デッド ヴァンガード

ザクキャノン

第1章 1話 終わりの始まり

   2021年 5月26日
   日本某所の真ん中に位置する山脈では登山やアウトドアに行った者や狩猟に出かけた猟師などが消息を絶つ不可解な出来事が起きていた。
    山脈に存在する山名は飛鳥山で近くには飛鳥郡飛鳥町があり文明も現代まで続いていた。飛鳥山の中には国際科学研究企業ニューロード社運営の精神病院と研究施設が合併した施設ありその企業は最新科学の研究を行っており医療や新薬、最新療法の研究に力を入れており新型の感染症や最新のガン研究、美容薬の開発に貢献し市販で美容薬や衛生用品まで宣伝されていた。
    周囲は長い塀で囲まれており監視カメラが正面出入り口と塀の上に設置されて侵入者が来ないように常に警戒が厳重になっている。
    施設内の地下には防護服を着た研究員やスタッフが多数おりネズミやモルモット、ウシガエル、ミシシッピアカミミガメ、中型トカゲを収容した強化ガラスのケースが保管された保管庫があり、廊下を通った先には無気力になった患者や衰退した患者が麻酔で眠らされていた。
   精神病院の看護師は女性の割合が多いがいかにも柔道や空手をしてるかのようなガッチリした人が多く、男性看護師が手に負えない状況になっても加勢できる状態になっていて今でも暴れる患者を取り押さえてるのが目に入る。
    病棟には薬物中毒で目が虚ろな者、突然の禁断症状で暴れる者がおり看護師が取り押さえて麻酔液を塗ったハンカチを口に当てて眠らせてから外に運び出した。
    防護服を着た中年の科学者が大音量で洋楽EDMのパリピ曲を流してノリノリになりながら液体の入った密封状態の試験管を整理していた。液体は緑色でまるで葉緑体色の強くなったようだった。そして赤黒い血液のような液体と混ぜ込んで顕微鏡で確認をして蠢く細菌などを見てノートに書いていた。
   試験管に入っている様々な色の液体が保管されており試験官をはめ込みで管理するケースには「RNAウイルス」「DNAウイルス」「バキュロウイルス」「炭疽菌」「狂犬病ウイルス」と表記されており研究材料として実験が行われておりそれらに感染した動物や患者を使って臨床実験を繰り広げている。
   狂犬病ウイルスの部類となる遺伝子改造ウイルスとして保管されている密封容器を持ち運んでいる研究員がバナナを食べながら持ち込んで倉庫まで移動した。バナナの皮をポイ捨てして種別ごとに集積しているところもう一つ、種別ごとの容器を手持ちで運んでいた他の研究者がバナナの皮を踏んで滑って前に倒れるように転んだ。容器を落としてしまった。
    容器が割れて飛び散った液体が転んだ研究者の顔にかかって、バナナを食べていた研究員がびっくりして後ろにもたれかかったところで保管されている密封状態の試験管が当たって落ちて床に溢れた液体で滑って転んだ。
   手が割れた破片に刺さって傷口に液体が染み込んだ。2人は慌てて水道で液体が付着したところを洗った。
    防護服のフードとマスクを外した研究員が倉庫に向かっていると2人が出ていくのを見かけて興味本位で倉庫に立ち寄ると割れた試験管や漏れ出した液体を見て驚いた。
   「嘘だろ!大変なことになったぞ。」
   防護服の研究員は迅速にウイルス漏洩の際に作動させる報知器を鳴らした。
   ベルや長い音響のサイレンが施設中に鳴り響いた。
   「おいおい、まさかの誤報か?たまによくあるからな。」
   パソコンを扱っている事務員が笑いながら30代の女性事務員に話を振った。
   「さあ、なんやろうね。抜き打ちの防災防犯訓練やったら時間が時間だからやめて欲しいもんね。」
   笑いながら事務員に言った。
  喫煙所に向かう医者は呑気にタバコ吸っている。
   「後でさっきのはドッキリでした〜なんてね。」
   ヘラヘラ笑いながら言って出て行き20代後半の若い女性スタッフの尻をタッチして去っていった。
   「あのセクハラ親父。ほんとうるさい警報にセクハラ親父ほんとに頭にくる!」
   女性スタッフは同性の接待員に愚痴を言う。
   <研究施設にて事故発生。従業員は速やかに避難して下さい。繰り返します。研究施設にて事故発生。従業員は速やかに避難してください。>
    緊急アナウンスが入りスタッフ達はざわついた。
   「一体、何の事故なんだよ!主語を教えてくれよ!」
   中年の従業員が私有パソコンでゲームをしながら言う。
    ニューロード社警備員がオフィスや病棟や事務室に駆けつけてきた。
   「皆さん!落ち着いてください。患者と女性従業員を優先的に避難させて体力に自信のある男性の方は他のところへ行って避難を呼びかけて下さい。」
   警備員は避難勧告を始めた。
   シャッターが閉まるような音がすると同時に出入り口は封鎖され窓も剛鉄のシャッターによって塞がれた。ドアも電子ロックがかかる。
   警備員がカードキーで解錠を試みたが開く気配はない。
    クソ!どうなってんだ。とりあえず非常ボタン押して機械警備(機動隊)を呼ぶしかないな。」
   警備員は非常ボタンを押した。
  「間も無く機械警備が来るはずです。AI人工知能も感知して助けを呼んでくれているはずなのでもうしばらくお待ちください。」
   警備員は従業員に柔らかく言った。
   研究施設は精神病院の地下に精神病院従業員や看護師、患者は基本的に立ち入り禁止ゾーンとなっている。あらゆるところに監視カメラが設置されており秘密保全を徹底されていた。その他の立ち入りが許可されてるのは防犯防災技術者だけであり彼らも病院スタッフや部外者に口外しないように義務付けられていた。
    「何で事故ごときで全て封鎖されなきゃなんねぇんだよ!」
   怒りっぽい医師が大声で言った。
するとスピーカーから超静音が響いた。
   <あなた方は現在、新型ウイルスに感染しているため外に出すわけには行きません。不服であるかもしれませんが申し訳ございません。>
   AI人工知能がアナウンスした。
   「いったい何のウイルスだって言うんだ。ウイルスって言っても風邪など治るやつだろうが!」
   他の男性スタッフがヤクザの叫び散らし風に強気な言い方をした。
   「少々お待ちください!」
   AI人工知能はスピーカーでそう言った。
  アナウンスが終わった頃にプシューっと音がした。ダクトやいたるところにある穴場から白い煙のガスが出て来た。
   「火災?」
   中年の女性従業員が呟いた。
   ガスを吸ったほとんどの人が過呼吸になって倒れ出し僅かに吸ってない人は扉の方を叩いて「出してくれ!」と叫んでいた。
   地下研究施設の従業員も慌てて逃げ出してオフィスのまだロックがかかっていないドアを開けて逃げ出すが充満したガスを吸って倒れてしまった。
   「助けてくれ!助けてくれ!」
   電子ロックされたドアを白衣着た男性研究員が叩いている。通気口からガスが出てきて男も膝をつくようにして倒れた。
   
   2時間後
   飛鳥山に狩猟を兼ねて山登りに来ていた横石典禎は狩猟を終えて下山した。今回の収穫は無く後ろめたく町から離れた集落に向かった。寂れた離ればなれの小さな建物にカーキ色のM65ミリタリージャケットにジーパンを履いた一味変わった男が入っていくのが見えた。
   「あの顔見覚えあるような気がする。」
   横石はその建物に向かった。
   「ごめんください。」
   入口前のインターフォンを鳴らした。
  「どうされました?」
   男はドアを開けた。
   「あっ!横石!何でこんなところに自衛隊の幹部候補生受けたんじゃないの?」
    男はびっくりしていた。
    男の名前は末安貴文。元自衛隊員で横石が後方支援部隊にいた時の同期だった。出来の悪さとバカを発揮する部分があり部隊配属されて3年半で挫折してやめた男だった。
   「てか末安は何でこんなところにいるの?俺は試験うまくいかなくて辞めて大人しく病院で勤務している。末安は再入隊したんじゃないの?」
    横石はある事ない再会に唖然としている。
   「話せば長くなる。」
    末安は冷静に言った。
   「長くなっても時間あるから大丈夫。話してどうぞ。」
   横石がそう言った。
   末安が口を開こうとした瞬間にドアがぶち破られ全身紺色の戦闘服を着た特殊部隊装備の武装集団が突入して来て末安と横川は取り押さえられた。
   「おい、俺は何もしてないぞ。しかもここの警察にSATは配属されてない。どう言う事よ?」
   取り押さえられた挙句、手錠をかけられた末安は武装した紺色服に言った。
   武装集団は完全に無視している。末安の手持ちの荷物を調べ、顔写真を撮影してスマホのメールを転送した。
   「この猟銃を持った男を解放しろ。そいつは何もないだろ!」
   末安は横石を解放するように言った。
   「見られたからにはそいつと同行してもらう。」
   自動小銃を持った男は言った。
   スマホの通知音がなり確認すると「この男の身元は不明。国籍不明。前科無し」と返信が来た。
   「身元不明なら大丈夫だな。付いて来てもらおう。手錠を解除する。しかし俺らをフクロにしようとか変なこと考えても良いが行動に移せばその場で殺す。」
   小隊長クラスの男が末安に脅し文句を言った。
   「俺も付いていきます。」
   横石は小隊長に言う。
   「とりあえずこの2人を同行させて移動するぞ。」
   小隊長は指示を出した。
   武装集団は紺色の服に黒いヘルメットに防護マスクをしている。下には覆面で覆われていた。黒い防弾チョッキにポーチなどが取り付けられており腰付近にはナイフが装備されていた。肘膝にはプロテクターを身につけている。
   「あんたらSATかそれか自衛隊の特戦?俺らをいたぶる前にショッカーでもやっつけたらどうだ?これだから仮面ライダーに笑われるんよ!役立たずの高給取りが!」
   末安は小馬鹿にしたように小隊長に言う。
   「口を慎め!カトンボ野郎!」
   武装集団の1人が末安の腹を殴った。
   末安はゲホゲホいってうずくまりながら移動した。誰も見ていない道を進みバンに乗せられた。おまけに目隠しまでされる。
   「降りろ。到着したぞ!」
  末安と横石の2人は降ろされて目隠しを外された。
   場所的には飛鳥山の旧日本軍の対空陣地と防空壕跡で中を進んでいくと古い物とは思えない扉とパスコード入力装置がある。
   小隊長が入力して解除すると扉が開いた。先は長い通路になっており武装集団と末安、横石は進んでいく。
   武装集団はアメリカ製の自動小銃M4A1や日本の警察特殊部隊SATが使用しているサブマシンガンMP5Jを持っている。そのほかポリティカルアクションに出てくる防弾チョッキを貫通できる4.6ミリ弾を使用するドイツ製のサブマシンガンMP7などを持っていた。
   「さっきから聞いてるが何者?」
   横石は小隊長に質問した。
   「この先にある精神病院と研究施設で事故が起こった。警報が鳴って出動を命じられたものの連絡が途絶えた為、偵察任務が下された。俺らはそのために呼ばれた特殊部隊ってとこだ。」
   小隊長は答えた。
   通路の先のドアを開けて進みまた先の扉を開けた。
   扉の先は研究施設になっており実験室や臨床室は書類や機材の散らかっておりガラスには血がへばりついていた。
   「いったい何が起こったってんだよ。」
   小隊長は絶句していた。
   <この区域は汚染区域でありあなた方はもう外に出ることは出来ません。繰り返します。そこのあなた方は外には出られません。>
   突然アナウンスが鳴った。
   「バカバカしい。俺らは特殊訓練を受けたんだ。こんなのイージーモードの脱出ゲームじゃねえか。」
   隊員は笑いながら言った。
   全員防護マスクを外してヘルメットと覆面だけになり武器と装具の異常の有無を点検した。
    「全員異常ないな。」
   小隊長が言うとパスコードが必要な場所はあらかじめ知らされていたコードを打ち込み解錠していった。
    プラスチックケースは何かの動物が破裂したためか血がべったり着いており不気味さを帯びていた。
    開いていた倉庫から何か不気味な男性職員が現れた。
   「ここの職員か?顔色も悪いし機嫌悪そうだが大丈夫か?」
   末安に手荒くしてた若手の隊員が近づいて聞いた。
   男性職員は反応を示さずヨタヨタと歩いて近づいてくる。顔は完全に死人でまさに生きた屍だった。
   「離れろ!なんかおかしい!」
    小隊長は若手の隊員に離れるように言った。
   小隊長は15発装填の9ミリ弾使用のハンドガンで足を撃った。しかし男は怯んだもののまだ足を引きずりながら歩いてくる。
    「なんかおかしいぞ。ならもう1発。」
   小隊長は胸の中心を撃った。
   男は後ろに倒れるが体をビクビクされるかのようにして起き上がった。
   大人しくて人に反論できなさそうな隊員が消音器付きのハンドガンで頭を撃ち抜いた。男は倒れて完全に動かなくなった。
   男の死体に隊員達が近づいた。そして横石も興味津々に見に行った。
    「この死体の男の血液、なんかおかしい。早く早々、血が固まってる。」
    横石は綿棒で血を突きながらびっくりしていた。
    「前!前を見ろ!」
   小隊長が叫んだ。
   前を向いて見ると防護服や白衣、入院着を着た人達が群れで現れた。特殊部隊員は全員、銃を構える。
    「撃て!」
    小隊長の掛け声と同時に隊員は発砲を始めた。
   高い銃声とともに従業員と思われる男達は次々に倒れていく。何にしても一斉射撃を喰らったら流石に男も起き上がる事はないだろう。そう思って射撃を辞めさせて周囲の付近を調査した。
   「へへっ!この職業について良かったぜ。まるでガンコンのシューティングゲームやねえか。これで高い報酬出るんだから遊んで金もらえるようなもんだろう。」
   気が荒そうな隊員は死体を蹴って笑いながら言った。
    一度は安堵したが一斉射撃を加えられた従業員がまた起き始めてうめき声をあげながら特殊部隊員や末安、横石に向かって来た。
   小隊長がサブマシンガンMP5Jを単発で撃って従業員の頭を狙って撃った。撃たれた従業員は倒れていく。
    「頭だ。頭を狙って撃て。それか頭を刺すか潰すかしろ!」
   小隊長は部下達に叫んだ。
   気が荒い隊員は末安にハンドガンを渡した。
    「これを使え。持ってないんだろ。武器を。」
   手渡されたのは予備として持っていたP9ピストルだった。日本警察の特殊部隊SATがUSPハンドガンを取り入れる前に使われていたピストルである。
   末安は限られた弾薬の中でここぞというとこで射撃をして慎重に確実に狙撃した。
   「これでも喰らえ!手榴弾だ。今すぐ成仏してやる!」
   小隊長が手榴弾のピンを抜いて従業員の群れに投げた。
   従業員の群れは炸裂すると同時に腕や足を吹き飛ばされながらも絶命して生き絶えた。
   「奴らゾンビ同然だがゾンビとは言わない方が良いな。癖になって報告書に書いてしまいそうだ。凶暴感染者と名付けよう。」
   小隊長は部下達に言った。
   僅かにまだ動いている従業員の凶暴感染者を部下達がとどめを刺して行き非常階段を登った。
    横石は猟銃を取り出しておりいつでも撃てるように構えていた。横石が持っているのはレミントンM870の民間向けのショットガンで主にイノシシ狩りや鹿狩りでよく使われている猟銃の1つだった。
   階段には警備員の凶暴感染者がおり横石が顔を狙い撃ちして吹き飛ばした。末安は警棒を奪って伸ばした。
    「近くに来た時に打撃で使えそうやな。ただ手袋がいるな。」
   そう言い警備員の死体から白い手袋を回収した。
    「どくんだ。」
   小隊長が末安と横石に言うと突入準備を始めた。
    「3、2、1、行け!」
   合図の後に特殊部隊員が突入した。
   突入した先は診察室やオフィスのある場所だが何も人が居る気配が無かった。
   診察室のドアを開けると顔中が血で赤くなった医師が襲いかかって来た。気の荒そうな隊員が腕を噛みつかれしまう。
   「小癪な野郎め。死ね!」
   噛まれた隊員はハンドガンで噛み付いて来た凶暴感染者の顔面を撃った。
   隊員の顔に血が飛び散り凶暴感染者は倒れた。倒れたのは薄毛の医師で診療科目は心療内科である。
   「この病院で勤務になったのが運命のつきだったな。」
   末安は気の毒そうに言った。
   医薬品をビニール袋に入れてライターも用意した。病院の機材や道具も散らかっておりコードも無残に引きちぎれている。
    診療室に1つの日記帳が見つかった。
   (この人里離れた病院には研究施設があるんだそうだが俺らはあっちに入る事は出来ないようである。いったい何の研究をしているのか怪しい。他の奴らは新治療薬や療法の研究をしているとは言うが本当のところ妙におかしい。患者がたまにそこに連れていかれるがほとんどは帰って来ていないし怪しい。管轄はニューロード社なんだそうだ。)
   以上の通りこの病院はニューロード社が管轄しており地下の研究施設も担当している事が分かった。
    「まさかあのゾンビと思しき凶暴感染者は自然に発生したわけではなさそうだな。狂犬病の突然変異で人間が凶暴化するパターンなのか…」
   末安は不思議そうに資料を漁りながら呟いた。
   資料はほとんど鬱病や躁鬱病、ストレス障害などのレポートばかりでウイルス関係のものは見当たらなかった。
    噛まれた隊員は包帯で応急処置をして弾薬の装填をした。
   派遣された特殊部隊の人数は10人で残り2人は横石と末安だった。
   特殊部隊員の戦闘服にはワッペンが無くあるのは私物のマニアが好きそうなワッペンをつけてたり装具にアクセサリーをつけていた。横石が推測するには傭兵から選び抜かれた特殊部隊なのかもしれない。
    他の隊員が別の診療室を開けたら多数の手が出てきて近くにいた隊員が銃を構えてみると診療室に多数の凶暴感染者がおり扉を開けた隊員を引きずり込んだ。
   「嘘だろ!助けてくれ!誰か来てくれ!奴にやられる!」
   多数の手に掴まれた隊員は断末魔の叫びをあげながら引きずりこまれた。
   凶暴感染者は引きずり込んだ隊員に群がって行き手に負えない状況になった。病室から入院着を着た凶暴感染者が多く出てきてうめき声をあげながら近づいてくる。
   末安はエタノールの入った瓶を集団に投げた。小隊長がハンドガンでエタノールのかかった凶暴感染者を撃つ。
   撃たれた凶暴感染者はエタノールで引火して燃えだしもがくように倒れ、他の凶暴感染者も着火して広がり火の塊になって火災報知器が作動してスプリンクラーから水ご噴射された。火は消えたものの燃え尽きた凶暴感染者の死体は性別が分からなくなるぐらいに丸焦げになってしまっていた。
    凶暴感染者の動きは基本的に早歩きで走りはしないが油断すれば追いつかれて噛み殺される場合がある。決して気をつけないと命取りになりかねない。
    他の凶暴感染者は末安の方向に向かうが頭を撃ち抜かれて後ろに倒れ横石が猟銃で首を撃ち抜くがまだ現れる。9人の特殊部隊員と末安、横石は警備員室に入って鍵を閉めた。
   消防隊に連絡を繋ごうとするが応答は無く防災センターの連絡しようとしても全て繋がらない。
    「クソ!助けすら呼べないのか!」
   小隊長は床に無線機を投げつけた。
   警備室に置いてある緊急用携帯電話があり電話帳アプリの中を調べて電話をしてみた。繋いだ先は警備管制センター。
   「もしもし、もしもし飛鳥山付近の病院の者だけどゾンビが現れて…」
   若手の隊員が電話に出て言った。
   「バカ!ゾンビって言うな!貸して!」
   他の隊員は携帯電話を取り上げて
   「もしもし、飛鳥山精神病院にてゾンビが…」
   再びゾンビという単語を使ってしまった。
    「ゾンビ言うなと言いながらお前も言いやがって!俺に任せろ!」
   小隊長は携帯電話を取り上げて電話をかけた。
    「もしもし事故が起こった飛鳥山の精神病院で暴徒で溢れて収集がつかない。応援をよこしてくれ!ゾンビみたいな感じだ。」
   小隊長が言うと電話が切れた。
   「嘘だろ!ゾンビみたいなのが余計な一言やったんやろ?」
   横石がドン引きして言った。
   「ゾンビみたいなのは事実だろう!」
   小隊長は怒鳴った。
   「この病院と研究施設のほとんどのやつが奴らに変貌したんだろうな。」
   末安はタバコを吸いながら呟いた。
   銃弾を喰らっても生きている時点で何かとおかしいし普通に動ける時点でまともではない。まるでカプコンのゾンビゲームやゲームセンターのシューティングゲームの怪物みたいだった。
   精神病院の都市伝説では自殺願望のある患者を新薬や最新医療の実験台にしていると言うのを聞いていたがまさにその病院がそれである。
   拾った日記にはそれらしいことも書いてあるぐらいだから。推測で考えられるのは狂犬病が突然変異したウイルスが漏洩してこの病院のスタッフや患者にまで被害が及んでこの事故が起こり封鎖されたということだった。
    病院は接触感染する病原菌ならあっという間に広がるであろう。なんせ集団行動や生活の場でもあるからである。
    噛まれた隊員は包帯を変えるために取り外したが傷口は膿のようなものが出来ております血管がどす黒く浮き出ていた。
    「畜生!」
   呟きながら消毒して巻き変えた。
   凶暴感染者は通路や診察室、病棟を彷徨っており中には鉄の扉をドンドン叩く奴までいる。病院内の監視カメラには全ての映像が映っており生存者らしき人影は見当たらない。
   「外はどうなっているんだろうな。違和感を感じて現地警察や機械警備が駆けつけてくれれば助かる見込みは出るかもしれんが。」
   末安は吸い終わったタバコの火を消してゴミ箱に入れて言った。
   「この事態をニューロード社は社内で丸く収めようとして動こうとしないんだろうよ。」
   小隊長は呆れたように言った。
   「長居は無用だしここを出よう。上も調査しないとな。」
   小隊長は装備と残弾を確認して全員に「行け」と合図した。
   警備員室を出て廊下にいる凶暴感染者の首や頭を大型コンバットナイフで刺したり斬ったりして倒していきながら進んだ。
   「弾はここぞと言うところで使え。後奴らは音に反応する感じだから無闇に銃弾を使うな。」
   小隊長は指示を出す。
   隊員達はハンドガンとナイフを片手ずつに持ち進んでいく。特に死角になりやすい場所をとっさに動いて凶暴感染者を始末していく。
    さっき通った通路を進むと同じ隊員の姿があった。
   「室町要員?お前どこに言ってたんだ?」
    若手の隊員が近づいた。
    派遣部隊と同じ格好した元同僚が若手の隊員に掴みかかり頭突きをした。若手隊員はうずくまり元同僚がヘルメットごと覆面を取って首筋を噛みちぎった。
   若手隊員は血を口から流しだし絶命した。
   「室町!成仏してくれ!」
   小隊長はハンドガンで元同僚の室町の頭を撃った。
   隊員の1人の室町は診療室で大群に襲われてからズタボロになっていた。
   「クソ!噛まれたり食い殺されれば奴と同じになるのかよ。まるでゾンビ映画じゃねえかよ。」
   隊員の1人が壁に蹴って当たった。
   最初に死んだのは室町真吾。元警察官の特殊部隊要員だと小隊長から告げられる。
噛まれて死んだのは堺智。最近の新米である。これで2人減ってこれで10人。少しずつ戦力が減るのも時間の問題である。
   とうとう2階に上がり食堂に入った。
   
    

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