神眼の転生者

ノベルバユーザー290685

第16話「表彰と出立」

 実のことを言うと、俺はレベルアップに制限をかけていた。レベルが上がるのに必要な経験値を蓄積し、ジャンプアップを狙っていたわけだ。
 今回かけた縛りは1度にLv100に上がるまで経験値を蓄積する、だった。
 その結果はこうだ。


 黒河誠 Lv.100(4up)
 種族:人間 性別:男
 年齢:18歳


 魔剣士(基礎ステータス)
 HP:39,000/39,000(1,520up)
 MP:1,680,000/2,050,000(76,000up)
 筋力:3,100(120up)
 体力:1010(36up)
 魔力:53,500(1,940up)
 精神力:110,000(4,000up)
 敏捷力:2,200(80up)


 称号
 救世主(new!)
【多くの人々を危機から救ったものに与えられる称号。拠点の防衛時において戦力にボーナスが与えられる】


 ふむ、やっぱり物理よりは魔法系の方がステータスの上がりがいいな。魔弾という選択肢はなかなか良かったのかも知れん。
 まずまずの上がりを見せたステータスに満足しつつ、レベルアップ抑制をOFFにする。微妙な数字だったのが気に食わなかっただけなので、今後は使うことも無い機能な気がする。


「とりあえず……戻るか、リオンを迎えに行かなきゃな」


 そう呟き俺はアリアの入口へと向かった。


「ん……?」


 地下への扉を開け、その中に飛び降りた俺の目には先日の2人だけでなく、その2人よりは偉そうな奴が1人いた。見た感じ上司なんだろうな、と思いつつ俺は2人の方に声を掛けた。


「倒してきたぞ、開けてくれ」


「お、おう、分かっ──」


「──待ってもらおう……いや、待ってくれないか」


 片方の声を遮り、2人の上司っぽい奴が声を掛けてきた。本心としてはとても関わりたくないのだが、相手はそう思ってくれないのは明白なので大人しく相手をする事にした。


「なんだ?俺になにか用か?ツレを待たせてるから手短に頼むよ」


 相手をするのは不本意だという態度を隠しもしない俺に、男は気を悪くすることもなく頭を下げてきた。


「すまない、時間を取らせることになると思うが我らの王に謁見して欲しい。身内の方も一緒でいいので来ていただけないだろうか」


「行くこと自体には問題は無いと思うんだが、その理由は?」


「まさか、分からないと言われるのか?あの魔獣からこのアリアを救ってくれたではないか。その事に関して礼をせねばならぬと、王は申しておられる」


 あぁ、はいはい、なるほどね。


「めんどくせー……それ、どうしても行かなきゃダメか?」


 男は無言で頷いた。それを見て俺はガックリと肩を落としたのだった。




 その後、避難所に案内してもらいハインリヒとリオンと再開した俺は、よく分からんが王と謁見する事になった事を説明した。
 2人がその事に驚いた後、ハインリヒは避難所の入口で事務員と話終わり、こちらに近づいてきた男を見て少なくない驚愕をその顔に浮かべた。


「オルガ大臣?!」


 オルガっていうのか、偉そうな男って表現するのも面倒になって来てたところだ。ちょうどよく名前を知れてよかった。


「えっと、オルガ大臣?今回の話ってここを守ったことについての話だよな?」


「その通りだ、マコト殿。それがどうかしたのかな?」


「じゃあハインリヒも連れてくから、一応関係者だ」


「は?!何言ってんだマコト、俺は関係ないだろ!」


「いやある。オルガ大臣、俺がさっき戦うのに使った武器は全部このハインリヒの作でな、コイツにも礼を受ける権利があると俺は思ってる。構わないだろうか」


「いいのではないか、そこも含め王と話して欲しい」


「話が早くて助かる、そういうわけだから、行くぞ二人とも」


 しばらくゴネていたハインリヒだが、やがて諦めたのか同行に同意した。






「あんまり王の住処って、イメージじゃないな。地下都市だから仕方の無いことではあると思うけど」






 それが┃王の住処そこを見て初めに出た一言だった。その建物は確かに周囲のものに比べれば一回り立派な感じではあったが、いかんせん無骨で実際的システマチックな印象は拭えない外見だった。
 城と言うよりかは砦と言った方がイメージの近いような外見。そもそもの都市構造からして、外敵からはシェルターを用いて防護するらしいことは戦闘前のアナウンスで分かっているのでそんなに違和感は無かったけどな。
 この階層に降りる間にオルガから聞いた話では、アリアの王は自分の地位を誇示するような事はあまり好まず、国民との関わりを大事にする精神性の持ち主だという事らしい。
 王と言うよりかは大統領、そう評するほうが自然なのではないだろうか。統治者ではなく代表者、そういうイメージだ。これは俺個人の勝手な感想だけどな。


 それはさておき、俺たちはオルガの先導に従って王の住処に入り、謁見の間にて王と顔を合わせた。


「君が魔獣を討伐してくれた者だな、私はこのアリアの王……と言っても名ばかりだがね。名前はリバティ=アリアだ。改めてお礼を言わせて欲しい、この都市を救ってくれて本当にありがとう」


 そう言って頭を下げるリバティ、顔を合わせるなりお礼を言って頭を下げる、しかも高慢な感じが全く無いのがこの王の人柄の良さを感じさせる。年の頃は40後半といったところか、まだまだ若さを感じさせる佇まいだ。


 閑話休題。


「えっと……どういたしまして、でいいのかな?その前に顔を上げて欲しいんだけど……名ばかりとは言え王様なんだろ?」


 頭を下げっぱなしの王を放置するわけにもいかず慌てて声を掛ける俺、目に見えてあたふたするハインリヒ、王が頭を下げるという光景に声が出ないリオン、頭痛を抑えるかのように頭に手をやるオルガ、そして俺の言葉を聞き頭を上げる王リバティ。


 なんだこれ。






 結局、魔獣討伐の謝礼として150万ゴルとアリアに自由に訪れる権利を貰い、王の願いである表彰を都市内放送で行った。


 その後、一応ではあるが王に戦争の件を説明し、近々アリアを出ることを告げた。


 勇者召喚と戦争の話を聞いたリバティは難しげな顔をして「ままならぬものだな」とだけ言っていた。


 そうそう、ハインリヒの銃のおかげだと言うことをリバティに話したら、ハインリヒの店を救国の英雄御用達の店として発表しようと提案を貰ったが、ハインリヒが顔を青くして辞退したのでハインリヒにも100万ゴルの謝礼が支払われた。違う意味で顔を青くしてたが当然の権利だと俺に主張され大人しく受け取る流れとなった。




 2日後、俺とリオンはハインリヒの見送りを受けアリアを立った。次の目的地は例の勇者召喚を行った国─────


 …………あの、ウィズさんすいません。なんて国だっけ?


 《……》


 あれ?おーいウィズさーん……?


 《…………プライディアです、マスター》


 なんか声が冷たいっていうか怒ってらっしゃる……!最近全然話してなかったからだー!?
 あの、ウィズさん?すいませんでしたホント謝るんで許してほしいです。


 《いえ、私は怒ってなどいません。マスターがあまり話していないのを気にしているからそう感じるのではないでしょうか》


 いや、あの……もっと話すんで許してください……


 《まあ、別に怒ってなどいないので構いませんが。可能ならもう少し話してほしいものですね。マスター?》


 はい、すいませんでした。以後気をつけます。




 と、いうわけでプライディアに向かうことにした。


「リオン、行くぞ」
「はい、マコトさん」


 リオンに語りかけ都合10日の移動を開始した。

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