オタク気質が災いしてお妃候補になりました

森の木

5-10 兆し



 アリーシアはエドワードと話し、お妃候補になることを決心した。
 その決意を兄と父にそのことを伝えた。お妃候補にはなるが、さらに勉強をして、お妃として似つかわしくないと思えば辞退もするつもりであること。父も兄もアリーシアの真剣な眼差しに、意思を尊重してくれた。
 しかしそんな決心をしたつもりでも、あとから後悔をしてしまう瞬間がある。寝室へ行き、寝る前は特に落ち込んできて、先のことを思うと少し憂鬱になる。ウジウジしても仕方ないのもわかっているが、そんなに感情は簡単には割り切れないのだ。
 アリーシアはお妃候補として決めたことで、国の伝統や、慣習をもっと学ぶ必要があるとも知った。正式にお妃候補として発表されるのは、サラ様の出産と同時期になることになった。ほかの候補者はまだアリーシアは知らない。
 今はサラ様の出産に合わせて、アトリエAでは国王に献上する本の制作にかかりきりになった。ほかにはアリーシアはサンパウロ基金を運営するべく、小さな事務所を作ることになった。母の仕事場の隣に部屋を作り、女性の事務員を雇うことにした。その面接などもあり、忙しさが続いていた。








 そうして、暑い季節が近づいてきた。
 昨晩から国中は緊張があった。サラ様の容態が変化したという話が伝わってきた。サラ様は体が弱いのもあり、無事子どもが生まれるか心配ではあった。子どもが無事に生まれれば、エドワードに新しい味方ができるということだ。エドワードも大変心配しているだろう。


 そして数日後、城は大きな喜びに包まれた。
 サラ様は女の子をうんだ。赤い髪、そして金の瞳である王位継承の色を帯びた女の子だ。サラ様も大変なお産ではあったが、安定した様子であるという。国中は花が飾られ、大通りにも国旗が掲げられた。
 サラ様の容態が落ち着き、王女が外に出ることが可能になったならば、お披露目の儀が行われる。
 アリーシアは、同時期にお妃候補として正式に内定し、アトリエAとしては王女のお祝いに本を寄贈する。王女がうまれたことを記念して、絵本をいくつかの孤児院へ寄付する試みもある。まさにアリーシアの考えた本は、王女の誕生とリンクして、このあとも歴史に残っていく前触れとなってきた。


 アリーシアは、エドワードと秘密裏に話すことが多くなってきた。もちろん木の上である。エドワードがくるのはいつも突然であるが、アリーシアの一日の動きを知っているのか、大体ジャンが部屋の前にメモを置いていくのだ。ジャンはかなり優秀なスパイのような、身軽で予測不可能な行動をする。ジャンの実家の南の貴族の子爵については、ほかの地方のことなので詳しくはしらない。しかしエドワードの従者になるくらいだから、特殊な能力を買われたのだろう。合図のメモがあると、アリーシアは木の上に行くことにする。


「エドワード、そんなに城を抜け出していいの? 」


「問題ないだろう、最低限の仕事はしてきてから来ている」


アリーシアは木の上で待っていたエドワードに小言を並べる。


「今は、王女様がおうまれになったのでお城は忙しいでしょう。エドワードも式典などあるから忙しくはないの? 」


「そこそこな。それよりも、王女がとてもかわいい」


「王女様、サラ様に似ているの? 」


「雰囲気は母上だな、目の色や髪の毛は父上似。あれは将来絶世の美姫になるだろう」


「もう立派なブラコンね。わたしもアポロがうまれたとき、とても嬉しかったわ。新しい家族が増えることは嬉しいわよね」


「そうだな。将来王として恥じないようにという自覚はあるが、兄として、妹に恥じないようにという気が引き締まる思いだ」


「なんだか、父親になった気分ね」


「年齢を考えれば、俺の年齢で親になる人もいるからな」


「そうね。早くに結婚して、子どももできる人もいるから」


アリーシアの言葉にエドワードもうなずいた。そして少し間を置く。




「…………………話はかわるが。お妃候補のことだ」


「候補者が決まったのかしら? 」


「予想していた通りだ。大臣の娘、そして4貴族からそれぞれ一名ずつ候補者がでることになった。そしてアリーシア」


「そう……………。4貴族は侯爵の娘かしら? 」


「そうだ。みなアリーシアと同じで、直系の娘が候補として決まった」


「それでは、4貴族の令嬢は王都にくるのかしら? 」


「そのことなんだが……………」


 エドワードはお妃候補について、今後のことを話し始めた。
 アリーシアは16歳で寄宿舎に行くことになったが、エドワードもそこへ入ることになった。男女は別であるので、決まった催しなどは一緒だが、基本的に生活は男女別である。しかしアリーシアはエドワードの話から、事態は難しい方へ転がっていくことになったとことが感じられた。


 なんと大臣の娘、そして4貴族の娘。全員が同時期に寄宿舎へ入ることになる。それぞれの世代が国を担うのだから、交流を深め、学友として学べばさらに互いのことがわかるだろうという意図だった。そこでエドワードが令嬢達を見定め、あらゆる観点から総合的にお妃候補からお妃を内定することが考えられているという。アリーシアは寄宿舎へは、ただ単純に学びに行く予定だったが、そこでお妃候補としてのバトルが始まる予感がして内心不安になってきた。ほかのお妃候補の令嬢とも付き合っていかければならない。
 アリーシアは新しいいくつもの兆しに、めまいを感じるのだった。



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