魔滅の戦士

やましゅん

始祖

天音の剣技は悪魔の胸に大きな風穴を開けた。再生しない。倒した。
「ふう...」
一息ついて、納刀する。
初の任務は、見事達成された。
「天音さん!すごい剣技でした!」
椎名が待機していた場所から飛びだ出して来た。
「私もあんなふうになれるように頑張りま」
椎名の言葉が途切れる。自分の顔に何か付いていただろうか?あるいは...
「困るだろう。私の新たな兵士を殺すな。」
天音の背後には仮面を付けた大柄の男が立っていた。
(感じたことの無い不気味な気配。さっき殺した悪魔より数段...いや、それ以上か。とにかくやばい!)
「椎名!逃げろ!」
「逃がすわけ無いだろう。」
仮面の男はそう言うと椎名に向かって手を伸ばす。
(させない!)
天音は男の腕を切ろうとした。
(いない!どこだ!)
「捕まえたぞ。人間。」
動きが見えない。椎名は仮面の男に捕えられてしまった。
「お前がさっき殺した奴はなかなか筋が良かったから期待していたのだがな。さて、奴の代わりにお前が悪魔になるか?そうすればこの娘は解放してやろう。」
「言っている意味がわからない。お前は何者なんだ!」
仮面の男はクスクスと笑い、
「私は始祖の悪魔だ。」


始祖の悪魔。この世で生まれた一番最初の悪魔。なぜ生まれたのか。本人にしか分からない。一般的には悪魔の体液が血管に侵入すると悪魔になると言われているが、実際に悪魔を増やすことが出来るのは始祖の悪魔しかいない。このことは戦士しか知らない。何故か、一般人には伝えられていない。


(始祖...!こいつが妹達を殺した張本人!)
男の発言が終わると同時に天音は斬り掛かる。
「話を聞かない奴は嫌いだ。私はお前を殺しに来たわけではない。」
男は天音の背後に移動している。
「お前を悪魔にしに来たのだ。」
(寒気がする。嫌な予感が直感に変わった!全身の産毛に至るまでこいつから逃げろと言っている感じがする...)
「お前はなかなかいい戦士だ。駆け出しとは思えんな。」
(逃げられるのか...?こいつから。)
男の動きを目で追えていない。
「私は臆病者だからね、恐怖の芽は早めに詰んでおくのだよ。」
鈍い音がした。
「これでもう逃げようとすることも出来ない。お前を悪魔にした後、この娘も悪魔にする。」
腹部を貫かれ、仮面の男の手は壁に刺さっている。
「はっ!」
突如仮面の男の手が切られる。
仮面の男のもう片方の手に捕えられていた椎名が開放された。
だが、壁に刺さっている手は抜けずに、再生する。
「ヒーローは遅れてやってくるのさ!」
仮面の男の手を斬ったのは、台風だ。

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