契約の森 精霊の瞳を持つ者

thruu

23.

 タカオが倉庫から出ると、食堂に続く廊下の扉には男が立っていた。その男は、タカオを壁に叩きつけたガラという男だった。ガラは不敵な笑みを浮かべている。


「呪われし者を入れるわけにはいかない」


 そう言って片腕を地面と水平に上げ、建物の横を通れ、とでも言うように建物と森の境目の道を指差していた。


 タカオは言われた通りにガラの指す道へ進んだ。どこに行けばいいのか分からないけれど、早くここから離れなければならない。


 そうする事でみんなが安心するのであれば、それがいいに決まっていた。建物の横の道に入った時、通り過ぎたガラはタカオを鼻で笑う。


「……臆病者め」


 バカにするようにそう言う。それがあまりにも理不尽な事のように思えて、タカオは悔しさのような憤りを感じた。けれど、これからあの暗い森に1人で行くのだと思うと、ガラのそんな言葉はどうでもよくなってしまった。


 建物と森の境目の道は、森のほうから木が目一杯に枝を広げている。そのおかげで、まるで木のトンネルのようだ。葉の隙間からは、痛いほどの光が差し込んでいた。


 タカオはできるだけ、まわりの美しいものに神経を集中させて忘れようとした。精霊の呪いも、ガラの言った言葉も、食堂の悲鳴も、悲しい事全て。


 歩き続けると、建物を通り過ぎ、小さな門を通り過ぎた。


ーーここからは、森だ。


少し上り坂になっている道を、踏みしめながら歩いてゆく。

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