イズナだよ!あんまり喋らないんだ」
イズナは髪の長い女の子で、丈の短い、ジェフと同じ茶色のポンチョを羽織り、短パンにタイツにブーツをはいていた。倉庫で怪我をしたグリフに駆け寄った少女だった。
「イズナ?その名前ってどこかで聞いたことがあるような……。まぁとにかく、よろしく」
ジェフのことがあって、勝手に心配して戻ったほうがいいと言うのはやめることにした。
イズナは突然思い出したように斜め掛けにしていたかばんから、四つ折りの紙を取り出してタカオに差し出した。
「アレルさんから……」
そう言って黙ってしまった。
「アレルさんから?」
タカオは不審に思いながらもイズナからその紙を受け取った。四つ折りにされた紙を開くと、それは古い紙に書かれた地図だった。
それも、実に細かく書かれた地図だ。細かすぎて密集している部分や、小さく書かれた場所は何が書いてあるか読み取る事ができそうにない。
そして、書いてある文字はタカオには読めない文字だった。
「地図だ」
タカオはそう言うと、ジェフに見せた。
「これ、王家の地図じゃない?紋章が入ってるよ……初めて見た!なんでアレルさんがくれたんだろう?」
そう言って首を傾げた。
「さぁ……?」
タカオも首を傾げる。
「不思議だな。アレルがその地図をどうして持っていたのか、そっちの方が重要だ」
グリフはタカオの手から地図を受け取ると、そのまま歩き始めた。それから地図を陽の光に透かす。
「本物だな」
小さく、どこか悲しそうに呟いた。
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