契約の森 精霊の瞳を持つ者
5.
タカオは自分が入れそうな隙間を開けると、中に入り込んだ。倉庫の中は真っ暗で何も見えない。少し開けた扉からは強すぎる光が入り、倉庫の中は余計に暗い。
もしかしたら倒れているのかもしれない。タカオの胸に不安がよぎる。腰を低くして手探りで進んでゆく。
「大丈夫ですかー!」
せめて声を出してくれれば分かるのだろうが、返事は返ってこなかった。目は暗闇に慣れず、しばらくしても何も見えない。そのまま進むと、手の平には何かが当たった。
冷たくて、湿っている。タカオがそう思った時、置いた手の両側から青い光が現れた。それはロウソクの炎のように不安定に揺れた。
ゆらりと炎が揺れたかと思うと、2つの青い炎の先に同じような炎が揺らいだ。それはその炎の先にも現れ、次々と続いていく。まるで夜の滑走路の灯火のように、小さな炎の道ができていた。
青い炎は他にも次々とつき始め、タカオの足元には大きな青い炎が揺れていた。
驚いているヒマもなく、炎の道の先を見れば、黄金に輝く目玉が2つ輝いていた。青く美しい炎が倉庫を微かに明るくする。
タカオはやっと、目の前にいるものが何かを知ることができた。何処かから水の匂いもする。
ーーワニだ。
そう思いながら、ワニにしてはあまりにも大きすぎるとも思っていた。普通に立っているタカオと同じ目線に目玉があるのだ。
それに今は腹を地につけている状態だ。動きだせばもっと大きいはずだった。
タカオはワニのような動物の鼻先に手を置いたまま、しばらくその黄金の瞳から目が離せなかった。驚きの後にやってきたこの感情を、どう整理したらいいのだろうと考えていた。
それは、恐怖を感じないからだった。
青い炎の透明度、濁りのない黄金の瞳、タカオはそれをただ見つめていた。
外では人の走る音や、勇ましい叫び声で騒がしくなった。どこか、お祭りを思い出す。そんな気合のこもった熱気が近づいていた。そんな騒がしさに、ワニが目だけで扉の方を見つめた。その仕草はまるで迷惑そうだ。
つられてタカオも扉に顔を向けた。荒々しく扉を開けて倉庫に入って来たのはグリフだった。開け放たれた扉のおかげで太陽の光はタカオにも、ワニの体にも熱を投げかける。
真っ黒の室内に、扉の形を少し崩した四角い光がきっちりと落ちていた。ワニは迷惑そうに目を細めた。
グリフは驚いた顔のまま、倉庫の入り口で身動きひとつ取らない。
「目が覚めたのか。サラ」
タカオには、その言葉の意味は分からない。けれど、グリフの後から来た男達はその言葉の意味を分かっているようだった。みんながみんな、その顔を強張らせている。
もしかしたら倒れているのかもしれない。タカオの胸に不安がよぎる。腰を低くして手探りで進んでゆく。
「大丈夫ですかー!」
せめて声を出してくれれば分かるのだろうが、返事は返ってこなかった。目は暗闇に慣れず、しばらくしても何も見えない。そのまま進むと、手の平には何かが当たった。
冷たくて、湿っている。タカオがそう思った時、置いた手の両側から青い光が現れた。それはロウソクの炎のように不安定に揺れた。
ゆらりと炎が揺れたかと思うと、2つの青い炎の先に同じような炎が揺らいだ。それはその炎の先にも現れ、次々と続いていく。まるで夜の滑走路の灯火のように、小さな炎の道ができていた。
青い炎は他にも次々とつき始め、タカオの足元には大きな青い炎が揺れていた。
驚いているヒマもなく、炎の道の先を見れば、黄金に輝く目玉が2つ輝いていた。青く美しい炎が倉庫を微かに明るくする。
タカオはやっと、目の前にいるものが何かを知ることができた。何処かから水の匂いもする。
ーーワニだ。
そう思いながら、ワニにしてはあまりにも大きすぎるとも思っていた。普通に立っているタカオと同じ目線に目玉があるのだ。
それに今は腹を地につけている状態だ。動きだせばもっと大きいはずだった。
タカオはワニのような動物の鼻先に手を置いたまま、しばらくその黄金の瞳から目が離せなかった。驚きの後にやってきたこの感情を、どう整理したらいいのだろうと考えていた。
それは、恐怖を感じないからだった。
青い炎の透明度、濁りのない黄金の瞳、タカオはそれをただ見つめていた。
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