オタク気質が災いしてお妃候補になりました

森の木

2-1 誕生



 アリーシアは固唾の飲んだ。部屋は静まりかえっている。目の前にいる父も落ち着きなく、ソファに座ってみたり、また少し時間がたつと立ち上がり、また座る。何かと落ち着かない。アリーシアの隣にいる兄・アランも真面目な顔で沈黙のみだ。


 家中が静まりかえっていた。


 この静けさがどのくらい続くのだろう、アリーシアはそっと兄の手を握った。兄はアリーシアの不安を感じ取ったのだろう。自分もきっと不安だろうに、優しくアリーシアにほほえみかけた。アリーシアは自分も不安だったが、小さくほほえみかえし頷いた。


 今はただ待つことのみ。


 バタバタ…………


 メイドの走る足音が聞こえる。隣接する母の寝室では、昨晩から産気づいた母がいる。その傍にはマリアンナと助手がお産を手伝っている。兄とアリーシアは安産であったため、時間はそれほどかからなかった。でも今回は予定より時間がかかっている。


 アリーシアは、新しい家族が増えることで、幸せが増えることを信じていた。お父様もお母様もお兄様も大好きだから、きっとこの家族に産まれてきたら幸せだから――――無事に生まれてほしい。


 この世界にはたくさんの神がいて、アリーシアの家系も一応信仰しているらしい宗教もあるようだ。ただ緩いつながりであるので、それほど暮らしには関わりがない。


 でもこんな時には神に祈るしかないという心境だ。
 ただ、時間がたち物事がいい方へいくことを祈るしか出来ない。
 どんな強い父であっても、これはどうすることも出来ない。
 どんな賢い兄であっても、これはどうすることも出来ない。
 アリーシアも、どうすることもできない。
  

 今は母と赤ちゃんを信じようと思った。


  緊迫した状況が続いて、また再びバタバタと足音が聞こえた。


 小さく泣き声聞こえてきた。部屋で待機していたものたちが顔を上げる。そして父はばっと立ち上がった。


「おめでとうございます。ご子息です! 」


 お産を手伝っていたメイドが入ってきた。メイドはまだ若いのだろうか、生命の神秘をみたため目には涙がにじんでいる。


「奥様も、お子様もお元気です」


「リリア! 」


 父はメイドの横をすり抜け、母の待つ部屋に飛んでいった。アリーシアは兄と顔を見合わせほほえんだ。


 メイドに連れられ、少し落ち着いた母のもとへ通されるとお産で疲れた母の顔があった。とても疲れたようだが意識ははっきりしていて、優しい顔をしていた。


「お母様、赤ちゃんは? 」


「ええ、元気よ。見てちょうだい」


 母に言われると、皆に囲まれているだろう赤ちゃんを見ようとした。父の背中に隠れて見えない。父が赤ちゃんをだっこしているらしいが、その様子は頬ずりをし出す勢いだ。


「アリーシア、弟だぞ」


 父の背中でうろうろしていたのを気がついて、アリーシアの目の前に赤ちゃんを見せた。アリーシアは目をまん丸に見開いた。


 赤ちゃんは文字通り、真っ赤で、とても大きかったのだ。赤ちゃんは小さい印象だけれど、この赤ちゃんは大きい。骨格が違う。文字通りパパ似の赤ちゃんだった。野獣のような顔ではないが、体格は間違いなく父似。しかし髪の毛の色は金髪だった。


 アリーシアは言い様のない喜びに包まれた。これから家族になる赤ちゃん。小さいけれどビッグベイビーで。マイペースなのか、なかなか外に出てこないで。どんな弟になるのだろう。


 でも―――――とアリーシアは思った。
 オタクの話題を一緒にできるように、たくさんサンパウロ様のお話をしてあげよう。それを心に刻んだ。



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