オタク気質が災いしてお妃候補になりました

森の木

4-9 アトリエA

 兄に新しい工房について話してから、少したってから印刷工房との連携を見直すことになった。
 アリーシアは出来れば本を企画する工房を作るとしたら、慣れたメンバーがいいと思った。そうなれば、テトとザッカスがいてくれた方がいい。
 兄に頼み、東の地域で印刷関係に詳しい職人がいないかとピエールと話し合った。ピエールの工房には、印刷に詳しい職人が複数いる。その人達が技術の向上を補佐してくれることになった。また女性達を取りまとめる役として、母の事務を手伝っていた令嬢が工房の補佐として責任者となった。マリアが責任者を務める孤児院の事務局で働いている女性も派遣され、印刷工房は徐々に形となってきた。
 そうなれば、テトやザッカスたちの出番は少なくなる。専門性が増してくると、専門の技術者の方が段取りなど、もっと高度でありながら、迅速な対応をしてくれる。テトとザッカスはお役御免となり、アランはピエールを通じて、新しい仕事をテトに依頼した。アリーシアとアランが夕飯で話し合った絵本を企画する工房を作る計画だ。印刷をした本をアランが販売を手がけることになった。それの売り上げ次第だが、次の本を作る計画を練ることが新しい工房の仕事だ。
 テトは印刷工房の仕事が終わって、矢継ぎ早に仕事が舞い込んできたことに驚いていたようだ。テトは、その依頼がアリーシアの兄からということもあって、何か感じたに違いない。何も言わなかった。ザッカスのほうも、本業は詩人だったり作家だったりしているので、企画する工房というのは面白いと感じたようだった。レインはとにかく面白そうな内容だと笑っていた。


「今日で、印刷工房から移動だね」


「レインさんお手伝いありがとうございました。また次の工房もお願いします」


 印刷工房の次の新しい工房を作ることになり、レインとテトとアリーシアは屋敷から持ってきた飲み物とお菓子を食べて、話をする機会があった。ザッカスは用事があり欠席だ。
 アリーシアも色々案を考えて提案はするが、実際動くのは現場の人であり、テトたちのように専門的な知識がある人がいなくては何もできない。


「新しい工房を作るって聞いたときは驚いたけれど。アランくんは優秀だから、何か考えがあるんだろうなと思ったよ。わたしはよくわからないけれど、テトやザッカスがいるからどうにかなるかなって思っているよ。もちろんアリーシアもね! 」


「はい、アラン様の手際のよさには驚きました。あっという間に工房が効率よく運営できるようになりましたし、本当に頭がよい方なのですね」


「アランくんは昔から賢い子だったよ。アリーシアも自慢でしょう? 」


「うん。とっても」


「あはは、でも印刷工場の次の仕事をどうしようかって話を聞いていたから。いいタイミングだなと思ったよ。アリーシアがアランくんに話してくれたの? 」


「え? 」


レインは本当に察しがいい。余計なことをしただろうかと今更ながらためらってしまった。


「ええ、わたしがお兄様に相談しました。テトに話をせず決まってしまってごめんなさい」


「いえいえ。この話がきたときに、アリーシア様が根回しをしてくれたのはなんとなくわかっていました。ザッカスも工房が出来たとしても、次の仕事がなければ、意味がないと言ってました。当面は印刷技術を学ぶことですが、実践する場がないことには、何も上達できないですからね」


「ありがとう。そう言ってもらえて少し安心したわ」


「アリーシアは黙っているから、もっとわたしたちにお話してくれていいのよ?頼りない? 」


レインが少し心配そうにアリーシアに視線を向けた。アリーシアは慌てて首を振る。


「そんなことはないの。でも、わたしはまだ子どもだから。大人のことに口を出して良いのか、どこまで口を出して良いのかわからなくて」


「そんなこと?駄目なら駄目っていうから、気にしなくていいのに。ねえ、テト? 」


 同意を求めるようにテトに問いかけるレイン。テトも頷いて同意をする。


「そうですね。全部が出来るかどうかは別として。ここまで来たらみなさんを一緒の仕事仲間と思わせてもらっています。アリーシア様は鋭いことをおっしゃいますから、参考になりますよ。自分では考えられない角度で物事をお考えになりますから」


「テト、ありがとう」


 二人をそれぞれ見ると優しい笑顔を向けてくれるので、アリーシアは泣きそうになる。


 自分のやっていることは果たしていいことなのか?そういう不安は常にある。認めてくれる人がいることは、とても嬉しい。
 アリーシアたちはお菓子を食べ、語り合った。これからの新しい工房について、お互いに意見交換をした。それぞれが違う環境で生きているので、とても勉強になる時間だった。そして印刷工房から新しい工房へ移る。その工房はアランが出資していることもあって『アトリエ Aエー』と名付けることになる。新しい工房は、新しい活動を広げていくのである



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