英雄は愛しい女神に跪く
女神のサービス
「じゃあ、転生する前にサービスを渡すね」
「サービス?」
「まずは君たちの生前のスペックはそのまま固有スキルにしちゃうね」
「おい、固有スキルってなんだ?」
エレクシアルには、自信の能力を数値化したり、スキルと言うものを取得し、才能を伸ばすことが出来るらしい。
鍛練次第で取得出来るスキルを『アクティブスキル』、その人個人しか持っていない特別なスキルを『固有スキル』、精霊や神などの存在から加護として与えられるスキルを『ユニークスキル』と言うらしい。
「君たちの才能はホントにとんでもないねぇ。まぁ、ありすぎて困るってこともないだろうし、僕からもサービスしちゃうね!」
「おいエレル…」
「んーと、これとこれだろ、あとこれも!」
「おい…人の話を」
「これもいいね!で、こっちも!」
「おい!」
「ん?あぁ、ごめんごめん!早速出来たから見てごらん?『ステータスオープン』と言えば見られるよ」
話を聞かずに、勝手にスキルとやらをつけたエレルに若干不安になった。
とりあえず言われた通りに「ステータスオープン」と唱えると、目の前に液晶のような者が浮かび上がった。
名前:十夜
種族:人族?
HP:5000/5000
MP:12500/12500
固有スキル:
武の極Lv.MAX
(武を極めた者。あらゆる武器、防具を使いこなせる。)
存在隠蔽Lv.MAX
(隠蔽系スキルの上位互換。気配を完全に消すことが出来る。索敵系スキルの上位互換スキルのレベルが同等か上回っていないと感知できない。)
完全看破Lv.MAX
(鑑定スキルの上位互換。このスキルの前では、あらゆる偽装も嘘も通用しない。完全偽装のスキルレベルが上の者は看破できない。)
ユニークスキル:
限界を突破する者
(レベルや数値の限界がきても、それを越えて強くなることが出来る。)
魔導の極Lv.MAX
(攻撃魔法を極めた者。あらゆる攻撃魔法を使用できる。)
創造Lv.MAX
(素材と魔力があれば、イメージ次第で物質を何でも創造できる。複雑なものであればあるほど魔力を消費する。)
これが俺のスキルだった。
さすがにサービスし過ぎではないだろうか?と率直に思った。そして、種族が不安定だ。『?』ってなんだよ。
「十夜、どう?」
「優理は?」
「これ…」
名前:優理
種族:人族?
HP:2600/2600
MP:99999/99999
固有スキル:
未来予測Lv.MAX
(ある程度の未来を予測できる。1分~5分ほど。)
完全感知Lv.MAX
(索敵系スキルの上位互換。あらゆるものを感知できる。隠蔽系スキルの上位互換スキルのレベルが同等かそれ以上ないと防げない。)
慈愛Lv.MAX
(愛する者にかける支援系魔法の効果を相乗させる。)
ユニークスキル:
魔法の極Lv.MAX
(魔法を極めた者。あらゆる属性の魔法を使用できる。特に回復、防御、支援の魔法を得意とする。)
封印Lv.MAX
(魔を封印することができる。解除スキルが同等かそれ以上ないと溶けない。)
歌姫Lv.MAX
(歌うことで聞こえる範囲の者に魔法効果を与えることができる。スキルレベルが上がるほど範囲と効果が相乗する。)
これが優理のステータス。俺と比較すると、魔法職の支援系だ。それに比べて俺はかなり、近接戦闘系。バランスはとれているだろう。
「僕のサービスは、ほとんど君たちが元々持っていた才能を相乗させる系の者にしておいたよ。」
「あぁ、悪くない。」
「ありがとうエレルちゃん!」
種族の最期に『?』がつく理由を問いただすと、今の俺達の体はエレルが、俺達の元の体を元にこちらの世界に順応出来るように作り替えたものらしい。
そこに魂を詰め込んだものだから、『?』がついてしまったのだと申し訳なさそうに説明した。
「そう言うことか。そのくらい気にせん。」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。とりあえず、君たちは、人族の国のルマニアン王国近くの魔の森“終焉の深森”の中間に送るね。君たちの能力なら、余裕だろう。そこなら人の目もないし、自分の能力を確認するといいよ。」
「ありがたい。確かに力を持っていても使えないんじゃ宝の持ち腐れだ。」
「そうだね!頑張って自分のものにしないと!」
「じゃあ、送るよ?」
「礼を言う、エレル」
「ありがとねエレルちゃん!」
「教会に行けば、僕に声くらいは届けられるから、気が向いたら行ってみて」
「あぁ」
「君たちの新しい人生に祝福を。僕の世界を楽しんでね」
エレルはそう言って笑っていた。
俺達は眩しい光に包まれて、新しい世界へと導かれていった。
「これでいいかい?ゼスト」
「すまぬな……エレル」
二人が去った白い空間に、一人の男が現れた。白い髪の青年と言った風貌だ。
この男こそ、地球の神ゼスト。
「君の方が先輩だからね。君の頼みとあっては断るわけにはいかないよ」
「本当に感謝する」
「君は彼等に挨拶しなくてよかったのかい?」
「…会ったらボッコボコにされるだろう」
そう言ってゼストは困ったように笑った。
「ふふふっ、聞いてたんじゃないか。まぁ、いいよ。彼等の魂は少しずつ修復しておくね」
「頼んだ。本当に感謝する。」
「いいんだよ。確かに僕はエレクシアルの創造神だけと、その前は娯楽や遊戯を司る神だったしね。僕の世界に新しい遊びや娯楽が増えると思えば、僕の方こそ感謝したいくらいだよ。」
「そうか。では、二人をよろしく頼む」
「了解!」
ゼストは白い空間から消えた。
エレルは下界を覗きながら、さっそく二人を観察しはじめた。これからエレクシアルがますます面白い世界になると思うと、心踊る。
永い時間を生きる神にとっては、そんな些細なことが最大の娯楽に等しい。
「君たちによって新しいエレクシアルを見ることが出来るんだ。少しくらい贔屓だってするよ」
先ほど見送った二人を思い出して、胸を膨らませ心踊らせた。
「楽しんで生きてね」
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