13.

　それはグリフと一緒に倉庫にきた男達だった。

「あんな怪我さえなければ、グリフはサラを殺れてた。あの化け物を……また生まれさせやがって！」

　そう言うと、男はタカオの衿を掴んで壁に押し付けた。あまりにも強く壁に叩きつけられ、タカオは一瞬、息を吸うことも出来なかった。

　背中は壁に打ち付けられ、鈍い音と、壁に掛けてある小さな額が細かく揺れている。

「お前はこの森の事なんて、なにも分かってねぇ！サラマンダーが復活したら、今度こそ森は燃えちまう！アイツは他の精霊と同じように殺すべきだったんだ！それを……！」

　男は腕の角度を変え、タカオの首に押し当てた。圧迫されてタカオは息ができない。男の足元ではジェフが必死になって止めているけれど、何度もはじき返されている。

　タカオは男のその行動に、その言葉に困惑しながら抵抗出来なかった。サラに傷つけられた腕は今のところ少しも動かせない上に、全身の動きを制限させられるほどその痛みは大きかった。

　喉を潰されるのではないかと思うほど、男の腕には力が入っている。けれど、そんなこと以上にタカオは驚いていたのだ。

――他の精霊と同じようにって、この人達は精霊を殺してきたのか。あのサラも殺そうというのか。

　タカオはその事実に驚愕していた。男は首に当てた腕の力を強めていった。

「ガラ！止めてよ！」

　ジェフは大きな声で首を締めている男の名を呼ぶ。けれど、そんな事で腕を離そうとはしない。

　タカオは何の抵抗もしないまま、気が遠くなりながら、それでも何故だか左目の違和感が気になっていた。

　サラに会う前に、葉から落ちた雫。それを受けた左目がまた熱くなる。その時、タカオと男の周りの空気だけが冷たくなった。まるで体の体温を奪われるかと思うほど、そこは冷気に覆われていた。

「なんだこれ……！」

ガラと呼ばれた男は異変に気が付くと、首を締めていた腕をゆるめる。

「何やってるの！！」

　そこへ、女性の声が廊下に響きわたった。声の主を見れば、ジェフの母親が食堂から出て仁王立ちの姿でこちらを見ていた。

「母ちゃん……」

　ジェフは安心したように呟いた。ジェフの母親から発せられる怒りの気迫に気が付くと、ガラはタカオから離れた。

　咳込みながら床に崩れ落ちるタカオの姿に、ガラは冷ややかな視線を送る。タカオを守るようにかばうジェフを睨みつけて、食堂とは逆の方向に去っていった。