誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

4-23 サキュバスドリーム

「さて、ここからが本番だ」

 目の前にあるのは『淫魔の館』

 これはどう考えてもアウトなやつだ、うん。

「ここってもしかして、サキュバス的な……?」
「ほう、察しがいいな」

 ちなみにサキュバスのほうも代用品があるので、やっぱ吸う方じゃなく吸われる方に需要があるって話だ。

 入るとこれまた、エッロい雰囲気を醸し出してるおばちゃんがいた。
 うん、お姉さんて感じじゃなく、おばちゃんって感じ。

「クロードさん、お久しぶりだねぇ」

 どこにでも顔が利くな、このエロフめ。
 なんやかんやと好みのタイプとか確認しつつ、個室に消えていくガンドルフォさんとフェデーレさん。
 クロードさんは俺の相手が見つかってから、自分の相手を選ぶとかなんとか。
 選ぶといわれても、ここってあれだよなぁ……。
 ここまで来て帰るっていうのも、空気読めてない感じがしてあれだけど、でもここから一歩先に進むと、なんだか取り返しがつかないようなきもするし……。
 よし、ここは勇気を持って断ろう!
 そう、おれはNoと言える日本人なんだ!!

「あ、あの、ここまで来といてアレなんですけど――」
「ああそうだ、ひとり相手してやってほしいコがいるんだけど……アレシア! アレシア!!」

 しまった、途中で遮られてしまった……。

「なにー?」

 呼ばれて出てきたのは、軽くウェーブのかかった濃紺のロングヘアーと、同じ色の瞳が印象的な、まだあどけなさの残る少女だった。
 こりゃいろんな意味でアウトだね。

「このコなんだけど、相手してやってくれないかねぇ」
「金を払ってまでオボコを抱くのは御免こうむりたいな」

 と、即答のクロードさん。

「じゃあアンタは?」
「え!? あ、俺は、その……」

 とおばちゃんがこちらを見る。
 できればこのまま帰りたいんだけど、気勢を削がれて言い出せなくなってしまった……。

「ねぇねぇ、彼が私の旦那サマ?」
「そんなわけないだろ、ったく」

 アレシアのよくわからん言葉に、おばちゃんが呆れたように答える。

「えー、じゃあヤダー」
「アンタね、ウチに身をおくんならいい加減客をとりな!!」
「だからぁ、旦那サマが現れたらいつでもオッケーって言ってんじゃん」
「そんな都合のいい話があるわけないだろう?」
「どうでもいい男とホイホイ寝るなんて絶対ヤー!!」
「ここはそういうところなんだよ!! 嫌なら冒険者にでもなんな!!」
「えー、働きたくないー!!」
「だったら客取んな!!」
「ぶー!!」

 なんだか賑やかなやり取りのあと、おばちゃんがヤレヤレって感じで頭を振る。

「なぁお兄さん」

 とそこでいきなり矛先が俺に向く。

「このコ、アンタの好きにしていいからさ、とりあえず選んでやってくれないかねぇ?」

 ふむう……彼女とはどうやら利害が一致しそうだな。

「いっすよ」
「ありがとねぇ。アレシア! 案内!!」
「はーい」

**********

 部屋に着くなりいきなりベッドに押し倒された。
 いや、やる気ないんじゃなかったっけ?

「ねぇ。アタシのこと、身請けしてくんない?」
「身請け……?」
「そ、身請け。そしたらアタシのこと好きにしていいよ」
「えっと……無理」
「……だよねぇ」

 そう言って軽くため息をつくと、アレシアは俺を解放してくれたんだが、なにを思ったか服を脱ぎ始め、全裸になると俺の隣に寝転がった。

「ま、しょーがない。これも仕事と思って諦めるから、どうぞ」

 いや、どうぞって言われてもねぇ。

「別に無理しなくてもいいよ」

 するとアレシアは、ガバッと起き上がってこちらを向く。
 あ、意外と胸ある――って、いろいろ見えてますからっ!!

「なにそれ! アタシじゃ不満ってこと!?」
「いや、そういうんじゃないよ。さっき一戦終えてここには付き合いできただけだから、そっちにやる気がないなら、無理にとは言わないよって話」

 〈精神耐性〉レベルが高いから、こうやってカッコつけられるワケで、普通なら流れでやっちゃうんだろうなぁ。
 はっきりいってこのコすげー美人だし、幼さが残るとはいえ女性として充分魅力のあるスタイルだし、肌は綺麗だし、声も可愛いし、そんなコに隣で全裸になって「はいどーぞ」なんて言われたら、まともな精神じゃ耐えられないだろう。
 〈精神耐性〉上げといてよかった……。

「ふーん」

 冷静になると恥ずかしくなってきたのか、アレシアは顔を真っ赤にしつつ手で胸を隠すと、もう一方の手でシーツを手繰り寄せた。
 なんか邪魔っぽいので俺はベッドから起き上がり、部屋にあったソファに座ると、アレシアは無事手繰り寄せたシーツで体を隠せたようだ。
 そこで、なんとなく雑談を始めた。

 聞けばアレシアは、自分を養ってくれる男性を探しているのだとか。

「できれば未来の旦那さんに初めてを捧げて、そのまま一生添い遂げたいの」
「だったら娼館なんか出て、ちゃんと働きなよ」
「やだよ、働きたくない」
「ま、気持ちはわからんでもない」

 なにせ俺もニートだったしな。

「でも、夢みたいな話なのよ。そのうちお客さんを取って、普通の娼婦になるんだろうな」

 なんて半ば諦めてるみたいだったけどさ。

「ねぇ」
「ん?」
「ほんとにいいの?」
「身請けとか無理だし」
「別にいいよ、夢みたいなものだって、言ったでしょ? あなた、優しそうだし……」
「いや、なんというか、実は君の事情とは関係なく、最初からする気はなかったんだよ、俺」
「なにそれー。だったらこんなところまで来ずに帰ればよかったじゃん」
「ほら、男同士断りにくい空気があるっていうか、なんていうか……」
「ふーん……よくわかんないや」

 そんなこんなでいい時間になったので、俺は個室を出た。
 俺を見た受付のおばちゃんは、軽くため息をついていたので、お見通しって感じなのかな。

「アンタいい人そうだから、あのコの初めてをもらって欲しかったんだけどねぇ」
「身請けとか無理っす」
「そんなもんしなくていいさ。ま、金は返すよ」
「ああ、いや、いいですよ。俺の都合でやらなかっただけなんで」
「へええ」

 そこで、おばちゃんが少しイタズラっぽい笑みを浮かべる。

「もしかして、想い人でもいるのかい?」
「えっと……はい」
「そうかい。じゃあこれは私からの景気づけってことで。土産でも買ってやんな」

 結局金は返された。

 そのあと、ツヤツヤになったクロードさんたちと軽く食事をとり、俺とガンドルフォさんは夜行馬車で、エムゼタシンテ・ダンジョンへ戻ることにした。

「よし、明日からがんばろう」 

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