オタク気質が災いしてお妃候補になりました

森の木

4-6 ドレスの新調



 アリーシアは、当家専属の仕立屋を呼んだ。社交界デビューのドレスを新調するため、打ち合わせを始めるのだ。当家専属の仕立屋は、国で長年大きなアトリエを持っている。侯爵家の服は、ほぼこの仕立屋に頼んでいる。母・リリアは華美なものより、実用的なデザインを好むため、仕立屋からしたら少し不満もあるみたいだ。
 今日は久々にアリーシアの定期検診も兼ねて、遊びに来た当家専属女医・マリアンナとゆっくりお茶を飲みながらドレスを新調するために打ち合わせをしていた。
マリアンナも当家とはつきあいが長いので、侯爵家はどういうドレスをしてきたかなど記憶があるので、今の流行を考えながらも、侯爵家にふさわしいデザインなどを考慮したドレスを一緒に考えていた。


「アリーシア様は、お肌が白くてやわらかそうな雰囲気ですから、淡い色味のドレスはいかがでしょうか」


仕立屋のローランは淡い色をした光沢のある布をアリーシアの肩に合わせた。


「どう思う?マリアンナ」


当て布をされたアリーシアは鏡で自分の姿を見てから、ソファでゆったりとお茶を飲むマリアンナを振り返る。


「ええ、ええ。とっても可愛らしいですわ。アリーシア様のピンクの頬と同じで、とても可憐ですわね」


「ありがとう。ピンクも素敵ね」


「そうでしょう?ピンクはやはりどのご令嬢様も気になられているお色ですわね」


 ローランはクラシックなドレスを好むようで、デザインもスタンダードで王道のデザインをすすめてくる。


「そうね、赤や白はエドワード様が身につけられるだろうから、みんなそれ以外を選びそう」


 アリーシアは一緒にデビューの発表をするらしいエドワードとかぶる色は嫌だと思った。一緒に並ぶ機会があったら、ペアルックのようになってしまったら嫌だし、全然関係なさそうな色を選びたいと思った。


「ブルーも素敵だと思いますわ。深いブルーもございますし、ロイヤルブルーもお肌に映えますわ」


「まあまあ、素敵ですわ」


ローランがブルーの色の布を何枚か取り出すと、アリーシアに見せる。それをマリアンナは見ると、楽しそうに笑みを浮かべた。


「そうね、マリアンナから頂いたドレスもブルーでとても素敵だったわ」


 アリーシアはマリアンナのドレスを思い出した。実は袖を破かれたドレスは、ローランに見せたら時間をかければ直せると言われた。時間はどのくらいかかってもということで、無事に直してもらったのだ。それはまた誰かにきてもらうがあるかもしれない。今は保存してある。
 アリーシアはどの色にしようかと考えながら、窓の外を見つめ中庭を眺める。青々とした緑が目に入る。


「グリーン………。ローラン、グリーンはどうかしら? 」


「グリーンですか。ちょっと生地があるか見てみますわね」


 いつもアリーシアが落ち込んだときや、気分転換になるのは中庭だ。その緑にはとても癒やされ、力をもらっている。14歳の社交界のデビューは、実は怖くもあるのだ。将来についてまだ考えられないアリーシア。変化していくだろう周りの反応に、不安も大きい。そんな時は中庭のグリーンに力をもらえるよう、ドレスはグリーンがいいかもしれないと考えた。


「アリーシア様、こちらのお色はいかがでしょうか」


 コバルトグリーンの生地を取り出したローラン。はっきりとしているが、主張しすぎない、そして相手に明るさと、柔らかさも印象づけることができる。そんな色味に感じられた。


「わたしはこの色、好きだわ」


「ええ、お似合いですわ。お肌にも合うでしょうね、可愛らしいドレスもいいですが、エレガントさもあるドレスになりそうですわ」


 仕立屋ローランはアイディアを思いついたらしく、紙にさっさとドレスのイメージを書き留めていく。アリーシアはアポロまではいかなくても、やわらかい髪質であるので、簡単に髪の毛を巻けば、ふわっとした仕上がりの髪型にもできる。


「アリーシア様の雰囲気を残して、シフォン素材を使って胸元から肩にかけて可憐さを。袖はどうしましょうか。小さく膨らんだものが流行の形になりますから、取り入れてみましょうか」


「デザインには特にこだわりはないわ。お母様にも自由にしていいと承っています。マリアンナに見てもらえば、いいのではないかと」


 ローランはアリーシアに問いかけるも、アリーシアもドレスの流行などはうといのでよくわからない。流行は仕立屋のローランに任せ、押さえるべきポイントはマリアンナに指摘してもらえばいいと考えていた。


「あとは、エドワード様とあまりかぶらない色味や形がいいかなと思っています。主役はエドワード様ですから」


「女性は社交界の華ですわ、殿方より可憐に華やかにご令嬢は着飾って参りますわ」


 ローランはあまり派手を好まないアリーシアにも、少し残念そうにしながらも、もっときらびやかにしてもと考えているようだ。


「ええ、派手なのは恥ずかしいけれど。社交界デビューに恥ずかしくない衣装でいることが大切だから、地味すぎず、派手すぎず」


「アリーシア様は奥ゆかしいですわ」


 ローランはいくつか衣装の提案をするつもりで、アリーシアが選んだ生地をもとに衣装を考えるということになった。衣装のデザインが決まれば、仮縫いなどで何度かまた打ち合わせがある。
 マリアンナはアリーシアとローランが話している姿を眺めながら、午後のお茶のひとときを楽しみ、一日が過ぎていった。



「オタク気質が災いしてお妃候補になりました」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く