オタク気質が災いしてお妃候補になりました
1-11 ガーデンパーティー3
英雄サンパウロの像は、威厳があり、とてもかっこいい。中庭の中心部にある噴水の傍にそびえ立つその像は、400年たっても我が家を見守ってくれている。
ガーデンパーティーと言っても、気疲れはするし全然楽しくなかった。きれいな服を着るのは楽しかったが、人前で緊張しながらご飯を食べたりするのも疲れる。自分一人で食べるご飯はおいしいのに、接待で食べるご飯がそれほどおいしいと感じないのと同じだろう。子どもながらこういう社交の場に出なくてはならないなんて、貴族というのも難儀なものだなと思った。
そういう意味で庶民は楽かもしれない。人に見られての生活は案外面倒だなと感じた。ここはサンパウロ様の像を見ながら、空想と妄想の世界へ飛んでいきたい。
近くにあったベンチに腰をおろし、噴水から聞こえる水音に耳を傾けながら、目をゆっくり閉じた。
「おい! 」
今日の妄想は、サンパウロ様が初めて王と出会い、国の行く末を案じる場面をメインにしよう。
「おい、聞いてるのか? 」
サンパウロ様は荒野で育ち、後の王とこれからのことを語っていたのだ。
「金髪の、ぼろい服きてる女! 」
「……………………」
先ほどから、何かが近くにいたのは察した。だがそんなことよりも、妄想の時間こそが大事なのだ。レディに「おい !」なんて声をかける不届きものなど頭から削除している。しかも、ぼろい服ってとても失礼なやつだなと思った。今は休憩の時。目はつぶっているし知らないふり。
「おい! 」
無視を続けるアリーシアにしびれを切らして、肩を思いっきり揺すってきた。さすがにびっくりして目を開けた。目の前にいたのは、あの赤髪の傲慢そうな少年だった。何か用があるのだろうか。苦手意識をもつと、どうも好意的に思えない。
「何でしょうか」
最低限の挨拶は済ませたので、まだこれ以上何かあるのだろうか?と明らかに歓迎していない声色で切り返す。
少年はアリーシアの様子にさらにムッとしたようだ。
「お前ごとき、父上に挨拶をするのなんか不釣り合いだ。母親が男爵風情で。身分が低いじゃないか。だからこんなぼろい服を着ているのか! 」
とても失礼なことを連発してきたが、母親のことだけでなく、マリアンナのくれた服をバカにするなんて、アリーシアのなかでは赤髪小僧は敵判定された。どうせこういう連中を相手にしても、意味がない。 言いたいだけなのだから。
「言いたいのはそれだけですか? 」
これ以上関わっても仕方ない。せっかくのサンパウロ様の像の前なのに、こいつのせいで最悪な空気になってしまった。
少年はアリーシアが全然動揺していないのに、さらにイライラした様子を見せた。アリーシアもこの場から離れたかった。話しても平行線に違いない。アリーシアが単なる貴族のお姫様だったら泣き出していたかもしれない。でも聞かないふりをできるのが、大人のスキルだ。
すっと少年の横を通り過ぎようとベンチから離れ、歩き出そうとする。赤髪小僧はまだ何かいいたそうだ。不意にアリーシアを引き読めようと手を伸ばす。しかしアリーシアの歩みが早かったようだ。その手はなんとアリーシアの袖をつかんだ。
慌てたのはエドワードだった。掴もうとした腕ではなく、袖を引っ張ってしまったからだ。ぐいっとエドワードは変に力をこめてしまった。
ビリッ!!
何かが裂ける音がした。エドワードは手にした袖を持ち上げる。アリーシアはドレスを見た。ドレスの袖が破れていた。肩があらわになる。
アリーシアは最初なんのことかわからなかった。相手が力任せに引っ張ったところまではわかった。それから布が破れる音がした。糸が引き裂かれる音、肩から腕にかけて素肌が出てしまった。
アリーシアは目の前のことに一瞬理解できなくなった。そしてわき上がる気持ちが抑えきれなく、思わず少年の頬を思い切り殴ってしまった。
殴られた少年は驚いた。顔面にむかって少女がグーでパンチしてきたのだ。鼻がつぶされるかとおもった。そして目の前の少女の目には涙が光っていた。自分を睨み付けると、破れた袖を引き寄せ、素肌を隠しながら走って行ってしまった。
そこに主人を探しにきたジャンがきた。
「エドワード様…………なんで鼻血が出ているのですか? 」
呆然した様子で、情けなく鼻血をだした公爵の息子・エドワード。声をかけられたが、気の抜けた顔でジャンを見返すだけで精一杯だった。
ガーデンパーティーと言っても、気疲れはするし全然楽しくなかった。きれいな服を着るのは楽しかったが、人前で緊張しながらご飯を食べたりするのも疲れる。自分一人で食べるご飯はおいしいのに、接待で食べるご飯がそれほどおいしいと感じないのと同じだろう。子どもながらこういう社交の場に出なくてはならないなんて、貴族というのも難儀なものだなと思った。
そういう意味で庶民は楽かもしれない。人に見られての生活は案外面倒だなと感じた。ここはサンパウロ様の像を見ながら、空想と妄想の世界へ飛んでいきたい。
近くにあったベンチに腰をおろし、噴水から聞こえる水音に耳を傾けながら、目をゆっくり閉じた。
「おい! 」
今日の妄想は、サンパウロ様が初めて王と出会い、国の行く末を案じる場面をメインにしよう。
「おい、聞いてるのか? 」
サンパウロ様は荒野で育ち、後の王とこれからのことを語っていたのだ。
「金髪の、ぼろい服きてる女! 」
「……………………」
先ほどから、何かが近くにいたのは察した。だがそんなことよりも、妄想の時間こそが大事なのだ。レディに「おい !」なんて声をかける不届きものなど頭から削除している。しかも、ぼろい服ってとても失礼なやつだなと思った。今は休憩の時。目はつぶっているし知らないふり。
「おい! 」
無視を続けるアリーシアにしびれを切らして、肩を思いっきり揺すってきた。さすがにびっくりして目を開けた。目の前にいたのは、あの赤髪の傲慢そうな少年だった。何か用があるのだろうか。苦手意識をもつと、どうも好意的に思えない。
「何でしょうか」
最低限の挨拶は済ませたので、まだこれ以上何かあるのだろうか?と明らかに歓迎していない声色で切り返す。
少年はアリーシアの様子にさらにムッとしたようだ。
「お前ごとき、父上に挨拶をするのなんか不釣り合いだ。母親が男爵風情で。身分が低いじゃないか。だからこんなぼろい服を着ているのか! 」
とても失礼なことを連発してきたが、母親のことだけでなく、マリアンナのくれた服をバカにするなんて、アリーシアのなかでは赤髪小僧は敵判定された。どうせこういう連中を相手にしても、意味がない。 言いたいだけなのだから。
「言いたいのはそれだけですか? 」
これ以上関わっても仕方ない。せっかくのサンパウロ様の像の前なのに、こいつのせいで最悪な空気になってしまった。
少年はアリーシアが全然動揺していないのに、さらにイライラした様子を見せた。アリーシアもこの場から離れたかった。話しても平行線に違いない。アリーシアが単なる貴族のお姫様だったら泣き出していたかもしれない。でも聞かないふりをできるのが、大人のスキルだ。
すっと少年の横を通り過ぎようとベンチから離れ、歩き出そうとする。赤髪小僧はまだ何かいいたそうだ。不意にアリーシアを引き読めようと手を伸ばす。しかしアリーシアの歩みが早かったようだ。その手はなんとアリーシアの袖をつかんだ。
慌てたのはエドワードだった。掴もうとした腕ではなく、袖を引っ張ってしまったからだ。ぐいっとエドワードは変に力をこめてしまった。
ビリッ!!
何かが裂ける音がした。エドワードは手にした袖を持ち上げる。アリーシアはドレスを見た。ドレスの袖が破れていた。肩があらわになる。
アリーシアは最初なんのことかわからなかった。相手が力任せに引っ張ったところまではわかった。それから布が破れる音がした。糸が引き裂かれる音、肩から腕にかけて素肌が出てしまった。
アリーシアは目の前のことに一瞬理解できなくなった。そしてわき上がる気持ちが抑えきれなく、思わず少年の頬を思い切り殴ってしまった。
殴られた少年は驚いた。顔面にむかって少女がグーでパンチしてきたのだ。鼻がつぶされるかとおもった。そして目の前の少女の目には涙が光っていた。自分を睨み付けると、破れた袖を引き寄せ、素肌を隠しながら走って行ってしまった。
そこに主人を探しにきたジャンがきた。
「エドワード様…………なんで鼻血が出ているのですか? 」
呆然した様子で、情けなく鼻血をだした公爵の息子・エドワード。声をかけられたが、気の抜けた顔でジャンを見返すだけで精一杯だった。
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