魔滅の戦士

やましゅん

抗う

森の中に入り、木に頭を打ち付ける。悪魔になったことにより強化された肉体のせいで木はすぐに折れる。それを見てまた自分が人間ではないと思い知らされる。悪魔となってしまったが、記憶は蘇っている。蘇らなければどれほど楽だっただろうか。戦士が自分を殺してくれる。
(そうだ。殺してもらえばいい。)
「天音さん!少し落ち着きましょう!」
椎名の声は耳に入ってこない。
「ごろぜ」
天音のその言葉で、椎名の中の何かがプツンと切れた。
「どれほど辛いか私には分かりません!ですが!記憶が戻っているのなら!その強大な力を人助けに使おうと思いませんか!?」
冷静さを失っていたが、大切なことに気付かされた。悪魔になっても、記憶は残った。
「もし!あなたが暴走するようなことをしたり!人を殺すような事があれば!」
椎名は大きく息を吸い込んで
「私があなたを切りますから!安心してください!」
続けて
「ですがこれは絶対にあってはならないこと!もしあなたが罪のない人を殺めるようなことをすれば!あなたを切った後に私も死ぬ!」
と、叫んだ。
「ありがとう。」
今までのひどい発音とは違い、綺麗な日本語だった。


悪魔となってしまった者を、戦士と名乗らせる訳には行かない。当然悪魔として、討伐対象に入る。ただし、記憶のあるものは特別待遇とする。だが、記憶があろうと悪魔ということに変わりはない。悪魔となって尚悪魔と戦う者は戦士ではなく、魔滅と呼ぶ。
魔滅は任務以外で街などの住宅街に入ることを禁ずる。
人を殺すような事があれば即刻処刑。当然だ。
現在魔滅と呼ばれる者は天音を含めて3人である。

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