誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~
4-27 祝勝会
「あたらしいダンジョン制覇者にっ!!」
ダンジョンを出て屋台に顔を出すと、いつものようにガンドルフォさんがいたので、一応制覇を伝えると、案の定というかなんというか、その場にいた冒険者を巻き込んでの宴会になった。
酒の肴がほしかっただけだろうけど。
「おう、ショウスケェ! 飲んでるかぁっ!?」
「飲んでますよー」
とまぁこんな風に絡まれながらも、宴会は終始賑やかだった。
エムゼタシンテ・ダンジョンは、何人もの制覇者を出している、どちらかといえば難易度の低めなダンジョンだけど、それでもDランク冒険者がデュオで攻略するっていうのは、それなりの快挙らしい。
攻略開始からひと月ほどってのも、相当早いほうらしく、そのあたりは素直に褒められて嬉しかった。
こっちに来てからやってきたことの成果を認められることが多く、自分に自信が持てるようになりそうだ。
「嬢ちゃんも飲んでるかー!?」
「こらぁ。むさ苦しいおっさんが若い娘に絡まないの!」
ガンドルフォさんとミレーヌさんのやりとりに、デルフィが苦笑する。
若い娘とは言ったけど、たぶんガンドルフォさんよりデルフィのほうが年上なんだろうなぁ。
「……なによ?」
「いや、なんでもない」
俺の心を読んだかのように、デルフィがジト目で告げる。
ちょっと酔ってるからか、迫力がすごい。
女性の年齢については、考えるのもやめておいたほうがよさそうだ。
「あなたたち、疲れているでしょう? あとはこっちで適当に騒いどくから、帰って休んどきなさい」
ミレーヌさんの厚意に甘え、俺たちはその場を離れた。
ほろ酔い気分のまま、日の暮れたダンジョン街を歩いて、宿へと帰る。
一応街灯は設置されているけど、街ほどは明るくない。
そんな薄暗い道を、ふたりで並んで歩いた。
途中、デルフィの手が俺の手に当たったので、思い切って指を絡めてみた。
デルフィはとくに嫌がることなく、握り返してくれた。
柔らかくて温かい、手や指の感触が心地いい。
「ねぇ、ショウスケ……さっきの話だけど」
「さっきの話?」
「……ううん、なんでもない」
たぶん、彼女が聞きたいのは、ダンジョンコアの真島と話した、日本人や転送に関わる話だろう。
でも、彼女が途中で聞くのをやめたいま、自分から話すのはちょっと怖い。
できればもう少し、いまの心地よい関係を続けたい。
そして、もっと親密になったら、俺のことも、俺の想いも、伝えられればいいな、と思う。
ゆっくりと距離を縮めていければ……なんて考えていたんだけど……。
「ねぇ、ショウスケ。今夜はあなたの部屋に泊まっていい?」
「え……?」
少し前から、仕切りだけの寝台じゃなく、個室を借りていた。
個室と言っても、シングルベッドが置かれた3畳くらいの狭い部屋だ。
そこに、彼女が、くる……?
それってつまり、そういうこと、なのかな……。
「いや、その、えっと……」
でも俺はさっき、少しずつ距離を縮めたいと願ったばかりで……。
そりゃ、彼女とそういうことになるのは、とても嬉しいけど、でも、そのあと、いまの関係を続けられるだろうか……?
いや、もっと関係を深めてもいい時期がきている?
アイスブルーの瞳が、じっと俺を見ている。
「あ……う……」
どうすればいい? なにが正解なんだ?
「ふふ……」
ふと、デルフィは目を細め、笑みを漏らした。
「ごめんなさい、ちょっと酔ってるみたいね」
「あ、ああ、そう……。急に変なこと言うから、びっくりし……え?――んむっ!?」
デルフィの言葉にほっとして、自分でもよくわからずなにか言っていたんだけど、突然彼女は俺の顔を両手で包み、次の瞬間、柔らかい感触が唇を塞いだ。
そして数秒後、デルフィは俺から離れ、微笑んだ。
それがなんだか、寂しそうだった。
「ダンジョン攻略、楽しかったわ。じゃ、おやすみ」
そう言いながら、彼女は俺の顔から手を離し、踵を返した。
「お、おやすみ……」
すたすたと歩き始めた彼女の姿に、不安がこみ上げてくる。
「デルフィ!」
思わず名を呼ぶ。
彼女は向こうを向いたまま、ピタリと足を止めた。
なにか、言わないと……。
「また、明日……!」
彼女は振り返り、ふっと微笑むと、なにも言わずに前を向き、去って行った。
その夜は、なかなか寝付けなかった。
――翌朝。
「お連れさまからお手紙を預かってますよ」
部屋を出てフロントに行くと、手紙を渡された。
――――――――――
ショウスケとのダンジョン探索、とても楽しかった。
一緒に戦ってくれてありがとう。
あのとき助けてくれたことも。
外の世界も充分に楽しめたので、私は樹海に帰ります。
お元気で。
さようなら。
デルフィーヌ
――――――――――
デルフィーヌは昨夜遅く、夜行馬車に乗ってここを出たとのことだった。
ダンジョンを出て屋台に顔を出すと、いつものようにガンドルフォさんがいたので、一応制覇を伝えると、案の定というかなんというか、その場にいた冒険者を巻き込んでの宴会になった。
酒の肴がほしかっただけだろうけど。
「おう、ショウスケェ! 飲んでるかぁっ!?」
「飲んでますよー」
とまぁこんな風に絡まれながらも、宴会は終始賑やかだった。
エムゼタシンテ・ダンジョンは、何人もの制覇者を出している、どちらかといえば難易度の低めなダンジョンだけど、それでもDランク冒険者がデュオで攻略するっていうのは、それなりの快挙らしい。
攻略開始からひと月ほどってのも、相当早いほうらしく、そのあたりは素直に褒められて嬉しかった。
こっちに来てからやってきたことの成果を認められることが多く、自分に自信が持てるようになりそうだ。
「嬢ちゃんも飲んでるかー!?」
「こらぁ。むさ苦しいおっさんが若い娘に絡まないの!」
ガンドルフォさんとミレーヌさんのやりとりに、デルフィが苦笑する。
若い娘とは言ったけど、たぶんガンドルフォさんよりデルフィのほうが年上なんだろうなぁ。
「……なによ?」
「いや、なんでもない」
俺の心を読んだかのように、デルフィがジト目で告げる。
ちょっと酔ってるからか、迫力がすごい。
女性の年齢については、考えるのもやめておいたほうがよさそうだ。
「あなたたち、疲れているでしょう? あとはこっちで適当に騒いどくから、帰って休んどきなさい」
ミレーヌさんの厚意に甘え、俺たちはその場を離れた。
ほろ酔い気分のまま、日の暮れたダンジョン街を歩いて、宿へと帰る。
一応街灯は設置されているけど、街ほどは明るくない。
そんな薄暗い道を、ふたりで並んで歩いた。
途中、デルフィの手が俺の手に当たったので、思い切って指を絡めてみた。
デルフィはとくに嫌がることなく、握り返してくれた。
柔らかくて温かい、手や指の感触が心地いい。
「ねぇ、ショウスケ……さっきの話だけど」
「さっきの話?」
「……ううん、なんでもない」
たぶん、彼女が聞きたいのは、ダンジョンコアの真島と話した、日本人や転送に関わる話だろう。
でも、彼女が途中で聞くのをやめたいま、自分から話すのはちょっと怖い。
できればもう少し、いまの心地よい関係を続けたい。
そして、もっと親密になったら、俺のことも、俺の想いも、伝えられればいいな、と思う。
ゆっくりと距離を縮めていければ……なんて考えていたんだけど……。
「ねぇ、ショウスケ。今夜はあなたの部屋に泊まっていい?」
「え……?」
少し前から、仕切りだけの寝台じゃなく、個室を借りていた。
個室と言っても、シングルベッドが置かれた3畳くらいの狭い部屋だ。
そこに、彼女が、くる……?
それってつまり、そういうこと、なのかな……。
「いや、その、えっと……」
でも俺はさっき、少しずつ距離を縮めたいと願ったばかりで……。
そりゃ、彼女とそういうことになるのは、とても嬉しいけど、でも、そのあと、いまの関係を続けられるだろうか……?
いや、もっと関係を深めてもいい時期がきている?
アイスブルーの瞳が、じっと俺を見ている。
「あ……う……」
どうすればいい? なにが正解なんだ?
「ふふ……」
ふと、デルフィは目を細め、笑みを漏らした。
「ごめんなさい、ちょっと酔ってるみたいね」
「あ、ああ、そう……。急に変なこと言うから、びっくりし……え?――んむっ!?」
デルフィの言葉にほっとして、自分でもよくわからずなにか言っていたんだけど、突然彼女は俺の顔を両手で包み、次の瞬間、柔らかい感触が唇を塞いだ。
そして数秒後、デルフィは俺から離れ、微笑んだ。
それがなんだか、寂しそうだった。
「ダンジョン攻略、楽しかったわ。じゃ、おやすみ」
そう言いながら、彼女は俺の顔から手を離し、踵を返した。
「お、おやすみ……」
すたすたと歩き始めた彼女の姿に、不安がこみ上げてくる。
「デルフィ!」
思わず名を呼ぶ。
彼女は向こうを向いたまま、ピタリと足を止めた。
なにか、言わないと……。
「また、明日……!」
彼女は振り返り、ふっと微笑むと、なにも言わずに前を向き、去って行った。
その夜は、なかなか寝付けなかった。
――翌朝。
「お連れさまからお手紙を預かってますよ」
部屋を出てフロントに行くと、手紙を渡された。
――――――――――
ショウスケとのダンジョン探索、とても楽しかった。
一緒に戦ってくれてありがとう。
あのとき助けてくれたことも。
外の世界も充分に楽しめたので、私は樹海に帰ります。
お元気で。
さようなら。
デルフィーヌ
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デルフィーヌは昨夜遅く、夜行馬車に乗ってここを出たとのことだった。
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